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恋に落ちた。

恋に落ちるとは本当に”落ちる”ということなんだと思う。”恋に落ちる”のと”恋する”のは違うんじゃないかって

中学の頃。
あれは”落ちた”恋だったのかもしれないと思う。

2年、春。
同じポジションの先輩に「〇〇くんって知ってる?」と聞かれた。
かっこいいよね、とも。
知らない男の子の名前。かっこいいらしい。
これが私が彼を知った最初。

それから、彼を呼ぶ声が耳に入るようになり、なんとなくどんな子が呼ばれたのだろうと顔を上げたり。
けれども顔も知らない男の子。当然のことながら誰がどの子を呼んだのかは分かりませんでした。

ささやかな変化は、
6月だったか、7月だったか、塾の体験会に行った時。
壁に貼られた定期テストの成果表の中に彼の名前を見ました。

見つけた。

どうやらかっこいいだけでなく、頭もいいらしい。

それから程なくして入塾し、名前しか知らなかった男の子は顔と名前が一致する塾のクラスメイトになりました。
教室の対角で友人と話す彼は背が高くて整った顔立ちをしていました。


夏休み最初の週末だったと思います。
その日は部活の公式戦があり、みんなが忙しく動き回っていました。

私が土で汚れた手を洗おうと、水場に近づいた時、校庭の外から自分の名前を呼ぶ声が聞こえました。
彼が、トーナメント表が剥がれていたことを伝えに来てくれたんですね。

名前、覚えてくれてたんだ。私のこと知ってくれてたんだ。嬉しい。
私が一方的に知ってるだけだと思ってた人に覚えてもらってたことが、あまりにも嬉しくて。
また、他にもいるはずの部員の中から私を呼んでくれたことが嬉しくて。

いやいや、名前呼ばれただけで好きになるとか
いくらなんでもそんな。

中学の頃の私はそういって認めようとしなかったけど今思うと、
あれが恋に”落ちた”瞬間だったんだろうなーって。

それからも別にこれといった展開はなく、塾のクラスメイトのまま別の高校に進学して、連絡先も知りません。
あれからそれなりに時間が経って、高校では別の人を好きになったけど、
あの時の胸の高鳴りは覚えています。

これは余談ですが、人を好きになる時って必然的にそうなっている気がします。
噛み砕いて言うならば、好きになる前に心のどこかで予感する。
誰を好きになった時もそうでした。

明確に花開いた瞬間は名前を呼ばれた時だけど、
種は先輩の噂話の時に芽生えて、根を張っていたような気もします。
声も顔も何も知らないのに。

恋に”落ちた”話。

今日も読んでくださりありがとうございます。
それではみなさんも、良い夜を。

2023.10.03

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