あまやどり出版 (自分出版社協同組合)

やっとのことであまやどりしても、雨や濁流に力及ばず流されることも。 必死にあっぷあっぷ…

あまやどり出版 (自分出版社協同組合)

やっとのことであまやどりしても、雨や濁流に力及ばず流されることも。 必死にあっぷあっぷしたあとに、ふと顔を上げた先に新たなあまやどりできる場所がある。 この出版社がそんな存在になればいいな。 自分出版社協同組合https://note.com/jibunsyuppan

マガジン

  • 水・土曜更新『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 1992

    1992年、バブル崩壊直後の日本で26歳になった高藤由美は、4浪後に入った私立大学で就職活動に悪戦苦戦していた。そんな最中、行方不明になっていた兄の哲治の消息を耳にして…。 「神経症は世代を超えて引き継がれる」というテーマで書き始めたこの小説もついに最終部となりました。親に満たしてもらえなかった苦しみを我が子で晴らそうとする両親。そんな彼らに苦しめられた二人の子供たちは最後にどんな決断をするのか。 下書き時点で「このnoterがすごい」にノミネートされた第3部をどうぞお楽しみください! ※毎週水・土曜日更新予定です。時々やむを得ない理由で更新がずれてしまうかもですが、精一杯書き続けます!

  • 毎週水曜更新『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 1978

    1978年、中学2年生になった高藤哲治は勉強が大の苦手。受験戦争についていけない哲治は新しくオープンしたゲームセンターでインベーダーゲームと出会う…。 神経症の両親が作る「心をがんじがらめに縛り付ける家庭」で、条件付きの愛情しか与えられずに育った哲治が、外の世界で友情を培う中でどう変わっていくのかを、家族の視点を交えながら丁寧に描いていきます。 3部構成の第2部がついにスタート。毎週水曜日に更新する予定です。気に入った方はフォローお願いします!

  • 「自分出版社協同組合」新刊のご紹介

    • 23本

    「自分出版社協同組合」から発行された新しい本の紹介をしています。

  • あまやどり出版 新刊のご案内

    • 15本

    あまやどり出版から出版されている本をまとめて見られるマガジンです。 最新刊が気になる方はこちらをフォローよろしくお願いします。

  • 編集者のありったけ!

    編集者として活動してきた筆者が、培った経験やスキルについてありったけ語るマガジンです。不定期更新ですが、役立つ情報を意識して書いています。よかったらフォローお願いします~。

最近の記事

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第三章

 めぼしい企業のピックアップが終わり、各企業に資料請求のはがきを送る準備が終わると、わたしこと高藤由美は就職センターを出た。  もう12時過ぎだ。夏休みになっても営業している学食がいくつかあったので、わたしはお昼を食べてから自宅に帰ることにした。  閑散とした学食できつねうどんを注文し、窓際のテーブルに座って一人で食べていると、窓の外を通り過ぎようとした男性と目が合った。演劇サークルの後輩で大学2年生のギャラだった。気まずくて思わず目をそらしたら、しばらくして、後ろから声が

    • 『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第二章

       夏休みに入った早朝のキャンパスは人の姿がほとんどなかった。真っ青な空に大きな入道雲が浮かび、大学の白い建物と道路が太陽光の反射でまぶしく、まともに目が開けられない。  わたしこと高藤由美はアブラゼミがうるさく鳴いているなか、下を向いたまま広いキャンパスを横断し、就職センターのドアを開いた。  クーラーの効いた広い部屋に入ると、大きな掲示板が目に飛び込んでくる。ここには企業からの求人票が貼られており、学生は気になる求人票を持って就職センターの事務員さんと話をすることになってい

      • 『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第一章

         自分の部屋から出て、キッチンに向かう。ちょうど昼の12時だ。家族はみんな仕事に出かけていて誰もいない。パジャマ代わりにしている半そで短パン姿のまま、腰まで伸ばした髪の毛をヘアバンドでまとめると、わたしは冷蔵庫に入っている朝食を電子レンジに入れた。それからむっとした熱のこもっているリビングでクーラーのリモコンを最低温度の18度に設定し、テレビのリモコンを手に取った。  フジテレビの『笑っていいとも』がちょうど始まったところだった。司会のタモリが  「それじゃあ、今日もそろそろ

