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はじめてのWWOOF!体験記〜そこで学んだのは、農業じゃなくて人生の歩き方でした〜


私は大学を卒業したのちの1年間、アルバイトや派遣の合間をぬって、日本各地でWWOOF(ウーフ)をやってきました。


WWOOFについてや、私がWWOOFを始めた理由はこちらの記事をどうぞ。



この記事では、私にとって初めてのWWOOF体験となった、ある田舎町の山岳グッズショップでのお手伝いの日々についてお話しします。

※なお、お世話になったホストさま方の個人情報守秘のため、当ブログでは以後、ステイ先の詳細の記述は避け、ホスト様のお名前は仮名とさせていただきます。


WWOOF1軒目:とある田舎町の、山岳グッズショップにて



2018年3月末。ウーファーとしての登録手続きを終えた私は、まず受け入れ先のホストを見つけようと「WWOOFジャパン」のホームページからホスト一覧を探っていました。


まず驚いたのが、ホストの数の多さ!
私の住む県内だけでも数十カ所はありました。

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初めての私はどこから手をつけて良いかも分からなかったので、とりあえず「ウーファー急募」のページから入りました。

「あっ、なんか可愛い写真!」


ふと目にとまったのは、森の中のかわいい一軒のコテージの写真。プロフィールを開くと、ホストは、山岳グッズショップと観光客向けのコテージを営んでいる女性とのことです。がっつり農業ではなさそうだけど、なんだか雰囲気いいし、県内で近いし…最初はここに行きたい!


ということで初めてのWWOOF生活、早速スタートです!
\(^o^)/


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メッセージのやりとりから数日後、宿泊道具をリュックに詰め、待ち合わせの駅へと向かいました。お互い初対面だから、無事合流できるかなあ、と心配でした。
WWOOFでは通常、ご自宅の様子やホストのお顔など、あまりに個人情報が明らかになりような写真はプロフィールに載っていないことが多いので、お会いした時に初めてお顔や人柄を知ることになります。



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ご自宅までの移動中の車の中で、簡単な自己紹介をしました。
ホストの女性は、田舎町で小さなグッズショップを営むあかねさん。 今回はあかねさんにとってもウーファーを受け入れるのは初めてだということで、まさかのお互いWWOOF初心者!


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お店に着くと、まずはかんたんなオリエンテーションをしました。今回のWWOOFで私が手伝うのは、このショップでのペンキ塗りとのことでした。
(あかねさん宅では果樹を中心に畑の世話もしていましたが、私が訪ねた時期には農作業はお休み中)


あかねさんの山岳グッズショップは、古民家を改造したもので、手作り感のある愛らしいお店でした。とっても可愛い!

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部屋全体が、オレンジ色の裸電球ひとつの落ち着いた灯りで照らされているのが印象的でした。そしてなんと言っても目立つのが、壁いっぱいに飾られた、一枚の大きい絵画。熊や猫や犬が二本足で立って、服を着て、音楽を鳴らして微笑んでいる、世界観バツグンのファンタジックな絵でした。


絵の作者は、あかねさんのお父様。学校の美術の先生であったお父様は、在職中から個人的に絵を書き溜めていたそうです。離職した今、このような画風に辿り着いて、新作を出し続けながら年に数回個展を開いているとのこと。
へえぇ、リアルアーティスト!!


・・・


そんなこんなで、お茶をゆっくり飲みながらのオリエンテーションが済むと、早速作業開始です!グッズショップを取り囲む塀や玄関入り口の床を、黙々とペンキで塗っていきます。古民家だけあって、和風の雰囲気がまだ若干残っていましたお店も、鮮やかなペンキを塗るだけで印象はガラッと変わりました!


「助っ人がいると仕事が断然はかどる!一人だと、どうしても先延ばしにしちゃって進まないんだよね〜。今回ウーファーに来てもらってよかった!」とあかねさんは大満足の様子でした。


2人で黙々と・・・ペンキをペタペタ・・・


「大学を卒業して一番最初にペンキ塗りをすることになるとは・・・」


塀を塗りながらそう思ったことを覚えています。



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作業の合間にはちょくちょく休憩時間を挟んでくれて、私はあかねさんと色々なお話をしました。お互いの生い立ち、好きなことや夢、未来について。


ある内陸県に生まれたあかねさん。自然や山岳好きが高じて、20代の頃はリゾートバイトで日本各地の山岳観光地を周り、最終的に今の場所が気に入って移住したのだとか。旦那様とはこっちに来てから知り合い、結婚したそうです。


あかねさんがこのショップを開いたのは約4年前。今ではグッズを売るだけでなく「金継ぎ」の受注作業も行なっています。


「金継ぎ」というのは、「漆うるし」という木の樹液を使って壊れた器を修理する日本古来からの伝統技法です(縄文時代の器の中にも漆で直されているものがあります)。漆はそのままで塗れば「塗料」になります。漆に小麦粉、木の粉などを混ぜれば「接着剤」「パテ」などを作ることができます。
金継ぎはこれらの素材を使いながら、割れた破片をくっつけたり、欠けた箇所を埋めたりします。そして最後に修理した箇所の表面に漆を塗り、それが乾かないうちに金粉を蒔いて定着させ、完成となるわけです。

