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掌編小説

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2021年5月の記事一覧

【掌編】非常階段

【掌編】非常階段

 非常階段を見上げるのが好きだ。
 ここのビルの非常階段は、鉄格子のような手すりの隙間から人の姿が丸見え。だから失格。ここのビルの非常階段はコンクリート製の手すりなので、しゃがみ込めば人の姿が見えない。合格。
 普段は使われることのない、非常事態に使われる階段。その階段を使う自分をいつも想像する。
 非常事態。火事や地震など災害が起こった場合だけではない。自身が傷つき、耐えがたい苦しみを得た時もそ

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