見出し画像

【朗読】ダンテ神曲より『地獄の門』夏目漱石、森鴎外、上田敏による翻訳を、声紹介に代えて。

こんばんは。甘沼です。
早くもスキやフォローなど、ありがとうございます✨

私は高中低の、三種類の声を主力に声活をしております。
こちらの『地獄の門』は、詩の朗読のサンプルにしているものです。
三人の文豪の訳を、三種類の声で読み分けてみました。

夏目漱石の訳を読んだ高音が地声。
森鴎外の訳を読んだ中音は、司会やアナウンスや朗読などの仕事用。
上田敏の訳を読んだ低音は、自己紹介の朗読の『彼女』の代役を、舞台でするために作った声です。
(詳しくは、そのうちお話しできると思います)

この三姉妹ボイスの上の、男装女子ボイスがほぼ完成しており、他に男声も練習中です。YouTubeにシチュエーションボイスを投稿させて頂いたものがありますので、よろしければご視聴下さい。
(ラヴクラフトのクトゥルフ朗読や、神社の祓詞の朗読はマニアックすぎるので内緒)

『地獄の門』で意識した読み方

 私がこの朗読をした時にイメージしていたのは、以下です。

①夏目漱石:高音『天使、福音』

天使を語るのは難しいですが、私にとって天使とは、天使自身に意思はなく、ただ神意を伝えるだけで、そこに慈悲も感情もなく、無邪気なまでに美しいものなので、高音で一見可愛らしく感じても、否定も拒否も許さない、有無を言わせない強制力を持たせたいと思いながら読みました。
 地声に近い高音で、私自身の我儘さを乗せています。

②森鴎外:中音『聖女、殉教』

二番目は、神を信仰し、教えを広げる聖職者、聖女をイメージしています。
森鴎外の、やや難解な表現や節回しが、信仰によって神を崇高なものにしていく、聖職者の言葉にマッチするように感じました。
私は特定の宗教や思想は持ちませんが、人が信じるから神様が存在している、と、漠然と感じているので、神様の加護を得るために祈ったり、広めたりも、当たり前の事だと思います。
ただ、そこには『盲信』というリスクがあるので、リスクを孕む清らかさを表現したいと思いながら、本業のナレーションボイスで『人々に伝わるように』読んでいます。

③上田敏:低音『権力者、強制』

最後の低音は、神でも宗教でも信仰でも利用する者、人間を支配する人間、即ち「支配者」として読んでます。一番わかりやすい言葉に訳されているからです。
「神様が天使の口を借りてこう言ってる。聖職者も神を信じろと、こう言ってる。支配者の私も同じこと言うよ。わかるよね?」
です。
「悪いことすんな。するならここ通ってもらうよ。通るなら望みを捨てな。それが嫌なら悪いことしないで言うこときけよ?」
 そういう支配者をイメージしました。女王様ですね…。ちょっとだけ、愛がありそうな読み方をしています。

■ダンテ 神曲『地獄の門』

今回朗読したのは、イタリア文学最大の古典とされる、ダンテの『神曲』地獄篇、煉獄篇、天国篇の三部のうち、地獄篇に含まれる『地獄の門』の抜粋です。
出張の合間に立ち寄った静岡県立美術館に併設された『ロダン館』に、この作品をモチーフにした彫刻が展示されているのですが、その『地獄の門』の彫刻の前の床に、原文と、四人の文豪による訳が印刷された絨毯が敷かれており、

当然、声にしたくなり。

撮影して帰宅後に調べたところ、夏目漱石『倫敦塔』、森鴎外の『即興詩人』、上田敏の『神曲』からの抜粋で、これらは著作権の消失を確認できましたが、現地の絨毯にあった平川祐弘先生の訳は、平川先生が著作権を保持していらっしゃるので、朗読公開は控えさせて頂きました。

オーギュスト・ロダン『地獄の門』静岡県立美術館

『神曲』は、三界全体の構想をあらわした第一歌を含む地獄篇 (Inferno)34歌と、煉獄篇(Purgatorio)33歌、天国篇(Paradiso)33歌の、計100歌から成ります。
各篇は3の倍数である33歌から構成されており、これはローマカトリックの教義、「三位一体」を文学的に表現するための試みでした。
『聖数〝3〟と、完全数〝10〟』を物語全体に行きわたらせるために、1、3、9(32)、10(32+1)、100(102、33×3+1) の数字が仕込まれています。

ということは

リズムがあって、読んだら絶対に気持ちいいんですよね……。(長いけど)
いつか、全部読んでみたいと思います。(長いけど)

■彫刻『地獄の門』

今回写真を撮影させて頂いたのは、静岡県立美術館。
公式ホームページに、マウスでぐりぐり回してみられる『VR地獄の門』がありましたので、リンクを貼っておきます。(CRかと二度見したのは内緒)

『地獄の門』を制作したオーギュスト・ロダンは〝近代彫刻の父〟とも呼ばれる、フランスの彫刻家です。
彼の代表作『地獄の門』は、元々はフランス政府から国立美術館のモニュメントとして依頼されたものでした。
その国立美術館の建設計画が白紙となり、地獄の門の制作中止命令を受けたロダンは自費で制作を続けたのですが、彼が生きているうちには完成せず、未完に終わったといいます。

ダンテの熱烈な愛読者だったロダンは、当初は『神曲』の地獄篇の情景を表現しようとしていましたが、スケッチを重ねるうちに、ダンテが三位一体を表現した神学的秩序は失われ、ボードレールの『悪の華』の混沌とした『人自身の地獄』に作品が寄っていき、ダンテへの取材から構想したモチーフは「パオロとフランチェスカ」と「ウゴリーノと息子たち」の2つのみになってしまいました。

地獄を具現化するうちに、ボードレールに囚われていったのでしょうか。(読みたい)

『地獄の門』や『考える人』は、上野恩賜公園の国立西洋美術館の入り口付近に屋外展示されています。
酸性雨で緑がかってしまっていますが、それも味があり…とは言いづらいですが、私は好きです。

屋内展示は前述の、静岡県立美術館のものがあり、ロダンの作品を展示する『ロダン館』は、『地獄の門』が重く巨大で建物の入り口を通れないことが想定された為、『先に地獄の門を設置し、その周りにロダン館の建物を建てる』という方法をとった、特異な建築物です。
天井からの採光のみで館内を照らしている為、照明器具はなく、自然光のまま作品を鑑賞できるのも珍しく、撮影も可能なので、興味のある方は、ぜひ立ち寄ってみてください。

この他に現存する地獄の門は、世界に7つ。
フィラデルフィア・ロダン美術館、パリ・ロダン美術館、チューリッヒ美術館、スタンフォード大学カンターアートセンター、サムスン美術館プラトーで、石膏原型はオルセー美術館に。

地獄への入り口、結構ありますね。
通らないで済むといいな。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?