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バンジージャンプ【ショートショート600字】

「おお、高いなぁ!」

 彼氏のタクミは私の横で声を上げた。吊橋の上に設置された足場。高さは100mでビル30階分に相当するらしい。タクミはギリギリの場所で足元を覗き込み、はるか下にある川面をこわごわ見ている。高所恐怖症の私には、ちょっとぞっとしない風景だ。

 私はタクミを横目に見る。目元はゴーグルでよく見えないが、口元を見るとこの体験に興奮していることが見て取れる。

 私はタクミの背後に近づく。彼は紐をつけていない状態だ。私がしようとしていることなど思いもよらないだろう。私は昨晩のことを思い出し、怒りが湧いてくる。絶対的に罰を受けるべきだ。

 私はタクミの背中を思い切って強めに押す。タクミは「おっ」と声にならない叫びを上げ、バランスを崩して足を前に踏み出すー


「びっくりするなぁ。何してんだよ。」
タクミは一歩踏み出した足で前の床をしっかりと踏みしめ、ゴーグルを外しながら私を見て言う。

「昨日の夜勝手に私のプリン食べた罰よ。驚いたでしょ。」
と私はいたずらっぽく微笑む。

「それにしてもこのVRってのはよくできているのね。タクミの見ている景色をこっちのモニターで見ていたけど、本当にバンジージャンプ台にいるみたいね。」

「お前もやってみろよ。モニターなんかと比較にならないくらい怖いぞ。」

「私高いとこダメだもん。遠慮しとく!」

 しっかり驚いたようでいい気味である。帰りにコンビニに寄ってプリンを買ってもらおう。

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