今日ときめいた言葉、ではなくTV番組52ー「街角ピアノ/駅ピアノ/空港ピアノ」から
(タイトル写真は、nhk.ondemand.jpより転載)
NHKの番組に「街角ピアノ」「駅ピアノ」「空港ピアノ」という番組があるのをご存知だろうか。世界中・日本国内の街角や駅や空港に置かれたピアノを誰でも好きなように弾くことができる。そんな一曲とその弾き手の一言を一コマ一コマ流し続ける番組である。
なんのことはない番組なのだけれど、なぜかひかれる。見始めたら止まらなくなる。懐かしいメロディから本格クラシックまで、プロからつい最近独学でピアノを始めた人まで。聞いたことのあるメロディや懐かしい曲にしばし耳を傾ける。引き終わった後、引いた人の一言がある。この一言がいい。その人の人生の一端が垣間見られることもある。
雑踏の中に置かれたピアノの演奏者から、「この世界に生きている人々は皆それぞれの思いを持って生きてるんだなあ」と改めて気づかされる。
そして音楽の力。文章と違って、音楽は言語で表現しにくい。でもオペラのアリアを聞いたとき、オーケストラの演奏を聴いたとき、鳥肌が立ったり、涙がこぼれたりする自分がいる。何故かは言語化できない。でも確かに私の感情は反応している。
絵画も音楽と同じで、その印象やときめきをうまく言葉にはできない。でも素敵な絵に出会ったら、「うわーっ」と心が反応する。オルセー美術館に行ったときだって時間がいくらあっても足りなかった。私の心は印象派の絵に反応するらしい。絵の知識など全く持ち合わせていない私だけれど、ただ心がときめく。
そもそも言葉だって、自分の心を語り尽くせない。語っても語っても、語りきれないものが心に残る。そんな伝わらない思いを常に抱えている。
「わたしたちが文章を書くのはなぜでしょう。他者に何かを伝えたいからです。言葉は、原理的に他者を必要とする。」(「今日ときめいた言葉46」)と書いているのは近藤康太郎氏であるが、このジレンマは永久に消えない。誰かに伝えたい、でも語りきれない思いが残る。
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