高卒29歳が最初に受けた試験で1万人中9300人から弁護士になれた勉強法
高卒で海外サッカー留学、警察官、弁護士と異色の経歴を持っている青山 晃大。弁護士になるために最初に受けた予備試験の結果は1万人中で9300人と最底辺の中から、司法試験に合格して弁護士になる。そんな状態からどうやって合格ができたのか勉強法を伺いました。
弁護士になると決意して、すぐに全財産60万を引き出して支払う
ーー弁護士を目指すきっかけはなんだったんですか。
青山晃大(以下、青山):警察官をしていたときに、何かやりたいことを探すために早稲田大学の通信教育課程に通っていました。
憲法の授業で法律について面白いと思ったんです。YouTubeで憲法を調べてみたら、伊藤塾という弁護士になるための予備校の塾長である伊藤真さんの動画が出てきたんです。そこから興味をもって、たまたま近くに住んでいる伊藤塾名古屋校で伊藤真さんに会える入学説明ガイダンスに参加しました。そこで感化されたのがきっかけです。
ーーいつから弁護士の予備校へ通い始めたんですか。
青山:ガイダンスを聞いて、これが自分のやりたいことだと思ったんです。60単位を取得していた早稲田大学の通信を辞めて、その日に授業料120万円の半分の全財産60万円をATMで引き出して払ったんです。
もともと4月から始めるコースだったんですけど、8月に通い始めたので4か月分が溜まっていたので、とにかく追いつこうとしてひたすら録画された授業を聞いていました。
警察官の仕事をしながらだったので、とにかく録画されている授業を毎日、3時間分を聞いていました。
ーー仕事をしながら勉強を続けたんですか。
青山:仕事を辞めたのが2016年の6月だったんですけど、2016年の5月に予備試験を受けてみたんです。その結果が270点満点中87点だったんです。1万人が受験している中で9300人目くらいで超ドベの方でした。そんな点数だったんですけど、弁護士になると決心しました。
ーーその結果から仕事を辞める決心はできないと思うのですがどうですか?
青山:当時の自分は、相当クレイジーだったと思います。予備校のスタッフにこの状態で仕事を辞めようと思うと相談したら、危険すぎると言われます。だけど、教材も3割くらいしか聞いてなかったので、点数の結果はそこまで気にならなかったです。
自分の中で弁護士の勉強が本当に続けられるのか疑問だったんです。でも、半年は続けられたので仕事を辞める覚悟を決めました。
ーー試験の結果も良くないのに、なんで続けられたのですか。
青山:成績は右肩上がりだったので、どこまで伸び続けるのか興味があったんです。受かるまで伸び続けるのか、どっかで止まるのか分からないじゃないですか。小さな変化を楽しみながら続けました。
根拠ない自信から高卒から法科大学院を目指す
ーー仕事を辞めて変わったことはありますか。
青山:法科大学院に進む進路を考えてみました。弁護士になるには2つのルートがあって、予備試験合格ルートと法科大学院卒業ルートがあります。
予備試験に合格、もしくは法科大学院を卒業すれば、司法試験の受験資格を得られます。そこで司法試験に合格すれば弁護士になることができます。仕事を辞めて法科大学院に行く視野も入ってきました。高卒から大学院に入れるんじゃないかという自信があったんです。
ーー普通、そんなこと思えなくないですか?
