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ディオール展は美しい夢の世界だった

先日、「クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ」展(以下、Dior展)に行ってきました。
ディオールはコスメも含めてまだ何も持っていませんが、ハイブランドの中では特に好きな雰囲気のブランドです。
ブランドの世界観を堪能できるまたとない機会に、展覧会に行くのを心待ちにしていました。

当日はディオールの世界にどっぷり浸かり、言葉にならない感覚を受け取って帰ってきました。
その感覚を言語化しようとした結果の主観的なレポートなので、現場の様子を知るのにはあまり参考にならないかもしれません。

行ってみたいと思っている方は、ぜひご自身の目で確かめていただければ!
と、丸投げしつつお送りします。

👗展覧会情報👗
クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ
開催場所:東京都現代美術館
会期:2022年12月21日(水)- 2023年5月28日(日)
観覧料:一般 2,000 円 / 大学生・専門学校生・65 歳以上 1,300円 /中高生以下無料
公式サイト:クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ | 展覧会 | 東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO (mot-art-museum.jp)

美術館に行く前に、GINZA SIXに立ち寄ろう

いきなり展覧会の話から逸れますが、Dior展に行くなら、先にGINZA SIXに行くことをおすすめします。
GINZA SIX⇔東京都現代美術館の間をDior展オリジナルラッピングのマイクロバスが往復しているのです。

バスに乗るためには、当日現地で予約をする必要があります。
次に発車する便だけ予約を受け付けているので、お目当ての便が発車した直後くらいにカウンターに行くのが確実かと思います。
予約は現地のカウンターでLINEを使って行うのですが、とてもスムーズでした。(時間が近づくとLINEで通知もしてくれます)

バスの予約を済ませたあとは、ぜひGINZA SIXを楽しみましょう!

さて、私は最近香水に興味が出てきており、展示の前にぜひとも行きたいところがありました。
地下1階にあるDiorの店舗(コスメ・フレグランスコーナー)です。

販売員さんに好きな香りの雰囲気を伝えると、次々と希望に合う香水のムエットを用意してくださいます。
似たジャンルでありながら少しずつ違う香り。でもどれもいい香り!
心からお気に入りの香水を見つけたいので、香りの変化まで確かめてから検討しようと、気に入った3種類のムエットを頂き退店しました。

展示を見る前に香水を試したのは、結果的に大正解でした。
私は結構バッグを開けっ放しで使うことが多いので、展示を見ている間もバッグに入れたムエットから香りが漂ってきます。
視覚だけでなく、嗅覚でもDiorを感じていると思うと気分が盛り上がる!
ちょうど香水を探しているタイミングだったら、展示を見に行く前にGINZA SIXに行き、Diorの香水を試着してみるの、おすすめです。

今回は時間がなくて断念したのですが、帰りもバスを予約してGINZA SIXに戻り、Diorの路面店で服やバッグを試着できたら最高!
もう一度行く機会があれば、ぜひバスで往復したいと思っています。

Dior展でのお気に入り

展示はとにかくボリュームがすごくて、2000円でも安いと感じるくらい。
1時間以上かけて回りましたが、まだまだ時間をかけてもよかったかも、という気持ちです。

自分の好きに特化し、主観100%で印象的だった3つを挙げてみました。
Dior展に行かれた方がいたら、どの服が・どの部屋が好きだったか語り合いたい!

① 真っ白な世界

天井に鏡が貼られているので、縦方向に空間が拡がる

オートクチュールの試作段階である、「トワル」が並ぶ展示室。
まだ名前のない、まっさらな状態の服が天井付近までずらりと展示されています。
他の展示ではつい服の色柄に注目してしまうけど、ここでは服のシルエットだけをじっくりと見ることができました。

展示してある服には刺繡や柄を配置するための線が残っていたり、縫い付ける前の待ち針がそのまま刺さっていたり。
製作途中の風景を冷凍カプセルに閉じ込めてそのまま持ってきた、まるで時が止まったかのような不思議な感覚になれます。

また、展示そのものの意図とは離れて、自分の「好き」の一つを思い出すこともできました。
華やかなドレスが並ぶ空間は見ていて楽しいけど、こういった真っ白な空間も落ち着く。
例えば、カラフルで個性的な形の花瓶も好きだけど、飾り気のない透明なガラスの花瓶も好きなように。
気分が盛り上がるとつい派手目のモノばかり注目しがちになりますが、シンプルでそぎ落とされたモノが好きな自分も忘れず、大切にしていきたい。

