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毎週水曜更新『Egg〈神経症一族の物語〉』第1部 1964

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1964年、アジア発の東京オリンピックが開催される中、高藤恵美は望まぬ男児を出産する。 我が子を愛せない恵美と、自分の父親に服従を強いられる夫の隆治。神経症持ちの二人が、高度経済… もっと読む
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記事一覧

『Egg〈神経症一族の物語〉』第十五章

 大量の荷物を両手に提げ、抱っこひもで息子の高藤哲治を抱っこした恵美は、実家に迎えに来た…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第十四章

 1月2日。奮発して大阪から新幹線ひかりに乗り、東京にわずか4時間で戻った高藤隆治は、そ…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第十三章

「ああーん! 白組が優勝しちゃった~!」  高藤隆治が取材のために宿泊している大阪のアパ…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第十二章

「カッちゃん、様子はどうだったい?」  7人も入ればいっぱいになってしまう小さな飲み屋の…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第十一章

 松本駅の近くに、大きな門構えで四方をぐるりと高い塀で囲った立派なお屋敷が立っている。門…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第十章

「シキュウ デンワクレ」  実家から父である高藤誉の名前で、大阪のアパートに電報が届いた…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第九章

「やばい9時だ。くっ! 頭が痛え…」  大阪に取材に来ている高藤隆治は、カーテンが閉まった薄暗い部屋でのろのろと体を起こし、けたたましく鳴っている目覚まし時計を止めた。  ここは編集長の五十嵐が大阪で借りている四畳半のアパートの一室だ。昨晩は大阪の商工会から情報をもらおうと接待をしていた。やっとのことでセッティングできた商工会会長との席であったし、会長から勧められた酒を飲まないという粗相はできない。隆治は酒を浴びるように飲んだ。しかし2次会、3次会と席が進むにつれ、ちゃんぽん

『Egg〈神経症一族の物語〉』第八章

 東京に比べてひんやりとした空気。刈り取りが終わり水がなくなった田んぼ。白菜やネギが等…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第七章

第七章   一晩ぐっすり眠ったことで、高藤恵美はすっかり落ち着きを取り戻していた。頬…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第六章

第六章  「え? 年明けまで大阪に行くの?」  夜遅く病院にやってきた隆治の言葉を聞い…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第五章

「隆ちゃん、国際博覧会条約が動くらしいぞ」  編集長の五十嵐重雄が高藤隆治を呼び止めた。…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第四章

「恵美、おめでとう。しっかりした顔つきの男の子でねえの」  高藤恵美の母、鈴木正子が産後…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第三章

 病室で恵美がぐっすり眠っている間に、隆治は両親を連れて新生児室をのぞきに行った。 「え…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第二章

 分娩台の上でのたうち回っていた恵美は、突然股の間に熱湯があふれ出たのを感じた。途端にパンパンに膨張していた腹部が急速にしぼんでいく。 「先生、破水しました!」  助産婦が落ち着いた様子で医師に伝えると、医師が様子を確認した。 「高藤さん、破水したのでこれから陣痛が強まります。あと一息ですよ。産まれてくるお子さんのためにも頑張りましょう」 「はい…」  かすれた声で返事をしながら、恵美は虚脱感に襲われていた。  喉から胃が出そうなくらいに膨れ上がった恵美の腹部は、今や寝てい