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リサーチ5. D2C×CX〜ブランドでライフスタイルを豊かにするWarby Parker〜

最近ではD2Cスタートアップが勃興していますが、それまで消費者向けブランドの市場は、インターネットビジネスよりも遥かにコストが高いことから、スタートアップ投資の対象とはされていませんでした。
しかし、2013年以降、デジタル&データドリブンなブランドビジネスとしてモデルが築かれ、投資家から注目されて、D2C市場が急速に成長しています。

2015年頃には、Amazonの猛進撃に対して、リテール・アポカリプス(小売の終焉)という言葉がメディアを賑わせるようになり、たとえば、全米第1位の小売業者であったSearsが2018年に破産法の適用を申請するなど、既存大手の小売業が存続の危機に瀕しています。

このような変革期において、D2Cの市場では、化粧品、スーツケース、マットレス、メガネなど、テクノロジーとは程遠い商材を扱う新興企業が台頭しています。
これらの企業は、AIやデータ分析などの高い技術力を武器に、SNSを使ったマーケティングを行い、独自の世界観を構築し、巧みなストーリーテリングによって顧客の共感を得ています。

今回は、独自のブランド戦略で、ライフスタイルを豊かにするWarby Parkerという海外スタートアップを参考にD2Cの可能性を考えます!

▶︎既存産業をディスラプトするD2C

D2Cは下記の特徴があります。

・新しい消費の価値観を持つターゲットを有する
・独自のユニークな世界観を土台としたブランドによって、他社と差別化されるプロダクトとカスタマーエクスペリエンスを提供する
・中間業者を省略して、SNSや店舗を通じた顧客とのダイレクトな対話と、データサイエンスを活用することでパーソナライズされたサービス改善をしていく


D2Cブランドの既存産業に対する影響度は高く、たとえば、マットレスを取り扱う Casperが創業わすが4年急速にシェアを拡大して、100店舗単位で新規のリアル店舗を展開していく台頭によって、創業1986年のアメリカ寝具マットレス最大手のMattress Firmが2018年に破産法の適用を申請するほどです。

Casperが既存産業をディスラプトした要因は、従来のマットレスを改善しただけではなく、マットレスメーカーの枠を越え、さまざまな情報媒体を活用して、機能的価値に加えて情緒的価値を新しい競争優位性としていることにあります。
加えて、Casperは常に睡眠データをトラッキングできる顧客データベースを有して、ファン化しているユーザーが自発的に改善案を提供し、口コミで拡散するエヴァンジェリストとなることで、開発と拡販においてもユーザーと協働していることが更なる成長となっています。

このように、テクノロジーとブランドによってユーザーと新しい関係性を築くビジネスモデルで、さまざまな分野のD2C企業が台頭してきています。

▶︎Warby Parker

日常に溢れるモノの価値を変革したD2Cの中でも、ユニークな展開しているスタートアップの一つがWarby Parkerです。

Warby Parkerは2010年に設立されたアメリカのユニコーン企業であり、革新的なアイウェアブランドとして急速に成長しています。
伝統的な眼鏡業界の流通モデルや価格帯に疑問を抱いたDavid Gilboaらによって創業され、眼鏡の購入体験を革新し、お洒落で手頃な価格の眼鏡を購入するCXを提供することで一世を風靡しました。

設立以来、Tiger Global Management、General Catalyst、T. Rowe Price、D1 Capital Partnersなどから、シリーズGまでで50億円以上の資金調達を2回、100億円以上の資金調達を3回とされて、現在は上場しています。

成長要因の一つはカスタマーエクスペリエンスにあります。
たとえば、購入体験において複雑になりやすい試着をWEB上から5つのフレームを選択して無料で5日間自宅で試着する設計や、モバイルアプリを通じて仮想的に試着する設計、SNSと連動して専用のハッシュタグをつけてInstagramにアップすればフォロワーから意見を求められる設計にしたりと、遊び心によって手間がかかるフローから楽しむフローにしています。

ECからスモールスタートして、ミレニアム世代を対象に根強いファンを築いたことで、実店舗の展開も急速に進み、店舗の空間設計を凝らすことでさらにユーザーを世界観に惹き込むことが競争優位性となっています。
Warby Parkerの社名の由来は小説から引用されており、本というメタファーをブランドに組み込むを絡ませることで独自の世界観を表現し、実店舗では図書館を演出されています。

店舗開発においては、オンライン上から得られる検索データから、流入が多い地域、商品の購買と閲覧実績から、独自の予測モデルに基づいて検討することで戦略的な展開ができています。




SNSを活用したオンラインと実店舗を活用したオフラインの両面でのユーザーとのコミュニニーケションを通じて、ライフスタイルに踏み込むブランドを形成することができ、ソーシャルグッドの取り組みでユーザーの共感を得ています。

Warby Parkerは、「見る権利は全ての人にある」という理念を掲げており、Buy a Pair, Give a Pair(1つ買うと1つ寄付する)という取り組みを行っています。
ユーザーが一つの購入をするごとに、非営利組織VisionSpringに対して別の一組の眼鏡の製造費用を支払い、発展途上国で眼鏡を必要としているけれど手に入れることができていない人々をサポートする仕組みを構築することで、ユーザーとWarby Parkerが共に社会貢献することを実現しています。

※筆者作成



このように、ユーザーと眼鏡を取引するだけの関係ではなく、共感に基づく独自の世界観で結ばれる関係となることで、ライフスタイルを豊かにして、根強いロイヤルカスタマーを築くことでWarby Parkerは成長しているのです。

▶︎まとめ

情報化社会において従来の良いモノはロジカルに機能的価値や価格をが優れているとされ、その追求によって消費者市場ではモノが溢れています。
だからこそ、デザインや共感、遊び心などの
ストーリーテリングがコンセプトの時代において重要なアプローチとなります。

従来の売り切りモデルから、カスタマーサクセスモデルで顧客と継続的な関係を築き、顧客データに基づきストーリーテリングを磨き続けることで、人々の日常に独自のストーリーを接続して、人生に彩りをもたらすD2Cの発展に要注目です!

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