② これぞ桜、なドレス

今回のDior展の特徴として、創業~現在までの歴代デザイナーさん全員の服が展示されていることがあります。
同じブランドでありながら、デザイナーさんごとに個性があるのをその場で見比べられるのが面白い。
どのデザインも美しかったけど、私が惹かれる服は現クリエイティブ・ディレクターのマリア・グラツィア・キウリさんのデザインが多かったです。
繊細な刺繍にキュンとします。

その中でも一番好きなのは、始めの方に展示されている桜のドレスの一着です。

左から2番目のドレス

まず遠くから全体を見ると、一緒に展示されたドレスの中でもひときわふんわりとしていて幻想的。
触れると融けてなくなってしまいそうです。
透明感のある、儚いピンクはまさに桜の花びら。

カメラの性能が追いつかないのが悔しい

近づいてじっと見てみると、刺繍の模様や、縫い付けられた羽のグラデーションがとにかく繊細で美しい。
枝部分は、まるで生き物のようにしっとりしている。

このドレスのディテールを見ている間、私の目は糸や羽毛の一本一本を捉え、高精細・高解像度のカメラのように、時間が止まっているかのようにドレスを観察していた。
そして、あまりに繊細で美しくてちょっと泣きそうになりました。

できることなら1時間くらいこのドレスの前に立ち尽くして、隅から隅まで眺めていたかったです。

③ 好きな言葉

展示を見て回ると、展示室が切り替わるポイントを中心にクリスチャン・ディオールさんの名言が登場します。
その中でも一番のお気に入りがこちら。

「私の知るすべての事、見たこと、聞いたこと、
私の人生のすべてがドレスに凝縮されているのです。」

誰かが全力で生み出したものって、その人の生きざまが現れると思っていて。
最近見たもので印象に残っているのは、フジ子・ヘミングさんのピアノ演奏。
20年ほど前、流行のきっかけとなった番組のラ・カンパネラを聴いたのはたぶん小学生だったけど、あの音は今でもなんとなく覚えている。
昨年末にたまたまテレビで見た、90歳になるフジ子さんのラ・カンパネラ。
弾き方こそ大きく変わっているけれど、魂がこもった演奏であることは変わらず心に沁みた。

クリスチャン・ディオールさんも、他のディオールのデザイナーさん達も、全身全霊で美しいドレスをデザインしたんだろうなあ。
実際に制作に当たった職人さんたちも、心を込めて一着一着を完成させていったんだろうなあ。
言うは易し、行うは難し。
だからこそ生み出された服は見る者の心を打つ。

私も人生のすべてが凝縮された何かを、(目に見える形でもそうでなくても)生み出してみたい。

美しき世界よ

Dior展で唯一のマイナスポイントは、
あまりに世界が美しくて、現実に戻りたくなくなってしまうことです。

翌日が平日だったので、
「ああ、現実に戻りたくないなあ」
「仕事して社会の荒波にのまれたくないなあ」
と心から思ってしまいました。

展示を見に行った日付近はコンディションが下振れしがちなタイミングだったので、つい心が現実逃避的な方向に引っ張られがちだったとは思います。
それにしても、夢から醒めたくなーい!!


ほんとうは、この夢の世界のまま、生きていたいのだ。
歴史と文化と芸術を愛し、花や庭園を愛し、繊細で優しい世界に生きていたいのだ。

でも、現実の世界は美しい物事だけでは成り立ってはいない。

コンディションが戻ってこの記事を書いている今思うことは、
美しいだけではないこの世界から、あのドレスのように美しいところを抽出して、幸せなことを凝縮したいということ。
美しいものだけでは成り立つことのできないこの世界に、それでも美しいところはあるのだと信じ続けたいということ。

現実を生きる強さを持ち合わせていたとしても、
ほんとうは、綺麗事の中で生きていたいのです。


Diorの世界観は好きだし、そのイメージに近い服を着てみたいと思う。
でもそのままマネしたいわけではありません。
自分自身の世界観はDior100%ではないし、Dior100%で現実を生きようとするのは、私にはちょっと無防備すぎると思うのです。
でもあの世界観は、自分自身にも存在する、無くしたくない要素だとも思う。

展示を見終わった後に感じた、言葉にならない感覚。
その正体がなんなのか、書くうちにだんだん分かってきた気がします。

Dior展が私に教えてくれたのは、自分の奥底にある繊細で壊れやすい存在であり、それすらも肯定して美しいところを見せてくれるような、世界との向き合い方であったのかもしれません。


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