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こいびとはひかりがきらい
三月の終わり頃、恋人と四分咲きの夜桜を観に行った。
例年は人がいっぱいの大きな公園だが、このご時世と、時間帯が深夜というのもあって誰もいなかった。
巷では色んなイベントが中止になっているが花見も催物に括られるのだろう、ライトアップはされていなかった。
もちろん大きな公園なので至るところに電灯があり、そこで優しく光っている桜に駆け寄って写真を撮った。
恋人は全く写真を撮らない人だけれど、
わた
長い髪を思いきり切って露わになったわたしのうなじにキスをしてくれたこいびと
髪の毛を切った。
高校2年生だった4年前にボブにした以来の短い髪だ。
気分転換とかそういうのではない。
出来れば30前後くらいまではロングの女の子でいたかった。
去年の春から冬にかけ、ブリーチにブリーチを重ね、ずっとかなり明るい色だったわたしの髪の毛は、2月の試験に向け黒染めをした1月に寿命を迎えた。
と言えば大袈裟だがつまり傷みに傷んで使い古したほうきのような髪の毛になってしまった。
3月
きっと完璧な恋文も遺書も一生完成することはないけれど、渡す予定の無い手紙を綴り続ける気色の悪い趣味
3月、13日の金曜日、日付が変わったばかりだった
不吉であるはずのその日
恋人ができた。
もし付き合えたら、いやそんなはずないな、ないよね、でも、好きだな
ずっとそう思っていた人から、付き合いたいと言われた。
お互い小さな声でぽとぽとと言葉を交わしているとき、かなり悪いわたしの耳はより一層小さな音量で放たれたその言葉をしっかりと拾った。
うれしくて泣きそうだった
いや、泣いていたかもしれない