引用:http://hatoya-f.com/real-kintsugi/for-kintsugi-beginner/より


あかねさんは自分でお店を経営して、金継ぎという、希少な技術を身につけて、好きな山に囲まれて。人生の設計というか、生活のデザインの仕方がすごいなあ…と思いました。好きなものややりたいことが明確で、それをちゃんと実現させて。

そう思っていると、あかねさんがふと、つぶやきました。


「今の自分がこんな風になっているなんて、想像もしていなかった。」


…あれ⁉︎そうなんだ。
あかねさんも想像もしてなかったんだ、この今の状況を。


あかねさんの人生の歩き方って、何か目指すものがあって、そこから逆算して道を見出して、一歩一歩歩いてきたものだと思っていました。だけどあかねさんの話を聞いていくと、それだけじゃないのかもしれないと思い始めました。

あかねさんは、山が好きで、若い頃から自然と山の近くで働いていて、あちこち行くうちに好きな土地を見つけて移住して、そこで山関連のお店を開くことになった。付随して、金継ぎもやり始めて。そして今、彼女はこう言う。こんなこと想像もしていなかった、と。


そんなふうに、ゴールは設定しなくても、自分に好きなものがあって、それを見据えて前に歩いて行くのもありかもしれない。


それは時に、予想もしなかった平野に導いてくれるのかもしれない。


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私にしても、農業に憧れて、農業を体験したくてWWOOFを始めましたが、ここに来てやっているのはなぜかペンキ塗りでした。

しかし、このとき私は、初めてで分からないことだらけながら、こんなふうに素晴らしいホストに巡り会えたこと、そして一人のリアルな女性の生き方に触れることができただけで、今回ここに来てよかったと感じていました。


「就農!」「農業で生きていく!」と意気込んで、少し焦ってもいた私に、


「ああ、なんだ、生き方って結構、まっすぐじゃないものなのかもな。」


そういうちょっとした、心の隙間をくれたようでした。


道はまっすぐ定規で引かなくてもいい。
いま何者かになろうとしなくていい。
ただ、「自分は何を見ているか」「なにが好きなのか」これこそがきっと道しるべになるんだ。
そうであってほしい。(^^;



お店の大きな絵を描いたあかねさんのお父さんも、今では画家と呼ばれる存在だけれど、お若い時の職業の肩書きはずっと「学校の先生」だったのでしょう。
でも彼は絵が好きで、描いていて、必然的に美術の先生の道が開けて、でもずっと絵は描いて来て、退職後もやっぱり絵が好きだから描いていて、今こうして形になって。


名前や業績ではない。
大事なのは、その人が「何者であるか」じゃなくて、「何をして来たか」であって、


なによりその人を形作るのは、その人が「何が好きか」であるんだ。



もう一度見つめたその絵から、そんなことがひしひしと伝わって来ました。
長年の情熱の具現化した、すごいエネルギーのある絵でした。

・・・


WWOOF中の私の宿泊場所は、あかねさんの経営するコテージでした。
グッズショップから車でほんの5分の場所。私の滞在中は他の利用客もいないということで、一軒家を独り占め!コタツやキッチンもお風呂ある、快適生活を送ることができました。


田舎町の森の中とだけあって、夜の暗さとその静けさは本物でした。あの中で、3泊。怖いとか、不安とか、とりとめもない考え事とか、そういうものは不思議とありませんでした。


日中に得た程よい疲れがよかったのでしょうか。ただただ、

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そう思って、一人眠る夜でした。


・・・


作業の合間のお茶の時間、美味しい3度のお食事。私はあかねさん宅で、ゆったりした、そしていろんな話もできて、充実した時間を過ごしました。

あかねさんも私も、自分の生き方を思考錯誤しながら歩んで来て、今こうして同じ場所で一緒にご飯を食べているんだなあ。


私もこの先、どう歩んでいくか分からないけれど、今こうしてあなたと同じ空間にいることが不思議です。私は何度もそう思いました。


WWOOFって不思議だな。全然知らなかった人とこうして一緒に生活するんだもの。


すごいおみくじだ。すごい出会いだ。


学べることは、農業だけじゃないのかも。



愛らしい小さなショップに、情熱の溢れる大きな絵。今回のWWOOFで触れたのは、「好き」の原動力が形となった、暖かい空間でした。

「道の先は見えなくても、きっと道しるべさえあれば大丈夫。」


そう確信したWWOOF生活でした。


このnoteでは今後も、私の体験したWWOOF生活について記事にしていきます。
WWOOF生活では、毎度毎度、刺激的な人たちとの出会いがありました。
みなさんぜひチェックしてください\(^o^)/


最後に、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』より、私の好きな言葉。


*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*

さあ、切符をしっかり持っておいで。お前はもう夢の鉄道の中でなしに本当の世界の火やはげしい波の中を大股にまっすぐ歩いていかなければいけない。
天の川のなかでたった一つのほんとうのその切符を決してお前はなくしてはいけない。

*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*


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わたし作『銀河鉄道の夜』

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