過ぎゆくこと、カナシサについて
夏だ。
蝉の声が響いている。
大人になると
この蝉の声があっというまに
終わってしまうことを知るようになる。
春には桜が美しく咲き誇っても
あっというまに散ってしまう。
小野小町はそれを自らに例えて
はなのいのちはみじかくてと詠った。
みじかい命に悲しみを感じるからこそ
桜は惜しくてかけがえのない花となる。
若いということの儚さにあわれを感じる。
桜が一年中満開の花であったら
こんなに愛されていただろうか。
日本の古語では「かなし」は愛おしいということ。
すべてが過ぎゆくことを知り
初めて感じるこのカナシサよ。
過ぎゆくことは
美しく
悲しく
愛おしいのだ。