見出し画像

赤い線

国語の授業中。
授業の内容はおぼつかない。
ただ、私は「健康に生きるということはどういうことか」について3つの答えを持ち、先生に当てられるのを待っている。
ふと、板書を写したノートに一編の詩を書いた私は、先生に見つからないように前を向いたまま、後ろの男の子に渡す。
授業を聞きながらしばらく待つと、後ろから合図がくる。
私が後ろに手を伸ばすと、合図をしていた手にあたり、ふと彼の手に私の手が包まれる。ほんの長い一瞬、互いの気持ちが溶け合う。
そして本を渡される。
渡したはずのノートは、文庫サイズになり、私のノートでもあり教科書でもある本になって帰ってきた。
そこには赤いボールペンでたくさんの線が文字に沿って引かれていた。書かれた言葉を消して新しい文字が書き込まれたりもしていた。
私はその赤い線を眺め、得も言われぬ幸福に包まれる。
彼の考えや心の中に触れる感覚と、彼の語る文章の好みを聞いている心地、彼が私の書いた文章を読んで文字の横に線を引いてくれた喜びに、赤いインクが滲んで私は桃色に染まった。

そこで目が覚めました。
これはこの間の夢のお話。
目が覚めぼんやりした意識の中で、「私は後ろの彼が好きだったなぁ」と、恋の残り香に包まれたのでした。