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屋根裏の本棚

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書き散らした小説や詩を置いておく、屋根裏部屋のような。
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#写真とコトバ

『それぞれの物語』

『それぞれの物語』

人生とはそれぞれの物語だ
 
他人の人生には登場できても
他人の人生を変えることはできない
その人の見る目で物語が作られているのだから
 
世界は人の数だけあるのだろう
 
 
だから
私たちの物語はけっして交わることがない
混じわることはない
 
できるのはただ
それぞれの物語をスプーンひと匙
分け合うことだけ
 
 

『さいごの季節に』

『さいごの季節に』

  
陽炎(かぎろひ)を
 
追いつつ見遣る かの想い
 
過ぎゆく夏に
 
応えなどなし
 
 

 
 
 

『 everyday 』

『 everyday 』

碧い粒子がふりそそぐ
夏の終わりの夕暮れ

窓をあけて 空へ身体を差し出せば いつも
何かに置き去りにされてる気がした

願いや望みのできるだけ近くへと
この両の腕を伸ばしてはみるけれど
心のどこかで だまされまいとする僕がいる

風はこんなに胸を打つのに
雲は優しく胸を突くのに

  
「わたしたち、遠くまで来たよね」
いつか君は言ったけど

まだ 泣けないんだ
いまだに 泣けないんだ

  

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『川のほとり』

『川のほとり』

心の中の
ずっと深い深いところへ落ちていく
その奥にある川面めがけて 落ちていく
 
 
明日のことがわからない
明日がくるのか わからない
 
必要とされなかった私に
それでも時は流れているのか
 
つなぎとめておきたかった私に
それでもまとわりつく解放感
 
かき集めた言葉で
あなたを意地悪だと言ったこと
どうか 静かに見逃して
 
空回りする思い出を胸に刻んで
いっそ 清らかに 落ちていく

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