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アフターデジタルに向けた OMO 環境構築

1 | はじめに

日経BP社から発売されている書籍「アフターデジタル」では、OMO (Online Merges with Offline) に向けたビジネスの在り方を指南しています。

この書籍で案内されているように、今後のビジネスにおいては、アプリや Web 等で収集したオンライン情報だけではなく、オフライン情報もデジタルデータ化してユーザー行動分析に活用し、持続的なビジネス成長に向けた UX 向上に活用するといった環境構築が重要になってきています。

実際に Amplitude でも数多くの OMO 環境構築の支援をさせて頂いています。例えば以下のような事例があります。

[事例 1 : 某自動車メーカー]
この自動車メーカーは、顧客とのタッチポイントがあまりにも少ない事を課題と感じてました。

車を購入した顧客がどのように車とエンゲージメントを高めているのかを把握したいのですが、顧客とのタッチポイントは年1回のメンテナンスの時くらいです。

一方、車の買い替えの商談機会は突然やってきます。その商談機会に最適なご提案を顧客にしたいのですが、顧客が車をどのように利用しているかの情報が少なく最適な提案ができてませんでした。

そこで、この自動車メーカーが取った手段が、エンジンの起動、バッテリー、燃料、走行距離等、センサーで取得できるあらゆるオフラインデータを収集し Amplitude へ展開し分析する事です。

これにより、顧客がどのようなサイクルで車を利用しているか、いつ頃買い替えタイミングになるのかを車種事に分析する事ができるようになりました。

さらに分析を深掘り、顧客が車のエアコンやサンルーフ等の機能をどのタイミングで利用するかの行動分析する事により、より利便性の高い車内のユーザーエクスペリエンス改善に分析データを利用できるようになりました。
[事例2 某コマース企業]
この企業では、Web やアプリでは電子的にクーポンを提供し、また、実店舗においては印刷したクーポンを提供して売上げ向上を図ってました。

印刷したクーポン、アプリ内クーポン、電子メールでのクーポン、どのクーポンが最も売上げに効果的だったのかを把握したかったのですが、Web やアプリでのオンライン購買と店舗でのオフライン購買をシームレスに分析する事ができず、どのチャネルにマーケティング予算を重点的に投下したら良いかを判断する事ができませんでした。

そこで、Amplitude にオンラインとオフラインデータを投下する事により、チャネルをまたいでシームレスに分析できるようになり、どのチャネルでクーポンを展開したら最もユーザーに訴求効果が高く、結果、売上げに貢献しているかを確認する事ができるようになりました。

これにより、売上げ向上だけではなく、お得情報をより多くの顧客に認知して頂く事で顧客エンゲージメント向上にも繋がるようになりました。

こういった OMO 環境整備は非常に困難なように見えますが、実現可能です。ここでは、この実現方法についてご案内します。


2 | OMO 環境構築に向けたステップ

Amplitude では OMO 環境構築に向けた支援をしています。その大まかなステップは以下になります。

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この手法により、Amplitude では 100社を超えるグローバル企業へと OMO 構築の実現をサポートしてきました。次章より各ステップの詳細をご案内いたします。


3 | 「意味あるユーザー行動ログ」の設計

Amplitude では、OMO 環境構築において最初に最も重要なのは 「ユーザー行動を軸としたトラッキングログの設計」と考えています。

Amplitude では、このログ設計概念を次のように呼んでいます。

タクソノミ設計

このタクソノミ設計が最も重要な工程の一つになります。例えば以下のユーザー行動アクションについて考えてみます。

商品やアイテムの購入

皆さんの環境では「ユーザーの購買アクション」をどのように行動ログとして取得しているでしょうか?弊社が頻繁に頂くご相談事項として以下があります。

・アプリ毎に「購買イベント名」が異なっている
・部門毎に「購買イベント名」が異なっている
・購買アクションをイベントでなく購買完了ページへの遷移で計測している

このような状態ですと「購買」といった共通のユーザー行動が異なったアクションとして認識されてしまいます。

これを避ける為に例えば以下のように全ての購買アクションを統一するように設計します。

Purchase Item

このようにユーザーの行動を軸として統一した行動イベントを設計する事を「タクソノミ設計」と Amplitude では呼んでいます。

このタクソノミ設計の詳細については以下をご覧ください。なお Amplitude ではタクソノミ設計支援も請け負っています。詳細については最後にあるメールアドレスへとご相談頂けると幸いです。


