見出し画像

フリースクール妄想日記 2023/07/20-江ノ島

 さて、本日の行き先は江ノ島。片瀬江ノ島駅に10時45分集合、そこから江ノ島へ向かい、昼食を摂って海で遊ぶ。そう予定を立てマリンシューズなどを物置から発掘し、準備万端。翌日を楽しみに昨日はゆったりと過ごしていた。
 トコロガ。21:00頃。急に体調が悪化。トイレと部屋とを行きつ戻りつ。夏だというのに冬用の部屋着、布団、装備に身を固め、熱中症にならないようエアコンをつけ、水を枕元に置いて寝た。
 翌日。体調は悪化はしていないものの好転せず。しばらく悩んだ結果、休むことにした。随分昔の帯状疱疹の時以来、体調不良で欠席となった。
 が、そんなことだけで諦めてはいけない。暫く家で療養した結果、少しではあるが体調が回復しはじめた。が、もともとフリースクールの活動を行う予定だった以上、一気に空いた時間でなにをするかを考えていなかった。そのため日記を書く。これまでのように聞いた話をもとに書くのではない。一切情報を得ず、自分自身の妄想のみで書いてみるのだ。
 さて、そんな企画を打ち立ててみたが10時45分頃。吉祥寺・新宿の両部隊はほぼ相次いで片瀬江ノ島駅に到着。今回は学期最後と言うことで、龍角散達も遅れずに来ている。ところが、だ。一人だけ欠けているメンバーが居る。皆と比べてはるかに家が近いという理由で、集合せず家から直接向かっていたはずのΧαοσである。
 皆よりも到着までに要する時間がはるかに短いということに気をよくしていたのか、出発時間の大規模な遅延によって、現在必死に移動中だという。仕方がない。置いていこう。
 彼の慟哭を耳にしたような気もしたが、今日は学期最終日。そんなことにかまっている暇はない。幸い、彼は数週間前にカッパくん、龍角散と共に江ノ島へとやって来て終電を逃しかけたという前歴を持っている。一度来たことがあるのだから、きっと大丈夫だろう。
 そう信じ、彼は放置してそのまま江ノ島へと歩いて行く。今日は風が強い。今学期になって初めて行った横浜でのことを思い出す。あのときはたしか、調子に乗った龍角散がイマンモの帽子を跳ね上げてしまい、突風で危うく海へと転落させてしまうところだった。たしか、僕が飛びついて危うく難を逃れたような……
 けれども、さすがに今回は龍角散も学習している。決してそのようなことはしない。それに、これまでと違って気温は30度前後。決して暑さで耄碌したりするような気温ではない。
 1㎞ほど歩いたであろうか。江ノ島へと到着した。僕の目的は江の島シーキャンドル。父に聞かされた、幼い頃の思ひ出の場所である。父がまだ幼かった頃、この塔はここまで安全ではなかった。柵もなにもないところを高所恐怖症の父は、這って一歩また一歩と着実に進んでいったという。だが、もうそんな建物はない。10年以上前に既に作り替えられている。
 そんな父のゆかりの地を巡った後、ようやく追いついてきたΧαοσに休息すらさせずに次の目的地へと向かう。なにしろ、今日一番の皆の目標と言えば、それは海。せっかく今日、気温は低い。海辺で昼食を摂っても、倒れるような軟弱な輩はここには居ないはずだ。
 海へ着いて昼食後、ライフジャケットを着けた面々が少しずつ海へと踏み込んでいく。今度の海は前回のよりかははるかに綺麗だ。けれどもやはり前回の件で海に対する負のイメージを棄てきれないのか、泳ごうとするメンバーは誰もいない。こんなことなら海など来なければ良かったと思う。
 だが、このフリースクールには、誰彼かまわず水へ引きずり込み、イマンモ達スタッフやメンバーから「まるでカッパだ」と怖れられた奴が居る。彼は一切躊躇しなかった。歩き詰めで疲れ切っているΧαοσを抱きかかえ、寸分の躊躇いもなく海へ飛び込んだ。
 彼、龍角散はそのままΧαοσをそこに置いて戻ってこようとした。幸いΧαοσの近くにはライフジャケットを着けたカッパくんがおり、この近辺はほとんど波が立たない。水深も浅い。だが、Χαοσはライフジャケットを着けていないし、しかも弁当を食べ終わったばかりで泳ぐ準備は何一つ出来ていない。
 そんな彼を助けようと、思わず海へと踏み込んでしまう皆。だが、忘れるな。彼の側にはカッパくんが居る。彼がΧαοσを助けた頃には、既に海へと入ることを拒否していたメンバーも皆、海中を歩いている。
 こうしてまんまと龍角散の罠に引っかかってしまった皆は、開き直って遊んでいる。海に入っていない面子も、皆に諭されて入ってみたり、龍角散によって水中に引きずり込まれたり。なんだかんだで解散時刻には、スタッフ・メンバー全員が衣類全損して立っていた。
 もちろん、僕はそんなのには巻き込まれないようイマンモの後ろで彼らを眺めていた。だが、そこまでしてもイマンモごと龍角散に海に引きずり込まれてしまったのだが。
 さて、何度も書いているがこれは妄想、フィクションである。学期最後の活動に参加できなかった僕が、腹いせに書いた文章である。学期は既に終わっているが、もしイマンモや龍角散など今回の活動に参加したメンバーに出会えたならば、彼らに聞き取りをして、本当のことを書いた「フリースクール活動日記 江ノ島(不参加)」を載せるので、よければ見て欲しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?