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私と映画と


私が映画を好きになったきっかけの話


高校生の頃一緒のクラスだった男の子。
ほとんどまともに話したことがなかったけど
私にある映画をおすすめしてくれた。
「かもめ食堂」だった。

教えてもらった日の晩 
私はレンタルビデオ屋さんに連れて行ってもらった。 目がチカチカする棚を見回した。
どんなジャンルの映画なのかもわかっていなかったので
ただひたすら「か」のコーナーを探す。
ようやく「かもめ食堂」を見つけ
たった一枚それだけをレンタルした。
当時私は映画を観るという習慣がほとんどなかった。
連れて行ってくれた父は
「なんで急に借りたくなったの」と聞いた。
私は答えられなかった。
正確に言えば 答えたくなかった。



DVDをレコーダーに読み込ませ 部屋の電気を消す。
フィンランドの風景 食堂を営む日本人
決して涙が出るわけではなかった。
けれども穏やかで
なんとなくふつふつと元気が出る映画。
私は心を揺さぶられた。
とても好みの映画だった。


彼はどんな思いでこの映画を観たのだろう。
どんな思いでこの映画を私に勧めたのだろう。
私のこと全然知らないはずなのに。
彼ともっと話がしたいと思った。
彼には大した思いなんてないのだろう でも
大した思いがあると良いなと思ったりした。


次の日
私は映画に出てきたようなシナモンロールを焼いた。
完璧なのは香りだけで 味も形も良くはなかった。

私は彼に映画の感想を伝えられなかった。
映画初心者のチープな感想など
伝えても迷惑だと思ってしまったから。
なんて話しかければ良いかわからなかったから。
感想を伝えていれば 
もっと彼のことを知れたのかもしれない。
こんな私の愚かな想像は現実をすごい速さで追い越す。
私の青はもうすっかり色を変えていた。


それでもなお
私と映画との日々は続いていく




素敵な映画を教えてくれてありがとう。
私はあなたに映画を勧めてもらったのをきっかけに
随分多くの映画を観るようになりました。
あなたへ勧めたい映画も見つけました。
もしまたどこかで会ったら映画の話がしたいです。
もう遅いかもしれないけど
今なら思いを伝えられる気がしています。

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