わたしの中の小さなヒト
わたしの中には、小さな子どもが住んでいる。
その子はいっつもいっつも四六時中「寂しい!寂しい‼︎寂しい‼︎‼︎」と叫んでいる。あまりの寂しさにところかまわず涙を流したり、じっとしていられなかったり、しょっちゅう何かを口に入れたりし続けている。
優しくしてくれそうな人にはずっと一緒にいて欲しくてしがみついたり、他の人と仲良くしてほしくなかったり、駄々をこねたりもする。
この子のせいで大人のわたしは数々の失敗と失態を繰り返して来たため、わたしはこの子を心の底から憎むようになり、見ない振りをし、居ないことにし、姿を現しそうなると即、罵詈雑言を浴びせ葬り去ろうとしていた。しかしそのような試みはなぜかうまくいかず、彼女はわたしにまるで亡霊のように付きまとい、わたしから離れてくれなかった。大人になったわたしにとっては、邪魔なだけの子なのに。
しかしある時から、その子を邪険にするのをやめて話してみることにした。一緒に遊んでみたり、何が欲しいのか聞いてみることにした。そうしたら、彼女はキリがないほどたくさんの話しをしてくれるようになり、想像できないほどためこんでいた涙も流すようになった。激しい怒りもぶつけてくるようになった。
そうしているうちにいつしかわたしは、泣きじゃくり地団駄を踏んで怒る彼女を愛おしく思うようになってきた。あれほど邪険にしていたのに。
そんなふうになってからは、彼女の寂しさに振り回されて困ったことになってしまうようなことは、減ってきたように思う。まだまだ彼女は言いたいことがたくさんあり、これからもながい付き合いになりそうだし、時々困ることもありそうだ。
でも、わたしはその子と一緒に生きていくことに決めた。今まで置き去りにしていた、わたし自身と。