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ケース8.チーム効力感〜勝ち癖をつけるチームビルディング〜

▶︎遠くまで行きたければ皆で進め。チームの勢いをつくるには?


「早く行きたければ、一人で進め。 遠くまで行きたければ皆で進め」
というアフリカのことわざがあります。
個の時代が謳われる中、組織に属する意義は、1人ではできないことを成し遂げることにあるのではないでしょうか?

しかし、組織は人と人の集まりである以上、そこには感情があり、相性があり、雰囲気があり、チームの勢いを意図的につくることは一筋縄ではいきません。

経営の視点:
・活気に溢れた常勝チームを作りたい
・チームによって特色が異なり成功法がない

現場の視点:
・一体感のチームで充実したい
・個人起点でチームの勢いをつくることは難しい

20世紀最高の経営者と称されるジャック・ウェルチ氏は、下記のように勝利が組織において重要な原動力になるとしています。

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ビジネスで勝つのは最高だ。なぜなら会社が勝っているときには、そこで働く人たちも成長し、大きくなる。もっと多くの仕事やチャンスが、誰にでもどこにでも生じてくる。人々は明るい将来を描くことができる。
逆に会社が負けているときには、みんなが打擊を受ける。人々は不安感にさいまされる。金銭的なゆとりがなくなり、ほかの人のために何かしようとしても時間と金が限られてしまう。一日中心配してイライラすれば、家族はいやな思いをする。
勝っている会社、そこに働く人々こそが、健全な経済を支えるエンジンだ。公明正大に、規則にのっとった正しい方法で勝利する必要があることは言うまでもない。
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今回は、自己効力感のチーム単位を示すチーム効力感という概念に用いて、チームの勢いについて考察します。
自己効力感に関する記事

▶︎チーム効力感

チームのメンバー間で、「自分たちならできる」と目標を達成するために必要な行動をうまく遂行できると、チームの可能性を認知していることを指します。
スタンフォード大学の心理学者のアルバート・バンデューラ博士によって提唱された概念。

チーム効力感は、個人単位の自己効力感をチームに単位に置き換えた下記の4つから形成されるとされています。

①成功体験:
チームである行動を最後までやり遂げ、達成することができた経験を持つこと
②代理体験:
自チームと類似した特性の他チームの成功体験から気付きを得ること
③言語的説得:
自チームに対する励ましを周囲から受けること
④チームコンディション:
チームのコンディションがプラスであること


自己効力感と比較をすると、チーム単位の振り返りが必要であることから、より言語化が重要となります。

効力感を高める実験において、同じ結果を振り返るにしても、「自分or自分たちが〇〇したから△△となった」と”随伴性の認知”がある場合は効力感が高まることに対して、随伴性の認知がない場合は、むしろ「自分は必要ない」と学習性無気力感に繋がるとの研究結果があることから、効力感を高める難易度は高いと考えられます。

それでは、チーム効力感を高めるために、どんな工夫ができるのでしょうか?

▶︎礎となる共通目的を浸透させる

チームがただの集まりではなく、一体感を持つためには共通目的が欠かせません。
共通目的が活動の成否を判断する基準となり、チームならではの規範や倫理感としてチーム内外を峻別する枠となります。

モチベーションクラウドを立ち上げたナレッジワークの麻野耕司氏は、著書『THE TEAM 5つの法則』の中で、チームメンバーの能力や思考力によってグラデーションがあれども、下記の三次元の目標の設定が重要としています。

①行動レベルの目標設定
:チームメンバーが具体的に取り組むべき行動の方向性を示したもの
②成果レベルの目標設定
:チームとして手に入れるべき具体例な成果を示したもの
③意義レベルの目標設定
:最終的に実現したい抽象的な状態や影響を示したもの


行動目標だけでは作業の奴隷を生み、成果目標だけでは数字の奴隷を生んでしまうため、意義目標まで定めなければ、「何のためにどの程度できているのか」を振り返ることができません。

