見出し画像

カーキ色の僕は狂気【THE2】


『恋のジャーナル』/THE2

2022年2月2日、ドラムに歌川菜穂、ベースに森夏彦が加わり、バンド名を【2】から改名し、再始動が発表された【THE2】
再始動後初となる楽曲『恋のジャーナル』が4月13日に配信リリースとなった。
またこの楽曲は、サカナクションのボーカル山口一郎がプロデューサーとなっており、サカナクションファンにとっても注目の作品となっていた。

【THE2】について見ていく上で、【2】とボーカル古舘佑太郎の前身バンド【The SALOVERS】は欠かせない存在だろう。

私は【The SALOVERS】のことを解散(正確には無期限活動休止)後に知った。
詳細なきっかけは覚えていないが、『文学のススメ』という曲にとにかくハマっていたことだけは覚えている。
古舘佑太郎の力強い歌声が引き金となり、爆発的な衝動、全力疾走のような開放感・爽快感を感じた。前しか見ていない、とにかくまっすぐ突っ走っている感じ。
私の大好きな、そんな”青臭さ"を感じるバンドだった。
そしてその後の【2】も、衝動と青さを纏った楽曲が魅力的だった。
(ちなみに2月のプレイリストでも【2】のことを紹介しています!)


そんなどこまでもまっすぐな楽曲を多数発表してきた古舘佑太郎の新しいバンド。【THE2】(【2】からの改名・メンバー追加なので、新しいバンドと称するのは語弊があるかもしれない。)
【THE2】となってからの初めての楽曲になるわけで、つまりは、この曲が【THE 2】を表す、導いていく楽曲になるというわけだ。


楽曲リリースとなるまでの間、冒頭とMVの一部がTwitterでアップされ、フルverはまだかまだか、、と焦らされたのも今となっては懐かしい記憶。
そしてミュージックビデオの予告編として公開された数秒間のティザー映像に映っていたのは、顔に手足が生えた、なんとも奇妙なマスコットだった……。


「かわい、、くはないぞ、、、これ……」
というなんとも言えない気持ちが沸き立っていた人も多くいたのではないだろうか……
【THE2】として門出の曲。
心機一転、新しい層にもアピールできるチャンスでもある楽曲。
そのプロモーションとして使えるMVにメンバーは疎か、謎の奇妙なマスコットを全面的に出してくるなんて、一体誰が予想しただろうか……。


そして、少しだけ聴ける楽曲のイントロ部分からは、プロデューサー山口一郎ならではのサカナクション要素を感じる部分があった。
テクノロックのサカナクションではなく、戦略的なサカナクションらしさ。
大衆音楽且つ昔のお茶の間に響いていたようなキャッチーな要素を感じた。

これはなかなかにサカナクションを感じる楽曲になるのでは…?という期待なのか不安なのかよくわからない感情を抱いていたが、楽曲がリリースされフルで聴いた時には、そのよくわからない感情は完全に吹っ飛んでいった。


それほどまでに、「恋のジャーナル」は【THE 2】の楽曲だった

中華テイストを感じる旋律からはキャッチーさを感じて、
一度聴くと耳にこびりついて離れない。
そしてキメ部分がわかりやすい親しみやすいメロディ構成。
ギターの特徴的なフレーズはスパイス程度の主張で、Aメロでずっと細かく刻んでいるベースとドラムのメロディでこの楽曲の核部分が出来上がっているんだな、と感じる。(これは完全に私の好みの問題だが、ベースとドラムのリズム隊が主張しすぎず楽曲の土台を担っている楽曲にはハズレがない。)
そしてこの楽曲にも感じる青臭さと全力の衝動がたまらない。
まさに待っていました!と言いたくなるほどの爽快感。

君が寝転ぶ 白のワンピも気にせず
溢れ出す缶の発泡酒

風に混ざってる
フレグランス 海外のシャンプー

古舘佑太郎節が炸裂している鮮明な情景描写・表現の歌詞は、流石としか言いようがない。

テラス胸の隆起 早くなる胸の動悸
勇気 正気 空気
カーキ色の僕は狂気

個人的にはこの韻を踏んでいる歌詞が、耳あたりがよくて好きだ。
恋心にまつわる、刹那の間に生まれる緊張と期待に溢れる言葉の数々に続く最後の言葉が
「カーキ色の僕は狂気」
だなんて、どんな生活をしていれば思いつくのだろうか。
誰かに恋をする気持ちにおいて、「狂気」という言葉は正直的を得ている表現であると思うのだが、悍ましいとも捉えられるような危険な言葉を選ぶセンスに惹かれてしまう。


「約1年半の時を経て再始動した!」
なんて陳腐な言葉では全然足りない。
メンバー各々の前身バンドの歴史が楽曲に詰め込まれ、
それらが合わさって化学反応が起きている。

飛躍的に進化して現れた【THE 2】という新しいバンド。
これからの曲たちが楽しみで仕方ない。




きいろ。


この記事が参加している募集

私のイチオシ

最後まで読んでいただきありがとうございます!スキをぽちっとして押していただけるとより励みになります!(アカウントがなくても押せちゃいます◎) いただいたサポートは音楽・表現物に還元させていただきます。