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試験【ショートショート569字】

「この経歴でよくうちの会社受けれましたよねぇ〜。」
と俺は椅子にふんぞり返りながら、できるだけ小馬鹿にして聞こえるように言う。目の前にいるスーツ姿の彼女は動かない。

小さな部屋には彼女を含めて4人。試験官と受験者の間はもう少しで手が届きそうな距離で、圧を感じさせる配置だ。

「一応うちは一流商社なんだけどねぇ。うちも落ちたもんだな。」
と俺は彼女にギリギリ聞こえるような声量でつぶやく。もちろんこれも計算のうちだ。

「まぁいいや、じゃあ志望動機?ちゃちゃっと簡単にお願いしまーす。」
と俺はわざと苛つかせるような振り方をする。

「はーい、わかったわかった。それってうちの会社じゃなくてもいいよね。業界研究が足りてないんじゃないのー?」
と俺は目をぎろりとむきながら、よくある台詞を言う。彼女は口を結んで、俺の目をじっと見ている。

「だから!うちの会社舐めるなって言ってんだよ!」
と俺は机を激しく叩きながら怒鳴る。


パンパン

と彼女の拍手が部屋に鳴り響く。

「はーい、ありがとうございます。なかなかよかったですよ。最後のはもうちょっと迫力があってもよかったかもね。」
と彼女は笑顔で言う。

「結果は後日お知らせしますね。」
「はい、ありがとうございました!」

俺は彼女を含めた試験官3人に一礼し、次クールドラマの圧迫面接官役のオーディション会場を後にした。結果が楽しみだ。

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