4 | 「意味ある行動ログ」への変換

タクソノミ設計が完了したら、次はログデータをタクソノミで設計したイベントと紐付けして「意味ある行動ログ」へ変換する作業になります。

この工程で核となるのが「ETL 処理」です。

ここでは、先ほどタクソノミ設計した購買アクション Purchase Item を例に、どのように ELT 処理するかを考えてみます。

一般的に購買アクションが発火する条件として以下があります。

・購入ボタンが押下された時点 (オンラインアプリ環境)
・購買完了ページに遷移した時点 (オンラインWeb環境)
・レジでお支払いした時点 (オフライン環境)

上記それぞれの条件が発生した際、先ほど設計した以下の購買アクションへ紐付けします。

Purchase Item

これにより、あらゆる環境における「購買」といったユーザ行動を統一して「Purchase Item」と表現できるようになり、複数の環境を統合して分析がでできるようになります。

ユーザー行動を統一すると、例えば、以下のようにユーザーが購買に至るまでのジャーニーをオンライン | オフラインに影響される事なく、シームレスに可視化する事ができるようになります。

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なお、Amplitude では、このように OMO 環境に向けたオンライン|オフラインデータをシームレスに統合した ELT 処理のソリューションをパートナー様と共に請け負っています。


5 | ユーザー行動分析手法の確立

オンライン | オフラインのユーザー行動をシームレスに分析できるようになりましたら、次にご案内しているのが以下になります。

ノーススターメトリック (NSM)

NSM は、著名なグロース企業で積極的に採用されている「指標設計フレームワーク」です。

NSM では、ビジネス成長を求める指標として、ユーザーのエンゲージメントレベルも同時に測定できるように指標を設計する事が重要としています。その指標設計のイメージが以下となります。

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NSM フレームワークでは、指標設計をする際、以下の要素の計測ができる事を考慮に入れています。

・企業が提供しているサービスの利用状況が計測できるか (企業側)
ユーザーが感じているサービス価値を計測できているか (ユーザー側)
・売上げの先行指標となっているか (企業側)

ちなみに、ご相談頂く企業の多くでは、売上げといった KGI を因数分解して各種指標を設計している状況を見受けられます。

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このように、「アクティブユーザー数」「購入率」等の指標を定点観測する事はビジネス状況を把握する上で非常に重要ですが、以下を計測できてません。

ユーザーのサービスに対するエンゲージメントレベル

ちなみに、NSM は NETFLIX, Amazon, Airbnb, Facebook 等多くのグロース企業で採用されています。以下は NSM 指標例となります。

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NETFLIX においては「視聴コンテンツ数」を NSM 指標として設計しています。これは以下を満たしています。

・企業が提供しているサービスの利用状況の計測
ユーザーが感じているサービス価値の計測
・売上げの先行指標

「視聴コンテンツ数」を追うべき指標とすると以下の効果が期待できます。

(1) 企業側では、より多くのコンテンツを視聴してもらう為に、魅力あるコンテンツのラインアップを増やしたり、UX を改善してコンテンツのディスカバリを容易にしたりする努力をします。

(2) この企業努力が、きちんとユーザーに届いているか判断するのにユーザーの平均視聴コンテンツ数で確認します。

(3) ユーザーの平均視聴コンテンツ数が増加し、ユーザーのエンゲージメントレベルを担保できると、サブスクを継続する確率が高くなり、結果、ビジネス向上が期待できます。