        • 『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第三十三章(最終回です→第3部は9/25より公開)

           「はあっ! はあっ! はあっ!」  どうしたらいいのか、どこへ行ったらいいのか。何一つわからないまま、オレこと高藤哲治は人気のない暗い道を自転車で走り続けた。  「ああっ、うああああっ!」  お父さんとお母さんの顔を思い出すと、頭がハンマーで殴られたように痛くなり、発作のような感情が噴き出してくる。オレは大声でわめき散らし、さらに自転車をこぐスピードを上げた。  「があああああっ!」  心臓がバクバクして汗が流れ落ちる。構わず自転車を暗闇に向かってめちゃくちゃに漕ぎ続けてい

        『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第三章

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        • 毎週水曜更新『Egg〈神経症一族の物語〉』第1部 1964
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        記事

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第三十二章

           さっきまでお父さんだった「青鬼」は、ソファからゆらりと立ち上がり、オレこと高藤哲治と向かい合った。  冷気のこもった息を吐きながら「青鬼」が言う。  「哲治、お前はもうダメだ」  その言葉に思わずオレはびくりと震えた。その様子を見て「青鬼」が意地悪く笑った。  「頭が悪いだけなら、勝と同じだからまだ許せるんだよ。自分ができる精一杯を健気に頑張っているんなら、仕方がないと思えるからな。  だがな、勉強しろというと反抗して暴力をふるい、いい塾を探して通わせれば勉強もせずに繁華街

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第三十二章

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第三十一章

           鶴川駅でオレこと高藤哲治はバイクで送ってくれた川上太一さんと別れた。  自転車に乗り換えて自宅に戻ると、お父さんが家にいて、お母さんと一緒にリビングでテレビを見ていた。さっさと2階に上がろうとすると、お母さんがオレに声をかけた。  「哲治、こっちに来て。話があるの」  オレは二人に近づいた。お父さんが鞄をしょったままのオレを見て言った。  「今日は随分帰りが遅かったな。何をしていた?」  「友達がケガしたから家まで送ってきた」  「塾の友達か?」  「違うよ。学校の友達にた

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第三十一章

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第三十章

           「うわあ! かっこいいですね!」  国鉄原町田駅の線路沿いに止められていた太一さんのバイクは「ホンダエルシノアMT125」と言う。シルバーのタンクの上に太い青線が引かれ、タンクの前についている2つの丸いメーターも同じ色でデコレーションされたすっきりとしたデザインのバイクだ。  太一さんは右足でエルシノアのキックペダルを蹴りこみ、右手のハンドルをひねってエンジンの回転数を上げた。ブルンブルルルンというむき出しのエンジン音が辺りに轟く。  オレはバイクのエンジン音を間近で聞いた

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第三十章

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十九章

           スペースインベーダーでついに瞬間ランキング1位になったオレこと高藤哲治は、夜になってサラリーマンでごった返す人ごみの中を鼻歌交じりで町田駅に向かって歩いていた。  「今日はついに9面をクリアできた! 『SAL』さん、隣で悔しそうだったなあ……」  数年後に名古屋撃ちという名前で全国区になるスペースインベーダーの裏技の原型は、ここ2、3週間のうちにインベーダーに熱中している人たちの間ですっかり有名になっていた。  そのせいで最近は町田のインベーダーハウスでもランキングの変動が

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十九章

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十八章

           一周忌から1年ほど経った、小学校の1学期の終業式の日のことだ。 夜遅くに帰宅して夕飯を食べてから、哲治と由美の通知表を見た隆治は、哲治の絶望的な成績に目が釘付けになった。  妻の恵美からは勉強ができなくて困ると聞いてはいたが、それでも今まではAやB評価も少しはあったのだ。しかし4年生になった哲治の通知表はすさまじかった。ほとんど全部が最低のCだったのだから。  「哲治! これはどういうことだ?」  隆治はリビングのテーブルに通知表を開いて哲治に声をかけた。遊んでいた哲治と由