また、アメリカの心理学者ブルース・タックマン氏は、チームビルディングには5つの発展段階があるとタックマンモデルを提唱し、チームが成功体験を得るには共通目的に向かって意見の対立とすり合わせを繰り返すプロセスが必要としています。

①形成期(Forming)
②混乱期(Storming)
③統一期(Norming)
④機能期(Performing)
⑤散会期(Adjourning)


共通目的がしっかり定められ、浸透し続けるためのプロセスがなければ、次第に目的のためにチームが結成されたはずが、チームの存続のための目的が掲げられてしまうことがあります。

チーム単位で振り返るためには、定期的に共通目的に対する現状を総括する締め会などを通じて、共通目的を礎として仲間同士で共通認識を図る工夫が重要と言えます。

▶︎成長実感を醸成する数字マネジメント

堺屋太一氏の著書『組織の盛衰 何が企業の命運を決めるのか』では、豊臣秀吉が天下統一を成し遂げた要因には、急成長組織のマネジメントがあると考察されています。
組織成長には、構造(体質)と志向性(気質)の問題があるとして、豊臣秀吉は持続的な成長戦略を打つことによって、優秀な家臣の貢献を集め続けていました。

成長戦略を通じて、小さな成功体験クイックウィンを重ねたことが、豊臣家のチームとしての勢いに繋がったと考えられます。

戦国時代では領土の拡大がチームの成長実感となりますが、現代ビジネスの世界で捉えると、成長戦略に対する現場の実感を得ていくためには、事業数字の見える化が重要です。

創業以来、赤字なしの経営を続けている京セラでは、事業部を5〜20名単位の小チームに細分化して、それぞれにPL責任を持たせることで月次単位の勝ち負けを見える化して、チーム単位の成長意欲を喚起しています。
この際、チーム単位で横比較がしやすいように管理会計上の数字分配を設計することで、代理体験や言語的説得も生まれやすい土壌を作ることができていることも特徴的な仕組みのポイントです。

効力感が醸成されやすいように事業数字に対する自チームの成果を見える化して、チームの成長実感を持たせるコミュニケーションを図ることが、更なる成長意欲を喚起する勢いに繋がると言えるでしょう。

▶︎自チームの可能性を信じるために振り返る

ジャック・ウェルチ氏は、リーダーの重要な仕事の一つは、チームに励ましの言葉を降り注ぎ自信を持たせることにあると説いています。

個の時代だからこそ、個々人の時間投資にとって、チームが足枷にならないようにするためには、チームだからこその勢いが重要となります。
「自分たちならできる」と自チームの可能性を信じられているチームと、信じられていないチームでは雰囲気が異なります。

チーム効力感を高めるためには、チームの成長を実感させていくことが重要なのです。

また、『PDCAプロフェッショナル』の稲田将人氏は、下記のようにチームを取り巻く環境は絶えず変化しているからこそPDCAを回す力が重要と説いています。

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市場が永遠に伸び続けることなどあり得ず、市場の成長という追い風に助けられて発展してきた企業は、経営者が入念な準備を行なっていなければ、その風がやめば一挙に失速してしまうのが世の常です。これは自分たち自身で進路を見出して舟をこぎ続ける能力や技術、腕力が鍛えられていないからです。
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実際に、豊臣家の没落は成長戦略が頭打ちになったことから始まっています。
一度成功すると、その成功の功労者たちが組織の中で権威が強まり、主流派となることから組織は個人よりもはるかに成功体験に溺れ易いことに注意が必要です。

そのため、ビジネスにおいては、結果論で良し悪しを振り返るのではなく、「自分or自分たちが〇〇したから△△となった」となぜ上手くいったのか、上手くいかなかったのか言語化をしていて過程から結果までを振り返ることが、自チームの可能性を信じ続けていくために重要なエンジンとなるのです。

※本noteでは、人の可能性を拓く組織づくりのための新しい気付きを届けることを目的に、組織論とケースを考察していきます。
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