青山:過去にブログで高卒から法科大学院に入った人がいたんです。そのブログにこの大学は、受験できなかったリストを載せてくれていたんです。そこで全国の法科大学院に問い合わせてみたんです。駒澤大学法科大学院は受け入れてくれるみたいだったんです。
アルゼンチンから帰国したときも、サッカー選手になるために全国の社会人チームをかたっぱしから調べて入団できないか聞いてみたんです。
自分がやりたいと思ったことは、可能性がないか全て調べてます。
ーー法科大学院を受けてみてどうだったんですか。
青山:法科大学院に入るために、適性試験という論理的思考や読解力を測る試験があるんです。この適性試験は年に2回あるんですが、2回とも基準点を下回ってしまったんです。
文科省の統計だと2回とも基準点を下回っている人はほぼ受からないんです。合格できても2〜3%という世界なんです。もう法律の前にそもそも能力がないから無理みたいな状況でした。
警察官の仕事を辞めて、東京へ引越す
ーーそこからどうされたんですか。
青山:法科大学院に行くより、予備試験ルートを目指そうと考えてました。
東京の授業に直接、行くために引っ越しました。今までは名古屋でインターネットで映像授業を聞いてたんです。そのために世田谷区の桜新町に住み込みで新聞配達をしました。
ーークレイジーと言われませんか。
青山:言われますね。今考えても過去の自分はクレイジーです。朝の早朝から新聞配達をして、夕方に集金をして、夜は疲れて帰っちゃうのであまり勉強をできなかったです。むしろ、警察官しているときの方が勉強してました。その新聞配達も激務すぎて、ストレスから”じんましん”を発症してしまったんです。
ーーそのまま新聞配達のアルバイトを続けられたんですか。
青山:いや、このままじゃマズイと思って、運がよく自分が通っていた予備校がアルバイトを募集していたんです。住むところも中学の頃の同級生が三軒茶屋に住んでいたので、家賃を半分、払って住まわせてもらったんです。
ーー勉強する時間は増えたんですか。
青山:増えましたね。伊藤塾の自習室で勉強していたんで、授業を受けてそのまま自習室で勉強してました。毎日、平均7時間くらい勉強してました。司法試験の内容も膨大で復習をするというより、とにかく授業を聞いていました。
ーーいつごろまで東京で勉強されていたんですか。
青山:予備校のコースは2年間なので、2017年2月に実家のある名古屋に戻りました。2017年の5月にもう一度、予備試験を受けてみたいんです。これが一番ショックで警察官を辞めて、かなり勉強してきたのに111点となかなか伸びなかったです。
ーー何点とらないと合格できないんですか。
青山:270点中160点を超えないと受からないんです。そのままだと受からないとなって、このタイミングで愛知県で法律事務所のアルバイトを始めたんです。そこで働いている弁護士の人は、ほとんど法科大学院の出身だったんです。
そこで予備試験は超超優秀層の一握りの人の試験なんだというのが分かったんです。
弁護士のほぼ8割が法科大学院の出身なんです。
今までの行動から幸運にも法科大学院の受験資格を得る
ーー法科大学院も難しくないんですか。
青山:法科大学院も留年率は高くて半分くらいは卒業できないです。でも、予備試験の方が受験者の中で3〜4%しか受からないので、法科大学院の方がまだマシなんです。
ーーどこの法科大学院を受験したんですか。
青山:駒澤大学の法科大学院ですね。高卒でも受験できたのは早稲田大学の通信制の単位を60単位を取っていたことも考慮されました。本当に奇跡なんです。
ーー受験の結果はどうだったんですか。
青山:無事に受かりました。法科大学院は、卒業するまで3年かかる未修者コースと2年かかる既修者コースがあるんです。じつは試験は年に4回、受験することができるのですが、僕は3回、受験しているんです。
ーーなんで3回も受験しているんですか。
青山:最初、受かったときは、予備試験をまだ諦められなかったです。いま考えるとめちゃくちゃリスクが高いことをやってたんです。だって駒澤しか受験できないのにですよ。
ーー予備試験コースに受かりたい気持ちがあったんですね。
青山:そうですね。最初に受かったときは悩んでいたんです。たまたま、2回目の試験会場が名古屋で実施してくれたんです。この時期、法科大学院の入学者が少なくなっていて全国、地方都市でも試験を実施していたんです。
ーー早稲田の60単位といい、運がいいですね。
青山:そうなんですよ。で、名古屋会場の受験者は僕だけだったんです。河合塾のすごい狭い部屋で試験官の教授2人と机を向かい合わせになって受けました。
ーー個別指導塾のマンツーマンみたいですね。
青山:そうそう。で、行政法の教授が僕のことを気に入ってくれたんです。入学後に、私が試験の最後までずっと書いている姿に感動したと言ってくれて、この子はきっと司法試験に受かると感じたと言ってくれました。2回目の試験も合格し授業料が半額免除になったんです。
