『Egg〈神経症一族の物語〉』第十二章
「カッちゃん、様子はどうだったい?」
7人も入ればいっぱいになってしまう小さな飲み屋のカウンターで熱燗をちびりちびりとやりながら、『激動』編集長の五十嵐重雄は、大阪から東京に戻ったばかりの部下である加藤実に、大阪で取材をしている同じく部下の高藤隆治について質問した。
「なんかねえ……。ちょっと前から、妹が大阪に来てるらしいんすよ」
と、加藤は口にくわえた煙草に火をつけながら答えた。
「たしか妹さんって……」
と、副編集長の矢田健が焼き鳥をかじりながら呟く。
「そう。捨て子な