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今日ときめいた言葉4ー「亡くなる前だからこそ一緒にいてあげたい」(絶望の香港を撮り続けた監督の言葉)

「権力による歴史の書き換えだけではありません。人は、記憶しておきたいことは覚えているが、そうでなければ忘れてしまったり自ら書き換えてしまったりするものです。集団にせよ個人にせよ、記憶は事実とは距離があります」   (2022年7月16日朝日新聞 チャン・ジーウン「絶望の香港を撮る」から)

これは香港の映画監督、チャン・ジーウン氏の言葉である。チャン氏は、香港が一国二制度を踏みにじられ、自由を失い、市民が沈黙を強いられるなかで、5年がかりで映画「Blue Island 憂鬱之島」というドキュメンタリーを制作した人である。でも、この作品は香港では上映出来ないという。

香港の中国化が進み、香港社会は集団的な失意と絶望に覆われ深く落ち込み、国際社会の関心も薄れてしまっているからこそ、撮ろうと思ったそうだ。この5年間で香港は変わってしまったと言う。

学校の図書館の本棚から天安門事件について書かれた本が外され、「香港は英国の植民地ではなかった」と書く教科書まで現れ、歴史の書き換えが起こっているそうだ。だから今まで起きた雨傘運動や抗議活動なども書き換えられてしまうかもしれない。

「それに抗うものとして、警戒しつつも、恐怖にはおびえず、香港を記録していきたい。未来の世代に対して、今起きていることを考える材料を残したいと思います」と。(前出チャン監督の言葉)そして、

「革命を期待して失敗した後、絶望を抱えながら残りの人生をどう生きるか。自らの記憶との向き合い方の問題でもあります。時代や場所を超えた普遍的なテーマです。今を生きる若者にも問いかけたい」(同上)  

中国共産党の押し付ける歴史観や価値観と闘いながら、香港の人々は、こんなにも苦しい思いを抱えて生きていかなければならないのか。

「あなたは香港に残りますか?」との問いに、

「現時点では、残るつもりです。今の香港は危篤状態の両親のように思えるのです。適切でないたとえかもしれませんが、亡くなる前だからこそ一緒にいてあげたい。そんな気持ちもあります」

こんなにも優しくて、悲しい思いを持って生きている人が香港にいることを忘れてはいけないだろう。権力者は忘れることを待っているのだから・・・・・。




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