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【読書】 ジュンパ・ラヒリ 「わたしのいるところ」

スケッチのように記される、日記のようなとある女性の断片。

短いエピソードの積み重ねによって、ありありと一人の女性像 — イタリア(おそらくローマ)に住む大学で講師をしている40代独身で以前半同棲した彼がいたが別れて今はちゃんと別の恋人がいてでも友人の夫が気になるというおそらく地味ながらも美女・・・云々がありありと浮かび上がってくるところが見事。

読み始めは、孤独を楽しむかのように生活する彼女が自立した素敵な女性のように思われ、同性としてうんうんと頷きながら引き込まれていくわけだが・・・。

でもだんだんと、この人、身近にいたら結構ヤな女ではないか?と感じ始める。繊細ぶるかのようにちょっとしたことを色々と気にして、なんだかぐぢぐぢしてて、表向きはいい人そうで心の中では大体他人を相当に批判して、友人のダンナがちょっと自分のこと好きなのではないかと思っていたり自意識は過剰・・・。なんだか、めんどくさい女だ。

また、彼女はほどほど落ち込むような羽目に陥るのだけど、それって自分が呼び込んでる不幸じゃないの?と突っ込みたくなる。

それから自分に起因することなく、やっぱり何かと不快な事にも遭遇してしまうわけだけれど、同情できず意地悪くも、あなたみたいに運の悪い人っているんだね、と思ってしまう。

未来の変化を匂わせる結末だけど、この人は結局変わらないんではないか、と。

わわわ・・・読み進めると、なんだかどんどん自分の暗黒面が出てきてしまうではないか・・・。

書いているのが女性だけに、怖い。

と言う訳でジェンダーフリーの流行る昨今に言いにくいけれど、すごくオンナ的な小説。男性が読むとどう感じるのか感想を聞いてみたい。

あっ、でもとても素敵な文章で、最終的には好きな本でしたよ。


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