マガジンのカバー画像

水・土曜更新『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 1992

12
1992年、バブル崩壊直後の日本で26歳になった高藤由美は、4浪後に入った私立大学で就職活動に悪戦苦戦していた。そんな最中、行方不明になっていた兄の哲治の消息を耳にして…。 「神…
運営しているクリエイター

記事一覧

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第十二章

 五日後。日照大学の人事担当から電話が来て、面接の日程が告げられた。弘子おばさんのコネが…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第十一章

 「14年前、哲治はバイクにはねられて意識不明の重体だったけど、奇跡的に一命をとりとめた…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第十章

 「え!? お兄ちゃん、ですか?」  わたしこと高藤由美は、久々に兄の哲治の名前を聞いた…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第九章

 西武新宿線の高田馬場駅のトイレで、わたしこと高藤由美は激しい下痢と戦っていた。  もう…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第八章

 「あなた、コーヒーのお代わりは?」  高藤恵美が空になったコーヒーカップを見て、夫の隆…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第七章

 今日は日曜日。珍しく朝からお父さんの高藤隆治が自宅にいるせいか、食卓にはサラダやフルー…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第六章

 「んで、これがそのとき撮った写真なの?」  下北沢の居酒屋の一角で、写真を現像するともらえる紙製のアルバムを手に取りながら、岡田葵はギャラこと西島秀樹に尋ねた。  「だー! ダメダメ! 誰にも見せないって、高藤先輩と約束してんだからっ」  葵の手からアルバムをひったくると、ギャラは大事そうに胸に抱えた。  「ぶー! 見せろよお」  「やだ! 絶対見せない!」  後ろを向いてアルバムが絶対に葵に奪われないように必死な様子のギャラを見て、葵は大きくため息をついた。  「あんだよ

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第五章

 「わあ! 海だ!」  駐車場からてくてく歩いて汗をかいていたわたしこと高藤由美は、真っ…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第四章

 「今鍵開けますね」  若葉マークが貼られた白いセダン型の車の鍵をガチャリと開けると、運…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第三章

 めぼしい企業のピックアップが終わり、各企業に資料請求のはがきを送る準備が終わると、わた…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第二章

 夏休みに入った早朝のキャンパスは人の姿がほとんどなかった。真っ青な空に大きな入道雲が浮…

『Egg〈神経症一族の物語〉』第3部 第一章

 自分の部屋から出て、キッチンに向かう。ちょうど昼の12時だ。家族はみんな仕事に出かけて…