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国家のウソをあばくー“Bellingcat ”(猫に鈴をつけるの意)という調査機関とその手法

街角で買った”THE BIG ISSUE” (2022.6.1発行のvol.432)でその存在を知った。
記事には、「国家によるスパイ活動や戦争犯罪の証拠を見つけ、政治の嘘を暴く『オープンソース・インテリジェンス調査』」とある。ちなみに、Bellingcat という名前は、ネズミが猫に鈴をつけて安全になるというあのイソップ童話からきているそうだ。

まだ我々の記憶に新しいマレーシア航空機がウクライナの上空で撃墜された事件。撃墜したのは、ウクライナ国内の親ロシア派分離主義者らで、ロシアが提供したミサイル「ブク」をつかって撃墜したことを証拠とともに突き止めたのが、この調査機関である。

さらにロシアの野党指導者だったアレクセイ・ナワリヌイの殺害未遂犯の正体の特定。これを否定するプーチンにさらなる音声データでダメ押しまでやってのけた(回復したナワリヌイが実行犯の1人に電話をかけ、殺害失敗の理由をたずねるとその犯人は全てをしゃべったそうだ。録音されているとも知らずに!)

*これは「ナワリヌイ」と言うドキュメンタリー映画になっている。このシーンもしっかりはいっているんだとか👍

インテリジェンスと言えば、かつてのソ連のKGB、アメリカのCIA、イギリスのMI6などが、秘密裏に何やら諜報活動を行うことを想起する。一般市民がうかがい知らない「裏の世界」で行われるスパイ活動のことだった。だが、この調査機関はネット上で公開されている写真や映像を駆使して、国家によるスパイ活動や戦争犯罪の証拠を見つけ、政府の嘘を暴くのだ。

ウェブ上やSNSで公開されている情報や画像を駆使した「オープンソース・インテリジェンス(略称:オシント)調査」と呼ばれる手法は、SNS上の情報や画像、戦地から発信される映像などの第一資料を収集・保存・検証・位置確認などの作業を行い、証拠として確立する。この機関の創設者は、この手法のカリスマ的存在だそうだ。

そして、そうして集められた証拠は、ハーグ国際刑事裁判所などの戦争犯罪を裁く法廷で、証拠として使える精度の高い品質を保持している。ハッキングや秘密の情報源は使わない。証拠や検証過程もウェブサイトで公開するという透明性、説明責任の姿勢を貫いている。

シリア内戦での化学兵器使用の暴露。そして直近では、ブチャの虐殺はロシア軍による犯行であるとの証明。否定するロシアに対して、映像、画像、Googleマップを駆使して反証を打ち立てた。

しかもその運営は、助成金、個人・団体からの寄付、EUなどの機関の資金提供によってなされており、その立場は不偏不党である。彼らがこの活動で目指しているのは、偏見を持たず恐れることなく、公平性、正確性、透明性を持って、記録された証拠を通して事実を打ち立てることである。

Bellingcat ーValues
We aim to achieve fairness and accuracy in our work at all times. We regularly report on issues of justice, transparency and accountability. As such, it is only fair that we look to hold our own work to these values.
We seek to establish facts through objectively documented evidence, presented completely and in full context. Our researchers seek to report fairly, transparently and without bias, fear or favour.
(bellingcat ウェブサイトから転載)

この機関の活動ー市民が証拠収集するーは、今まで特定の人々によって行われてきた諜報活動や報道に大きな変化をもたらしているのではないか。

さて、この記事が掲載されたTHE BIG ISSUEという雑誌は、ホームレス状態にある人や生活困窮者に対して「雑誌販売」という仕事を創る社会的事業として発行されているものだ。イギリスが発祥である。路上で販売され、定価の半分以上が販売者の収入になるようだ。いわく因縁はさておき、この雑誌定価450円、決して分厚くはないが、いつもきらりとした記事が掲載されている。是非手に取ってみてください。

bellingcat のウェブサイト   https://www.bellingcat.com/



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