猿橋【怪奇なミステリーゾーン】


 日本には三大奇矯と呼ばれる一風変わった橋があります。日光の神橋、岩国の錦帯橋、山梨県大月市の猿橋、この3つの橋がそれです。今回紹介するのは猿橋です。
 この橋は、幅3.3m、長さ31mの割と小さな橋なんですが、その構造は大変珍しく 橋脚を用いず、両岸から何枚もの桁を重ねて突き出すことで橋を支えるという独特の工法が使われております。そして桂川の谷に彩りをそえるその美しい眺めは、大月の一大名所となっています。
 ところが猿橋はその美しさの陰に、一つの恐ろしい曰くがつきまとうようになりました。それはこの橋の上で、甲府の国王町の濁川にかかる大橋のことを口に出してはいけない、というもので、もし口にすれば必ず恐ろしいことが起こったと言います。 その一例として、こんな話が伝えられております。
 昔ある男の旅人が、猿橋の上で大橋のことを口にしたところ、不意に一人の女が現れ、一通の手紙を大橋まで届けてくれるよう頼みました。旅人は承知して、その手紙を受け取り早速大橋に向かいましたが、 途中不審に思い手紙を開いてみますと、
「この男殺すべし」
としたためられている。
男はびっくりして、
「殺すべかざる」
と書き直して大急ぎで大橋に行きますと、そこには恐ろしい目つきをした女が待っておりました。しかし手紙を読むと女は急ににこやかになり何もせずに去っていきました。
 これが猿橋にまつわる恐ろしい話です。 しかも、現在もこの曰くは健在なのです。


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