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中国SF小説「三体」の面白さを紹介する。

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このnoteでは、中国SF小説の「三体シリーズ」がいかに面白いかについて"ネタバレ無しで"ご紹介します。

つい先日、全3巻に渡る三体シリーズの第3巻「死神永生」が発売され、無事完結しました。

作者の劉慈欣(リュウジキン)さんが成し遂げた「三体シリーズ」建立という偉業は、SF文学史に燦然と輝き、時代を超えて読みつがれる傑作の仲間入りを果たしたでしょう。

私は皆さんにこの作品の魅力を紹介せずにはいられません。一人でも多くの人に読んでもらい、日本の三体談義がもっと盛り上がって欲しい。そして、さらには日本にSF小説ファンがもっと増えて、豊かな発展の土壌が出来上がってほしいのです。

三体の魅力なら、それが十分に可能でしょう。読んだら最後、これまでSF小説とは縁がなかった方でも、次から次へと他のSF小説も読んでみたくなること間違いなしです。

それでは導入はこの程度にして、早速ご紹介に移ります。ストーリー展開の直接のネタバレ一切なしです。

目次
1. 王道SFとして、圧巻の完成度
2. "中国"が舞台という新鮮味
3. SFでありながら"歴史"も描く
4. おわりに

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王道SFとして、圧巻の完成度

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SF作品は"サイエンス"を冠する以上、随所に科学のトピックが登場します。読者に分かりやすく、かといって単純すぎないように上手に小説内に落とし込むことが、SF小説作家の腕の見せ所です。

劉慈欣さんはそれが非常に巧みです。例えば、主人公が科学トピックについて他の登場人物から説明を受ける場面は、SF小説ではお馴染みの展開ですが、それがすんなり理解でき、かといって冗長ではないのです。正確には、小説を楽しめる程度に過不足なく理解できているに過ぎないのですが、その具合がちょうどいいのです。例えば、名作SF小説の「ソラリス」ほど詳細に陳述されるのは、いまや玄人向けかもしれませんから。

また、登場する科学のトピックの数が圧倒的に多いです。ネタバレ防止のために詳述は避けますが、SF小説としては王道なテーマに真正面から挑みつつも、最新のテーマもしっかり取り込んでいます。

後者の例として、1巻を読んだ方なら中盤で登場したとある"ゲーム"が印象に残ってませんか?他にも、「そのアイデアがあるのなら、置いておけばメインテーマにして一冊かけるのでは?」と思わせるような、あっと驚いたり、胸が踊ったりするようなアイデアが次々と登場します。惜しみなく注ぎ込まれた、"サイエンス"要素に、SF小説の玄人の方でも満足することを請け負います。

"中国"が舞台という新鮮味

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SF小説といえば西欧諸国でしょう。さすがは"science"の発祥元だけあり、
・幼年期の終わり アーサー・C・クラーク
・星を継ぐもの ジェイムズ・P・ホーガン
・ソラリス スタニスラフ・レム
・すばらしい新世界 オルダス・ハクスリー

などなど名作の数々は、いずれも西欧諸国の作家によるものです。そのため舞台は西欧や、もしくは架空の設定でも、あくまでその発想の下地は作者の属する北米・ヨーロッパの文化です。ところが三体の作者は劉慈欣さんで、中国人です。物語の舞台は中国がメインで、アジア人らしい人情味あふれる登場人物が織りなす物語はなんとも新鮮です。

思えば、西欧は"サイエンス"の生みの親ですが、アジア各国はそれを輸入し、そして自国の文化の中へと数百年かけて溶け込ませてきました。その結果、中国では"science"とはひと味違う"科学"が文化のなかに息づいているようです。

文学作品はその国で育まれた文化の表出として捉えることもできるかと思います。「神は細部に宿る」ではありませんが、登場人物間の会話から伺える他者との関わり方であったり、倫理や規範、社会通念であったり、そして文学長年のテーマである「愛」の解釈であったり。

それらの点に関して、三体は最高峰の作品でしょう。中国は昔から豊かな文化を築き、そして多くの文学作品を生み出してきただけあるなと、感銘を受けました。今まで触れる機会が少なかっただけで、素晴らしい文学作品が登場する土壌が完璧に整っている模様です。今後は三体のように世界的メガヒットになる作品が続々と登場しそうです。

作中には日本も登場しますよ。往年のハリウッド映画で見られたようなステレオタイプな日本ではありませんから、期待しておいて下さい。

SFでありながら"歴史"も描く

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"サイエンス"と"歴史"は対象的な印象がある方も多いでしょう。"理系"と"文系"のように分けられますから。ところがその国で生きる人、息づく文化、そして育まれる文明を軸に描くなら、双方が重要です。どちらも社会にとっては欠かせない要素ですから。

三体は"歴史"をうまくテーマに組み込んだおかげで、SF小説らしい科学的な面白さだけでなく、人文学的な面白さも併せ持つことに成功しました。1巻冒頭の場面で描かれるのでネタバレも何もないかと思いますが、シリーズに欠かせない歴史要素のひとつは、現代中国で起こったとある"動乱"です。ある登場人物の人生がそれによって狂わされたことから、物語の歯車が動き始めるのです。

また先程三体は登場する科学的なトピックの数が圧倒的に多いと述べましたが、同様に歴史の要素も多いです。歴史上の偉人や出来事があちこちに顔を出します。

おわりに

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以上3つのトピックに分け、ネタバレしないように注意しつつ三体の面白さをご紹介しました。

三体は、傑出した作家と、素晴らしいアイデアの合わさったまさに傑作です。物語のスケール、登場人物の魅力、科学的なトピックの興味深さなどなど、良い点を上げると枚挙に暇がありません。

SF小説は科学的トピックという下地はあっても、それをいかに作品に活かすかは、作者の力量次第です。結局のところ、いかに素晴らしいアイデアが下地でも、作家の腕前が十分でなければ面白い小説にはなりえないのです。

ぜひ三体を手にとってみて下さい。究極の読書体験を保証します。



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