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何もかもが叶った100日間を振り返る

ミュージカルプログラムに参加した怒涛の100日間が終わって3週間。
最近になってようやく余白が生まれてきて、同時に頭の中もすっきりしてきて、色々なことをアウトプットしたい気分になっています。
中でもミュージカルのことは、記憶が薄れないうちに書いておきたい。

公演直後にはチームの話を書いたので、今回は私個人のやりたかったことにフォーカスした話です。
走り書きした当時はまとまりきらなくて出せなかった、公演1週間前~終了直後の下書きを加筆・再構成してお送りします。


最終練習の日に

公演の前の週にあった最終練習、ちょうど誕生日だったんです。
いろんな人に祝ってもらって、シュークリームを口いっぱいに詰め込まれて。(チーム恒例のお誕生日イベント。胃もたれ心配だったけど問題なく消化した)
こんな賑やかに祝ってもらえる誕生日は、人生後にも先にもないんじゃないかと思うくらいでした。

一番大事な本番が残っているとはいえ、ミュージカルプログラムも終わりが見えてきたということで。
朝にふと思い出して、始めたばかりの頃に書いた決意表明を読み返していました。

決意表明のことなど忘れていたくらいなのに、気が付けばそこに書いてあったことのほとんど全部が叶っていました。

衣装
本当にこだわりました。
イチから自問自答して作り上げた衣装は周りからも好評で、3年半前に初めて舞台に上がった時よりも、来てくれた人たちにすぐに見つけてもらえた気がする。
作品世界に生きる自分自身を衣装で表現できたことは、本番を終えた後の現実の服選びにも良い影響となって表れてきています。

表現の幅を広げる
ダンス、頑張りました。
本番直前になっても上手いとは言えない状態だったけど、踊ることがとにかく楽しい!
技術のなさを笑顔と度胸でカバーしていました。
決意表明を書いた時点では配役が決まっていなかったけど、身体表現が苦手という趣旨のことが書いてあって、これは何かのフラグなのかと思ってしまう。笑

ダンスを楽しみつつ頑張っていたことは、まだ前半部分までしか配役が発表されていなかった時期に記事にしていました。
このあとさらに大変なダンスが待っているのです……懐かしい。

インプット(聞く)とアウトプット(話す)のバランスを取る
期間中はまったく意識していなかったので、決意表明に書いていることがそのまま達成できているとは言い難い。
けれども自己開示したり、思いを伝えることはできたと思います。
自分の発した言葉が誰かに影響を与えていると思えることはやっぱり嬉しい。

チームを作る
本当に奇跡といってもいいチームに巡り合えた。
本番から1週間も経っていないころ、この最高のチームについて語りたかったので、下書きから切り出して先に公開したくらい。
先ほどのダンスの記事を書いたときから更に時間と経験を積み重ね、私たちは最強で最高のチームになったと思う。


決意表明に書いたことは、最終練習の時点でほとんど叶っていました。
しかしあと一つだけ、叶っていないことが。

それは芸術というコミュニケーションを体感すること。

舞台も含めた芸術って、作る人の思いと見る人の思いが重なって、何かが生まれることが魅力だと思ってて。
それを57期の公演でも実感したいし、観てくれる人たちにも実感してほしい。
公演当日、みんなで叶えたい!

私達ならきっとできると思うから、1週間後全員で最高の公演を届けてこうね!!

大陸ラインに投稿した文章から一部抜粋

最終練習が終わったあと、当日時間がなくて伝えられなかったことを大陸ライン(=チームのライングループ)に投稿しました。
これこそが100日を始めた時の思いでもあり、その少し前に芸術を学ぶことを志した理由でもある。

原点回帰。

1週間でできることはわずか。
でもできる限りのことはやろう。
そんな気持ちで、どこかふわふわそわそわしながら本番直前の1週間を過ごしました。

やりたかった配役、本番の舞台

あっという間に時は流れ本番当日。
朝9時前に集合し、舞台の幕が開くのは19時半。
結構時間はあるようだけど、怒涛のように過ぎていく。

プログラム開始当初にやりたかったことはほとんど叶ったと先ほど書いたけど、舞台上での配役も、個人的にこれ以上ないと思うくらいやりたいことをやらせてもらいました。
ソロパートがある役はスキル面で自分にはないと割り切った上で、配役としてやりたかったことは3つ。

やりたかったことがどう叶ったのか、そして舞台上で何を感じたのか、本番の流れに沿って書いていきます。

①3年前に一度出演した時とは違う色の大陸
(前提として、作中では現実世界の各地域をモデルにした赤・緑・黄・青の4大陸に分かれているという設定があります。赤はアフリカ「情熱」、緑はヨーロッパ「気品」、黄色はアジア「調和」、青はアメリカ「自由」を表しています)

他の記事で読んでくださっている方には繰り返しになりますが、今回私は青大陸でした。

私が本作「A COMMON BEAT」を初めて観客として観たのは、3年半前に初めてミュージカルプログラムに参加した公演の1か月前のこと。
青大陸のテーマが王道ミュージカルっぽい雰囲気で、一気にミュージカルの世界に引き込まれたのを今でも覚えています。
前回は黄色だったので、今回は別の大陸なら何色でもいいと思っていたつもりでしたが、内心では青の明るく楽しい雰囲気に憧れていたのかもしれません。

