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【架空文通】外山さんのお手紙に対する返事(テレビ無い、結婚相談所、デート、気になる点が無い、アルケミスト)

外山さんへ

 お元気ですか。私の方は、どこへも行けず、つまらなく過ごしています。しかし、渋谷とか繁華街は、みんなこの疫病騒ぎに慣れてしまったようで普通に人出があるようです。
 最近、私は大地震が来ると予想していまして、せっせと缶詰などの非常食を買い込んでいます。

【テレビ見ないんです】
 ごめんなさい、『サイレントヴォイス』は知りませんでした。というか、テレビを持っていないので、今どんな番組があるのか知らないのです。アマゾンプライムでドラマか映画を観ているぐらいです。一旦見ると、見続けることが多いのですが、周囲にもテレビを熱心に見ている人がいなく、ただつけているだけという人が数人いるだけなので、これが面白いよ、と言われるきっかけもない状態です。でも、これをきっかけにいつか見るべきものリストにいれておきますね。

【結婚相談所】
 お相手とは結婚相談所で知り合ったそうで。私の周囲ではマッチングアプリ、婚活サイトを使う人が沢山います。私は二十年以上、ウェブ系の仕事をしてきたと言うのに、なぜかひょんな出会いを求めてリアルにさまよい歩くスタイルをとっています。

 貴殿が描いてくれた、貴殿と旦那様を中心とする人物相関図を見て、関西の狭さを理解できました。先輩後輩、友人知人、兄弟姉妹という状態で、悪いことできない状態ですね。

 貴殿が、最初の候補者の居住地設定で、関西の広範囲にわたり「おりゃあ」と投網したのに対して、旦那様は奈良県一点に絞って「来いっ」と銛で射止めようとした、とのこと。性格の違いが如実に出ていますね。

【デート】
 初回デートで、貴殿は眉間にしわを寄せ、腕組みをしながら「うん、これはいいかも」と沈思黙考し、それを見た旦那様が「楽しそうじゃないな、だめか」と思っていたとは、男女の意思疎通の難しさを実感しました。
 二回目のデートでは、貴殿が、カツオの一本釣りのごとく、「よし、針に食いついた」と腕に力を入れ、獲物と格闘した、とのこと。貴殿の戦いぶりがホログラフとして便箋上に立ちあがりました。

【気になる点が無かった】
 この人にしようと決めた理由が、会話をしていて、ん、とひっかかるところが無かったから、とのこと。マイナスポイントが無かったという事ですね。
 一方、貴殿は、旦那様が貴殿のどこを気に入ってくれたのか、皆目分からない、とのこと。それは貴殿と同じ理由だったのでは、と推察します。

 私は同棲を二回したことがありますが、気になる点が無い相手というのは稀有な存在で、見逃してはならない、と結論付けています。時空を共有することになると嫌な点が見つかってきますが、スタートでゼロだという事は愛を長続きさせるためのアドバンテージになると思います。

 今後は京都好きな旦那様を奈良好きに改造する長期計画を抱いている、とのこと。なんであれ、陰謀を抱く妻というのは考えるだけで怖いものですね。

【アルケミスト】
 ところで、今回の貴殿の婚活劇を読んで、小説『アルケミスト』を思い出しました。宝探しの話ですが、結局、宝がどこにあったかというと、あ、ネタバレになるので、言わないでおきましょう。ぜひ、読んでみてください。
またね