きちんとした NSM 指標を設計すると上記のような効果が現れます。この効果が現れ始めると以下の疑問がでてきます。

ロイヤルユーザーはどのように自社サービスを利用しているのか

NETFLIX のようなサービスの場合は、ロイヤルカスタマーの以下のような行動を確認したくなるかもしれません。

・ロイヤルカスタマーの月間コンテンツ視聴回数
・ロイヤルカスタマーのコンテンツ視聴完了率
・ロイヤルカスタマーの次のコンテンツ視聴間隔
・ロイヤルカスタマーのマイリスト利用率
・ロイヤルカスタマーが特に利用している機能

この状態になると以下を確認できる環境構築が重要になってきます。

ユーザー行動分析

ユーザー行動分析ができるようになると、データの活用方法が PV やアクティブユーザーを集計するといった結果集計による可視化から以下のように利用方法が拡大してきます。

ビジネス成長に向けたインテリジェンス

データがビジネス成長に向けたインテリジェンスになりますと、分析したユーザー行動データを以下のように利用できるようになります。

分析データを UX やサービス向上へと活用

分析したユーザー行動データを UX やサービス向上へと活用する上で NSM は非常に効果が高いフレームワークです。詳細については、以下もご参考して頂けますと幸いです。


6 | 永続的な UX 改善環境の実現

分析したユーザー行動データを UX やサービス向上へ活用する環境が構築できたら、次のステージとして以下のサイクルの構築をご案内しています。

グロースエンジン

グロースエンジンとは以下の図に示す施策実行と検証の PDCA サイクルを高速に回転させ、市場学習機会の頻度を高めビジネス成長に反映するフレームワークです。

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グロース企業では、この学習機会のサイクルを以下ように年1,000回以上の PDCA を実現しています。

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年 1,000 回以上の PDCA を実現するにあたり、MA ツールによる自動化のサポートは不可欠になります。その為、Amplitude では戦略的に以下のような MA ツールとプラグインを実現しています。

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これら最適なツールと連携して施策実行と検証を自動化する事により、年 1,000 回を超える学習機会を実現しています。

なお Amplitude では年 1,000 回を超える学習機会を実現する環境構築のご案内も行っています。ご関心がありましたら、お気軽に以下へとお問い合わせください。

お問い合わせ : tokyo@amplitude.com


7 | まとめ

ここでは、アフターデジタルに向けた OMO 環境構築の手法についてご案内しました。具体的な分析手法についてご関心がございましたら、以下もご参考頂けますと幸いです。


8 | 「リテンション向上の虎の巻」無料 DL ご案内

北米で最もダウンロードされているリテンション向上教本の抄訳 (全63頁) 登録不要ダウンロード頂けます。

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8 | Amplitude 無料アカウントについてのご案内

Amplitude は月間 1,000 万イベントまで無料でお使い頂けます。ファネル分析 | LTV 分析 | リテンション分析 | アクティブユーザー分析等、グロースに必要な分析を行う事ができます。

Twitter, dropbox, Microsoft, Hubspot 等で利用されている分析ツールをご自身のプロダクトでもお試しください。


9 | Amplitude について

Amplitude は、多くのアナリティクスが採用している「セッション軸」でなく、「ユーザー軸」でユーザー行動分析ができるアナリティクスです。ユーザー行動分析により、顧客理解を深める事ができ、データに裏付けされたサービス改善を図る事ができます。

Amplitude は全世界で30,000社以上の導入実績があり、NTTドコモ, Microsoft, Twitter, Dropbox, PayPal, Under Armour 等のグローバル企業で利用され、データに裏付けされた顧客理解やサービスグロースを支援しています。

日本市場においては、パートナーである代理店と共に、イベント設計、ETL、導入から分析を含む運用支援を一気通貫でご提案させて頂いています。

お問い合わせ : tokyo@amplitude.com