序盤には大陸ごとに特色のあるダンスを立て続けに披露するシーン(通称:大陸ダンス)があります。
青大陸のダンスはどれも明るくノリの良い曲ばかりで、踊っていて全部楽しかった。

②前回出演したときに練習して歌うのが楽しくなったので、歌も頑張りたい

大陸ダンスのシーンでは、大陸ごとに1曲、大陸テーマといわれる歌付きの曲があります。
その中で私は、ステージには出ないけれど舞台袖のマイクで歌って音に厚みを出す、通称影コーラスを一つやりました。
歌でソロを貰える人は本当に上手い人ばかりなので、私は影コーラスでもできたら嬉しいなと軽い気持ちでいたら、まさか本当に叶うとは。
前回出た時に所属していて思い入れのあった、黄色大陸のテーマソングです。
内心一番歌いたかった曲なので、舞台袖から歌えることになり嬉しかった。

舞台の序盤は、大陸ごとに楽しく暮らしている様子や大陸の文化を表現するシーンが続いていきます。
舞台では観客を引き込みたい、舞台袖では他の大陸の人たちを応援したいと思いつつ、100日間で積み上げてきた大陸の仲間との絆を感じ、とにかく楽しい~!という気持ちで駆け抜けていきました。


大陸テーマがひと段落つくと、本格的に物語が展開していきます。
一人の女の子が別の大陸の存在に気づいたことをきっかけに、大陸を越えた人々の交流が始まっていく。
しかし人々の交流を良く思わない人もおり、後半部分では戦争が巻き起こってしまいます。

前半の山場となる幸せなシーンをぶち壊すことが後半のスタートであり、ここでいかに突き落とせるかが大事。
私はこの幸せ空間を壊しに行く役回りをやっており、素のままの自分で行くと辛すぎるので、しっかり気持ちを作ってから出ていくようにしていました。

ミュージカルなので気持ちが高まるとみんな歌い出すわけですが、前半の山場となるこのシーンでは、舞台上に出ていない人も舞台袖でコーラスしています。
観客席から見ると、舞台全体から軽く柔らかいリズムがふわっと出てくるように感じる、幸せで感動的なシーンなのです。
……なのですが、私は一切コーラスしていません。
そこで歌ってしまうと気持ちの切り替えがつかなくなるからです。

周りがみんな歌っているのに自分だけ歌っていないというのは、意志をもってやっている役作りの一環とはいえ、その場にいてはいけない存在として追い詰められているかのような嫌な感情が湧いてきます。
練習、本番と回を重ねるごとに、その幸せ空間でヘイトを溜めるのがうまくなってきて(笑)、思いやりと正義感と嫉妬心とが入り交じったような何とともいえない感覚に。
ああ私こんな感情持てちゃうんだと、ある意味新鮮でした。

そうして始まった戦争は何もかもを奪い、壊してしまいます。
戦争のあと悲しみに打ちのめされていた人々が、それでも徐々に悲しみから立ち上がっていく様子が描かれていきます。


その後一気に作中の時は過ぎ、平和になった世界で人々が違いを乗り越え、楽しく踊って盛り上がるという場面に移り変わっていきます。

③ダンスは苦手だけど、後半にあるダンスナンバーに出てみたい

前回出た時には配役がなく舞台袖で見ていたのですが、とても楽しそうで、もしも次出演するならここに出たいと思っていたシーン。
この曲では立ち位置によって出番の長さやダンスの難易度にばらつきがあるので、振りが簡単な後ろの方でいいからあの楽しい雰囲気に混じれたら、と軽い気持ちで希望を出しました。

しかしふたを開けたら、一番振りが難しい立ち位置に当たる16名のうちの一人として、最前列で踊ることになっていました。
配役が発表されたときはやばいと思う反面嬉しさもあり。
あまり表には出さないようにしていたけど、本心では前で踊りたい気持ちが最初からあったのかもしれないと思います。

最初のサビの直前で場所を移動すると最前列のほぼセンターの位置になるのだけど、その景色にすごく気分が上がって。
その時ステージ上で見えた景色は今でもよく覚えています。
純粋にここで踊れることを楽しみつつ、お客さんにも今の自分を思いっきり届けていきたいという気持ちになりました。

その曲が終わると、連続して平和のメッセージを伝える歌に入っていきます。
ダンスでテンションが上がった状態で歌に突入するので、毎回自然と感情が乗せられて楽しかった。
本番の舞台上では、近くのお客さんの顔を順に見ながら熱唱していました。
(舞台最前列にはマイクが仕込まれているのですが、再び場所を移動して端の方にいるのでそんなに音を拾わないだろうと思って、MISIAが歌ってるくらいの気持ちで好きに歌ってました)

本気の先にある景色

これまでの私は、自分は本気を出せていない、本気を出すってどんな状態か分からないと思っていました。
本気でやるって、無我夢中で自分の120%を出し切ることだと想像していたのです。
しかし本番の舞台に立ってみて、私にとっての本気とは、その場でできる限りのことをやりつつも冷静さは失わない、思っていたよりも自我を保ったままの状態だとようやく理解できました。

