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今日ときめいた言葉190ー「DIME」とは?

(2024年8月2日付 朝日新聞 百年未来への歴史「持たざる国 逆戻りの日本」)

DIMEとは

D = Diplomacy 外交
 I =  Information 情報
M = Military 軍事
E = Economy 経済 

*+T=Technology 技術  (近年では中国に対抗するために加えられた)


国家安全保障の構成要素で、これらを駆使して目的を追求する。軍事だけでは国の安全が担保できない。よってこのDIMEを統合して国の安保を確保するというのが欧米の常識なのだそうだ。

「日本政府は27年度の防衛費のGDP比を2%にすることに決めた」

このGDP(Gross Domestic Product 国内総生産=国の経済力の目安)は1940年代に、「資源や物資など戦争を遂行できる生産力がどれだけあるか正確に把握する指標として、米英が開発したもの」で、「第2次世界大戦が生んだ数多くの発明品の一つ」だそうだ。

その日本のGDP、世界全体に占める割合は1920年は3.4%、1990年には8.6%、2022年には3.7%に落ち込んだ。戦前と同レベルである。現在のGDPは世界4位であるが、2050年には6位、2075年には12位へ転落が予想されるという(米ゴールドマン・サックス調べ)もはや「経済大国」とは言えない地位に転落しそうだ。

一方、防衛費はGDP比を倍増させ、27年度の防衛費は世界5位内に入り「軍事大国」の仲間入りをする可能性があるという。

問題はこの歴史的増額が「国力」に見合っているか、日本の安全保障にDIMEの発想があるかどうかだという。

「国家安全保障戦略」の中身は、どうも経済・外交に関する記述が乏しく、経済安保の項目も他の記述とのつながりがないという。

(この戦略の一部を担当した幹部は「戦略の全体像の議論もなく、他の項目の記述も見せてもらえず、一部の項目だけ割り振られた」と言っているとのこと)

日本にありがちな意思決定の構造ーオープンな議論を行わず縦割りでバラバラで一体感に欠ける(そして最後は誰も責任を取らない)

この戦略会議の前に首相官邸が設置した有識者会議で、日本総研のエコノミストが「防衛力強化には、持続的な経済、財政基盤強化と国民の意識の共有が大変重要だ」と訴え、さらにエネルギー自給率の低さ、債務残高のGDP比の高さなどのリスクなども指摘したが、この会議は4回開かれただけで議論は煮詰まらなかったようだ。

戦前の日本でもこのようなDIMEの発想で国力を見つめようとしたことがあったようだ。1939年に設置された「戦争経済研究班」は、対英米戦の勝算について経済的側面から分析した結果、「持久戦には耐えがたい」と報告している。

また、1940年には「総力戦研究所」を設置し、総力戦に関する演習・研究を行い、41年8月に「必敗」と報告している。しかし、両者の報告は聞き入れられず、戦争に突き進んだのである。

(この「総力戦研究所」のことは、先週のNHKの朝ドラ「虎の翼」で初めて知った。Wikipedia で調べると実在した研究所で「日本必敗」との報告書を提出したが、東條陸相らは「机上の空論とまでは言わないが・・・」と聞き入れなかったそうだ)

英国の経済学者アンガス・マディソン氏の研究チームの推計を見ると、日本は勝敗にかかわらず経済力にそぐわない戦争を繰り返してきたという。

朝鮮出兵直後1600年、中国のGDPは日本の10倍
日清戦争直前1890年、中国のGDPは約5倍
日露戦争直前1900年、ロシアのGDPは2.5倍
太平洋戦争開戦時、日米格差4.9倍
現在の中国のGDP、日本の5.3倍、2050年に7.4倍

第一次世界大戦後のワシントン海軍軍縮条約で、戦艦の保有制限の受諾を決めた加藤友三郎海相のち首相の言葉、

「国防は軍人の専有物にあらず。国防は国力に相応ずる武力を備うると同時に、国力を涵養し、一方、国防の外交手段により戦争を避くることが、目下の時勢において国防の本義なりと信ず)

戦前の首相の方がよっぽど見識があって、正鵠を射た考え方をしていた。

朝日新聞から転載

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