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港にて

土曜日の夜明け前 今年は花火大会に行けないので、二人で花火大会を開催した。 明日の朝わたしは行ってしまう。 上京前、恋人とはこれがきっと最後だ。 大体小袋には3本の手持ち花火が入っていて、1本しか入っていないものもあり、それはふたりで一緒に握った。「ケーキ入刀みたい」とわたしが笑えば「初めての共同作業だ」と返すこいびと。 ここ数年のわたしは勉強ばかりだった。花火大会に最後に行ったのは4年前、手持ち花火を最後にしたのもそのくらい。 誰かと今年は花火を観られたこと、その相

    • こいびとはひかりがきらい

      三月の終わり頃、恋人と四分咲きの夜桜を観に行った。 例年は人がいっぱいの大きな公園だが、このご時世と、時間帯が深夜というのもあって誰もいなかった。 巷では色んなイベントが中止になっているが花見も催物に括られるのだろう、ライトアップはされていなかった。 もちろん大きな公園なので至るところに電灯があり、そこで優しく光っている桜に駆け寄って写真を撮った。 恋人は全く写真を撮らない人だけれど、 わたしは恋人の、写真ではなくちゃんと肉眼で対象を記憶するところは割と好きだ。 なにか

      • 長い髪を思いきり切って露わになったわたしのうなじにキスをしてくれたこいびと

        髪の毛を切った。 高校2年生だった4年前にボブにした以来の短い髪だ。 気分転換とかそういうのではない。 出来れば30前後くらいまではロングの女の子でいたかった。 去年の春から冬にかけ、ブリーチにブリーチを重ね、ずっとかなり明るい色だったわたしの髪の毛は、2月の試験に向け黒染めをした1月に寿命を迎えた。 と言えば大袈裟だがつまり傷みに傷んで使い古したほうきのような髪の毛になってしまった。 3月 いつも通っている美容院に行った際、担当のお兄さんがホームケア用のトリートメント剤

        • きっと完璧な恋文も遺書も一生完成することはないけれど、渡す予定の無い手紙を綴り続ける気色の悪い趣味

          3月、13日の金曜日、日付が変わったばかりだった 不吉であるはずのその日 恋人ができた。 もし付き合えたら、いやそんなはずないな、ないよね、でも、好きだな ずっとそう思っていた人から、付き合いたいと言われた。 お互い小さな声でぽとぽとと言葉を交わしているとき、かなり悪いわたしの耳はより一層小さな音量で放たれたその言葉をしっかりと拾った。 うれしくて泣きそうだった いや、泣いていたかもしれない 周知のことだが、 4月からわたしは上京する予定だった 2月3日、彼に手紙を綴って

        港にて

        • こいびとはひかりがきらい

        • 長い髪を思いきり切って露わになったわたしのうなじにキスをしてくれたこいびと

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