これまでの経歴に関連しない、新たな仕事を目指そうとした時
キャリアには美しいストーリーが必要なのだろうか。
これまでの経歴をガラッと変えて、新たな仕事を目指そうとした時、理想の未来と紐づかないこれまでの経歴に不安になる。
例えば料理人からコーチとか、製造業からカウンセラーというような。
「これからやりたいことと、関係ないことしかしてきてないんです……」と、不安そうな様子で話してくれるのだ。
わかる。わかりすぎる。
私も事務員からコーチングを始めるとき、同じ気持ちだった。
スクールの同期は、産業カウンセラーや管理職。すでに周囲とコーチング的な関わりをしている人達だった。私だけが場違いに思えて気後れした。
でも今は、"連鎖しないはずの点が繋がっている面白さ"みたいなものを感じていて、それも私の魅力のひとつだと思えている。
曲がりくねった道をゆく
私は貧乏だったくせに、裕福な家庭の多い玉川大学に進学した。芸術学部メディアアーツ学科というところで学んだ。
そして3年の夏、大学を中退した。ハローワーク経由で就職して事務員になった。
営業所にたった一人の女性社員。タオルの洗濯、備品管理、接客、経理に営業アシスタントと、なんでもやった。
忙しいけれど、飛ぶように過ぎる毎日はジェットコースターみたいで楽しかった。
18時過ぎに退勤処理をしたあと、ダラダラと雑談しながらサービス残業をして、金曜日は職場の仲間と飲みに行った。
朝までカラオケで歌って、カピカピのコンタクトで始発に乗って帰った。あれは間違いなく、私の青春だった。
その後、新入社員の教育に少し携わる機会があった。私がしてもらったように、仕事の楽しさややりがいを伝えようとした。腕をブンブン回して張り切っていた。
けれど、上手くいかなかった。一番なりたくなかった、冷たく嫌な先輩になっていた。
理想像とかけ離れた自分に焦り、ビジネス書を読み漁るなかで、コーチングを知った。学びたくてたまらなくなって、妊娠中期だったのもあり、焦ってスクールに申し込んだ。
なんとか産前に資格が取れた。育休復帰後は社内で活かす予定だったけれど、異動した先が酷い環境だった。パワハラに遭い、仕事を退職してフリーランスになった。
この流れを聞いて、「あみさんはなるべくしてコーチになったのですね!」と言われることがある。
最初はめちゃくちゃ驚いた。こんなにキャリアの線がいびつな人はいないと自分では思っていたから。
一直線のキャリア
なるべくしてなる、というのは、私にとって、もっと美しい一直線のことを表していると思い込んでいた。
紛うことなき一直線のキャリア。まるで、そのために生まれてきたかのように見える。
やってきたことすべてが自分の土壌になり、栄養満点の大きな花が咲いているみたい。
すごく綺麗だと思うんです。美しい。
まさに、なるべくしてなったのですね、と思ってきた。
花は花
一直線のキャリアは、たしかに美しい。
じゃあ、寄り道回り道をしてきた私たちは?これまでのキャリアを捨てる覚悟で新しい道を選ぶ人は?
今の私は、それもまた、とても美しいことではないかと心底思う。
美しいだけではなく面白いし、いつだってすこし切なくて、人間くさくて、共鳴して心が動く。
今現在を点とするならば、色んな点を打ってきた人達。結んで線にすると、くねくね、ぐるぐる、あっちゃこっちゃ。
私はその、人が悩んだり流されたりしながら挑戦して繋いできた、傷跡ともいえるような線を愛している。
それもまた、自分の土壌を豊かにする栄養なのだ。
花は咲けば花。花が咲くまでの紆余曲折がどうだったかなんて関係ない。咲けば、咲かせれば、いいのだと思う。
なるべくさせるしてならせる
なるべくしてなったのですね、という印象は、いつだって他人が持つもの。
全然関係ないところにばかり点を打ってきたつもりの私ですら、そう言われるのだ。
冷静に考えて欲しいのだけど、大学中退のイベント
が、コーチングを生業にする話のプロローグなわけがないのである。すべて偶然。
当時はただただ絶望だった。パワハラを受けた時も。
だから「あみさんはコーチになるべくしてなったのですね!」と最初に言われた時は、本気か?と思った。しかし、どうやら本気でそう思われることがあるらしい。
だから今、自分の"連鎖しない経歴"に悩んでいるとしたら、それはまだ、ただ線を結んでないだけなのだ。
どんな点でも結んでしまえば、誰かの目には「なるべくしてなった」ように映る。
私は過去の散らばった点を、今と繋がる線に結んで発信しただけ。
2年くらい前にもストーリーの作り方については書いていた。
関係ないように感じる経験も、紐づいた時、紐づけて語れた時、今日までの華麗な伏線になる。
なるべくしてなったのではなく、語り方で、自ら"なるべくしてならせる"ことができるんじゃないだろうか。
好きな人を思い出すメカニズム
好きな人がいる時や、ハマっているものがある時、すべての事柄がリンクしてしまう現象を経験したことはないだろうか。
「スタバの新作はメロンかぁ、あの人メロンはアレルギーだって言ってたな」
「今日は夕焼けがきれいだな、あの人と出かけた時の空もきれいだったんよな〜!」
「この陸上選手、桐生さんって言うのか…龍が如くの主人公と同じ名字やな…」
みたいな。
関係ないことを、夢中になっていることに結びつけてしまう。
これはビジネスでも同じだと思っている。
コーチングを本気で仕事にしようと覚悟を決めた時、これまでの多くの経験が全部コーチングに結びつけられると感じた。
音楽を聞いても、映画を見ても、道端でも、好きな人を思い出してしまうメカニズムと同じだ。
その連鎖を言語化して届けた時、私たちは志した仕事に、なるべくしてなったように見える。
この連鎖を見つけるのが私はものすごく好き。得意。もし紐づけに悩んだら、一緒に考えさせて欲しい。
散らばった点と点は、決してキャリアのマイナスポイントではない。それは、愛すべき私たちの武器である。
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