自分は本気を出せていないと思ったけど、これまでももう出せていた。
なんなら高い出力のまま走り続けているにも関わらず、まだまだだと思っていた。
つい上ばかり見てしまうけど、もう十分頑張ってたのかも。

その上で、千秋楽では本気の先にある景色を見ることができました。

一旦最終練習まで時を戻します。

その日の通し練習では、誕生日だからといつもより目立とうとするでもなく、最後だからとテンションが爆上がりするでもなく、舞台上の空きスペースを埋めることに心血を注いでいました。
通し練習が終わりに近づくにつれ、せっかくの最終練習なのに、誕生日なのに、このまま普段通りの通しで終わっていいの?という気持ちがわいてきた。
しかし、終盤にもなると曲目の都合上、自分ひとりが目立とうとする動きは合わなくなってきます。

終盤、舞台上で私が立っている場所は前列の一番端っこで。
振り返ると、全体がよく見える。
皆一人ひとりが自分の足で立っている。
きっとこの場から私がいなくなっても、私一人が歌わなくても、歌声は観客に届いていくはずだし、空いている場所は誰かが埋めてくれるだろう。

公演を実施するという一点からすれば、私たちはいくらでも替えのきく人間で、誰かがいなくなっても舞台は回っていく。
それでも、この舞台上にいる人は誰一人欠けてはならないのだと思ったのです。

そのことに気づいた瞬間は特に感動に襲われることもなく、穏やかでした。

本番当日、千秋楽の終盤で見えた本気の先にある景色とは、舞台と一体になれたような感覚。
大きな舞台の中に自分自身が消え、舞台の一部となっていく。
けれども自分自身は確実にそこにあり、自分の足で立って歌っている。
最終練習の最後に80人のキャストに対して持った感覚が、観客を含めたホール全体に広がっていく。
ホール全体が一つになり、ここに作品が完成する。

芸術というコミュニケーションを体感する。
原点としてあった思いが、自分の力で、みんなの力で、叶った瞬間でした。

100日間を終えて

ミュージカルプログラムに参加した100日間。
2回目の参加なので全体の流れは分かっている状態で、週末の練習をしっかりやりさえすればどうにかなると思って参加を決めました。
しかし実際に始まってみたら、前回よりダンスの練習が大変だったり、仕事の量も責任も多くなっていて平日もエネルギーを使ったりと、思った以上に負荷が高かった。

大変だった一方、ここまで書いてきたとおり「こんなに思い通りになることある?」って思ってしまうほどに何もかもが叶った100日間でもありました。

本番当日にコアスタッフ(運営スタッフの中でも、特に中心となってプログラムを運営してくれたディレクター・演出・キャプテンの3名)が一人ひとりにメッセージを書いて渡してくれました。
メッセージにはそれぞれに合わせた単語が添えられていて、私のは「恵」でした。
その一文字をもらって思ったのは、びっくりするほどに恵まれた100日間だったなということ。
同時に、周りに対しても「恵」を分け与えられていたなら、もしコアスタッフの目にそのように映っていたなら、これほど嬉しいことはないと思いました。

3年半前、初めてこのプログラムに参加した時には、自分を変えたいという強烈な思いがありました。
今回はそれほどの強い思いはなかったものの、結果としてこの3年で積み重ねた自分の集大成のような100日間になったと思います。

前回と今回では表現できることが大きく変わり、自分の素直な思いをそのまま外に出すことができるようになっていた気がします。
前回と比べると私が呼んだお客さんの人数は半分以下なのだけど、前回以上に熱い感想をたくさんいただけたのが何よりの証拠です。

この100日で得たものを大切にし、今度はプログラムの外の現実世界にそれを還元していきたい。

そして、今回の100日間は3年間の集大成である一方、3年間の軌道修正をする100日間でもあったように思います。

3年半前にプログラムに参加して人と関わる姿勢を変えることができたにも関わらず、本番が終わってすぐ、コロナ禍で人と会う機会は制限されてしまった。
元々一人でいることは苦にならないので、人と会えない状況にもすぐに慣れたし、特にストレスを感じることもなく過ごしてきました。
その後は転職活動をして仕事を変えたり、ファッションを通して自分に向き合ってみたりと、他人よりも自分にフォーカスする形でこの3年間を過ごしてきました。

人の目ばかり気にせず、とことん自分にフォーカスする期間は必要だったと思います。
でもそろそろ、自分ばかりに振りきらず、人のために動く方向に軌道修正する時期だったのかもしれません。
一緒にプログラムに参加した仲間に対して私ができたことはほんのわずかだったけど、それでもこのタイミングでしっかりと人と関わる経験をすることは必要だったように思います。

101日目以降、私はどうなっていくのだろうか。
正直ここまで頭の中や環境を整理していくことに必死だったので、進む道がはっきりと見えているわけではありません。
けれどもきっと、今以上にいい方向に進んでいくはずだと信じています!

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夏の思い出

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