『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第二章
夏休みに入った早朝のキャンパスは人の姿がほとんどなかった。真っ青な空に大きな入道雲が浮かび、大学の白い建物と道路が太陽光の反射でまぶしく、まともに目が開けられない。
わたしこと高藤由美はアブラゼミがうるさく鳴いているなか、下を向いたまま広いキャンパスを横断し、就職センターのドアを開いた。
クーラーの効いた広い部屋に入ると、大きな掲示板が目に飛び込んでくる。ここには企業からの求人票が貼られており、学生は気になる求人票を持って就職センターの事務員さんと話をすることになってい