ーーでも、2回目の受験でも申し込まなかったんですよね。
青山:2回目の受験で入学の手続きをしていたんです。3回目の受験結果がよかったら、全額免除にしてくれると言ってくれたんです。
ーー3回目の結果はどうだったんですか。
青山:2年間で卒業できる既修者コースで受かったんですけど、授業料免除ではなくて普通に受かっただけでした。
ーー3回とも受かるということはベースの力がついていたんですか。
青山:そうなんです。法科大学院の試験に受かったことが、ちょっと自信になったんです。あと、もう1つ自信になったことがあったんです。2017年の年末に伊藤塾の予備試験の選抜クラスに入るための試験に受かったんです。その選抜クラスの予備試験の合格率は50%なんです。
ーーめちゃくちゃ凄いですね。なぜそんな実力がついてきたんですか。
青山:とりあえず量をこなしました。それで理解できるところを増やしていった感じです。投下する時間を増やして成績がよくなってきました。
ーー法科大学院ではどのくらい勉強してたんですか。
青山:勉強をはじめるのが10時のときもあれば、昼ちょっと前ぐらいの11時半くらいですね。
ロースクールが閉まるのは、夜の11時なんですよ。大体11時までいるみたいな生活をしてました。
ーー毎日、12〜13時間ぐらい勉強してたんですね。なんでそんな執着をもてるんですか。
青山:退路を断っているんので、もうやるしかないんです。この2017年からブログをはじめているんです。外に発信することで、同じ境遇の人とか、社会人で資格勉強している人から反応をもらって、モチベーションが維持されました。
ーー退路を絶って宣言していたんですね。
他にモチベーションを維持するためにしてたことはありますか。
青山:ロースクールに入る前は、伊藤塾の自習室で友達ができたので、勉強仲間がいました。
その甲斐あって法科大学院はストレートで合格できました。
司法試験を受ける中で身についた勉強法
ーーそれから司法試験はどうだったんですか。
青山:最初の試験は3700人中の2024番でした。そのうち合格者は1500人くらいです。
ーー2回目の司法試験のために、勉強法を変えてみたりしましたか。
青山:いや、変わってないですね。論文式試験なのでとにかく書かないとダメなんですよ。実際に時間を計って勉強をしていました。
ーー2回目の司法試験の結果はどうだったんですか。
青山:2回目はすごく惜しかったんです。1503番で合格者は1400人だったんです。
ーー司法試験は年に何回、受けられるんですか。
青山:年に1回だけ受けられるんです。期限が決まっていて5年で5回しか受けられないんです。
ーー受験できる回数に制限があるんですね。3回目はどうだったんですか。
青山:この年に受かることができて、1310番で合格者は1400人でした。受験者数も過渡期でだんだんと減ってきて、3100人と運がいいフェーズでした。
ーータイミングもよかったんですね。2回目から3回目の勉強で何か変わりましたか。
青山:めちゃくちゃ変わりましたね。2回目と3回目であまり順位は変わってないんですけど、この時の努力の量が半端なかったです。
ーー具体的にどういう努力をしてるんですか。
青山:司法試験のために安田先生という専門のコーチをお願いしたんです。論文の添削とは別に2週間に1回モチベーション管理をしてもらっていたんです。そこで1次情報にあたった方がいいと、大学の教授が各ジャンルの法律に書いてある基本書を読むように勧められたんです。
ーー基本書を使ってどういう風に勉強されたんですか。
青山:過去問で解いた範囲の基本書を読んで、実践と基礎を繰り返しました。今までは予備校のテキストを使っていて、内容はうまくまとまっていたのですが、理解のための行間が空いている部分がありました。でも、基本書を読んでいくと、その行間がどんどん埋まってきて勉強が面白くなってきたんです。
ーー他に勉強法で変えたことはありますか。
青山:ちょうどこのタイミングで父親から手帳をもらったんです。試験範囲も膨大なので進捗管理をするようにしました。その日やった科目、分野、疑問点などを書き、勉強していない範囲や理解できていない箇所がないようにしました。そうすることで不合格要因をなくすようにしました。
ーーこのタイミングで勉強の仕方がかなり変わりましたね。
青山:そうですね。あと他にもあって、試験に合格していないのにジモティというアプリで、法律について教える仕事を募集してみたんです。そしたら意外な問い合わせがきて、大学生と千葉の社長さんに勉強を教えてたんです。ちょうどその教えていた範囲が司法試験に出題されたんです。
ーーこれから何かに挑戦する人にメッセージをお願いします。
青山:目指すべきものが見つかったら、ひたすらやり続けて日々積み重ねるしかなく、それができるための環境作りも重要だと思います。私もまだまだ挑戦中です。共に挑戦を楽しみましょう!