見出し画像

オープンイノベーションの新モデル事例を読んでみて

シュンペーターの定義するイノベーションは、”それまでに組み合わせたことがない要素同士を結び付けることで、新たな価値を創造する新結合”であり、組織内に可能性を閉じない越境として、各国の経済界においてオープンイノベーションが注目されています。

日本では、“挑戦する人とともに未来を拓く”をミッションに掲げ、スタートアップ・大手企業・官公庁の協働を創出するデロイト トーマツ ベンチャーサポートが先駆者としてオープンイノベーション市場を開拓され、2013年よりスタートした事業提携の創出を目的としたイノベーションプラットフォーム「Morning Pitch」は、日本のみならず、シンガポールやインドなど8カ国で展開されており、スタートアップ企業5,000社以上、大手企業とのネットワークを構築しています。


本稿では、デロイト トーマツ ベンチャーサポート取締役COO/シリコンバレー事務所パートナーの木村 将之さんが、27pilots CEOのGregor Gimmyさんと共著された『スタートアップ協業を成功させるBMW発の新手法 ベンチャークライアント』のポイントをまとめてみました。

イノベーションの可能性や具体的な事例を知りたい方へお勧めです!

概要

・戦略的利益の実現を目指してスタートアップの顧客になるベンチャークライアントモデルの概念と事例を解説。
・海外ではBMW、Bosch、Siemens、L'Oréalなど名だたる企業がベンチャークライアントモデルを実践している。
・グローバルのトップスタートアップは、ベンチャーキャピタルから提供される桁違いの資金力のもと世界最高峰の人材が集まり、特定の課題に対して一点突破で圧倒的な技術とソリューションを開発しているとして、スタートアップを対等以上に敬意を持つ大企業のイノベーションが加速していく事例が存在している。
・Discover (課題とソリューションの特定)、Assess(評価)、Purchase(購買)、Pilot(試用)、Adopt(本格採用)の5つのフェーズにポイントがある。

Point①:ベンチャークライアントモデルの可能性

直近ではOpenAIが130億ドル超を資金調達し、先進的な研究者約800人超を有するなど、リスクマネー投資の変化に伴い、1点突破の機動力の高さとヒト·モノ·カネの資源の豊富さを兼ね備えるスタートアップを台頭してきている背景がありますが、スタートアップと大企業は協業する仲間になる可能性もあれば、市場で競争するライバルにもなり得ることの難しさがあります。
本書では、スタートアップの顧客になることに特化した戦略であるベンチャークライアントモデルにおける可能性と注意点が解説されています。

例えば、大企業とスタートアップ側の双方で、成長を阻害する可能性のある情報漏洩や権利のコンフリクトに対する不安が生じるため、協業のための姿勢やスキームが取り上げています。

Point②:スタートアップと大企業双方の視点

スタートアップ側では資金調達の関係で通常18カ月から24カ月分の短い期間に、自らのプロダクトの優位性と有効性を証明する必要があること、大企業側ではリスクを最小限に抑えて経済的効果の証明が必要であること、とそれぞれの制約がありますが、ベンチャークライアントモデルの実践で顧客関係になることによるwin-winの関係性が示されています。
例えば、スタートアップ側では収益の確保となり、大企業側では自社に合わせた取引が実現するとの等価交換が重要であるといったそれぞれの視点でもポイントが解説されています。

Point③:グローバルの事例

毎年世界中から集まる1500以上のスタートアップと対話して評価を重ねて、そのうち約30社との協業を進めて収益向上やコスト削減を実現しているBMW StartupGarageを筆頭にさまざまな事例が取り上げられています。

例えば、Appleの顔認証、ワイヤレス充電、オーディオ編成、自然言語処理、写真の仕分け技術などにスタートアップ発の技術が使われていること、小松製作所が顧客の工事現場での測量効率化をアメリカのスタートアップと協業していること、アメリカのPfizer(ファイザー)がドイツの スタートアップBioNTech と協業して新型コロナウイルスワクチンを開発したこと、東京海上日動火災保険が2030年の保険業界を想定してフィンランドの衛星ベンチャーICEYEと協業していることなどの壮大な変革にオープンイノベーションが仕掛けられいることが興味深いです。

以上のように、オープンイノベーションにおける先行事例の成功要因を抽出されてポイントがまとまっている書籍で、実践的な着眼点の示唆に富んでいるお勧めの書籍の一冊です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?