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十八章

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十七章

           そんな高藤組は高藤誉の一周忌を待たず、1974年に解散した。  跡取りである息子の隆治は組を継ぐ気は一切なかったし、妻のいちも自分の代でこの世界から足抜けしたいと考えていたからだ。  それで一周忌を節目として、実力のある連中に組を分割して渡し、高藤家は組の運営から完全に手を引いたのである。  いちは義理の娘の弘子と孫の正彦、小間使いの東海林勝、料理人の高橋や運転手、その他行き先がない者だけを数名自宅に残した。今後はバーを建て替えて小料理屋を経営すると言う。  前を向いて生き

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十七章

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十六章

           「まだ若かったころ、儂は東京で歯医者の助手をやっていたんじゃ。  ちょうどお昼の時間だったと思う。突然地面がすさまじい勢いで揺れ始めてな。3度目の大きな揺れで病院が崩れそうになって、儂や医者や患者たちは命からがら外に逃げ出したんじゃ」  1923年9月1日。相模湾北西部を震源とする、マグニチュード7.9の巨大地震が首都圏を襲った。家屋倒壊や火災で甚大な被害が発生し、死者は10万5千人に上ったと言われている。いわゆる「関東大震災」だ。  誉が話を続けた。  「ほっとしたのも

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十六章

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十五章

           「今日は命日か」  編集部でカレンダーを見ながら高藤隆治は呟いた。8月22日。五年前の今日は父である高藤誉が亡くなった日だ。  三回忌までは毎年22日に合わせて帰省していたが、去年からお盆に帰省して仏前に手を合わせることにした。おかげで盆明けの仕事が溜まることがなくなったのがありがたい。  隆治は受付の女性に  「打ち合わせに行ってくる」 と言い残して外に出た。残暑の日射しはコンクリートの照り返しでより一層ギラついている。あちこちで騒ぎ鳴くアブラゼミの声を聞きながら、隆治が

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十五章

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十四章

           「そうそう。お向かいの佐藤さんの話、聞いてるかしら?」  私こと高藤恵美が、買い物かごを持ってそわそわしていることに一切気がつくこともなく、隣の奥さんは向かいの佐藤さんの夫婦仲が疑わしいだの、ごみ集積所のカラスの被害がひどいだのというくだらない話を延々とし続けた。  恵美は奥さんの話に適当に相槌を打っていたものの、本格的にイライラし始め、そもそもの話の発端になった息子の哲治の体たらくに心の中で怒りをぶつけ始めた。  ――大体こんな風に噂話のネタになるのも、哲治ができの悪い子

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十四章

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十三章

           「そういえば、朝、哲治君が自転車に乗って出かけるところを見たわよ。塾に行っているの?」  「夏期講習なんです。勉強ができないから大変で……」  高藤恵美がため息をつくと、隣の奥さんが言った。  「そんなことないわよ。うちの息子に爪のアカを煎じて飲ませたいわ。『夏期講習には行かなくていいの?』って聞いても、『必要ない』の一点張りで」  「でも、息子さんは東大に続々と合格しているあの優秀な八王東高校に入学されたじゃないですか。受験が終わったばかりで少し休憩したいんじゃないですか

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十三章

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十二章

           高藤恵美は台所で洗い物を終えて、うーんと伸びをした。  「よし、洗濯と掃除と洗い物はこれで終わりっと」  夏休みになって子供たちの学校がなくなり、いつもと違う日常がやってきた。私はカレンダーにぎっしりと描かれた子供たちの予定を確認する。  「哲治は塾の夏期講習だから夜まで帰ってこないでしょ……。そういえば、今朝は随分早起きして出かけていったけど、塾が楽しくなってきたのかしら? やる気が出てきてよかったわ……」  カレンダーを見ながら、私は愛用のマイルドセブンに火をつけて、苦

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十二章

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十一章

           そんなオレだったけど、一度だけ女の子を好きになったことがある。中2のときに同じクラスになった、青山実子という眼鏡をかけた小柄な美術部の女子だ。 ・・・  中学生になったオレはクラスでほとんど誰とも話さず、休み時間には席で寝ていた。ところが席順が前後になった青山さんと、4月から始まった『未来少年コナン』というNHKの冒険アニメがきっかけで話をするようになったんだ。  とはいえ、このアニメは面白いんだけど、中学生にはちょっとこどもっぽい。だから中2にもなって見ていると言うの

          『Egg〈神経症一族の物語〉』第2部 第二十一章