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少量の飲酒なら本当に健康によいのか?!飲酒量はどの程度であれば健康に有益なのか?!

こんにちは。
「酒は百薬の長」とは、故事ことわざ辞典によると、「適量の酒はどんな良薬よりも効果がある」とお酒を賛美する意味を持つ言葉です。しかし、これは本当でしょうか?
ここでは、現在までわかっているお酒が健康に及ぼす影響に関してのエビデンスや、適切なお酒の飲み方に関するエビデンスを紹介していきます。


結論から言うと、現時点では、少量の飲酒が絶対的に健康に良いというエビデンスはありません。(言い換えると、様々な研究があり、因果関係に決着がついていないということでもあります。)
ただ、適量の飲酒は健康に対してポジティブに働くという説は確かにあります。よってお酒を飲む場合は週に1~2回、1回に1~3杯程度にとどめることをお勧めします。

飲酒と健康に関する問題を検証した、最新の研究結果についてご紹介します。
この研究では、週に1~3杯程度の少量飲酒者は、全く飲酒しない人に比べて、長生きする傾向があることが示されました。本試験には55~74歳の男女9万9,654人(女性68.7%)が参加し、約9年にわたって追跡調査が行われています(中央値8.9年)。
解析の結果、全く飲酒しない人の全死亡リスクは、飲酒量が週に1~3杯(1杯はビールで約350mL、ワインで約150mLに相当)の少量飲酒者に比べて約25%高いことが分かかりました。また、飲酒量が1日に2~3杯以上の大量飲酒者では、少量飲酒者と比べた全死亡リスクが男性で19%、女性で38%高い結果が認められました。
つまり、全く飲酒しない人、少量飲酒者、大量飲酒者の3グループに分けた時、少量飲酒者の死亡リスクが一番低かった、と結論づけられたのです。
この研究から、飲酒量と全死亡リスクとの間にはJカーブの関係が認められた、ということになります。
しかし、少量飲酒者は高収入で、健康的な食生活を送り、運動量が多い傾向がみられており、これらの要因が余命の延長をもたらした可能性があることも研究者は述べています。
ということは、少量の飲酒自体が体にいいのか、少量の飲酒をたしなむような生活状態が健康に良いのか、という部分では、結論が出ていないということです。
いずれにしても、飲酒する場合は、多くても週に1~3杯とし、決して飲みすぎないことが重要であると言えます。


「飲酒と健康障害の関係について」

週に数回、少量のお酒は、全死亡リスクという観点から見れば「健康に良い」と解釈できる一面もあります。しかし、お酒の量と比例して罹患のリスクが上昇しやすい病気もあるので、注意が必要です。


「アルコールと関係性が確立している病気」

飲酒量により発症リスクが上昇する疾患
下記の疾患は少量の飲酒でも罹患リスクが上がってしまうことがわかっています。
1. さまざまな癌(口腔、咽頭癌、喉頭癌。食道癌、大腸癌、乳癌)
2. 肝硬変
3. 高血圧
4. 脂質異常症
5. 脳出血

飲酒量と罹患リスクの間にJカーブがある疾患
下記の疾患は大量の飲酒で罹患リスクが上がってしまいますが、逆に少量の飲酒ではリスクが下がる可能性がある疾患です。しかし、一回罹患してしまうと恐ろしい病気が多いですので、決して楽観視はしないでください。
1. 2型糖尿病
2. 狭心症
3. 心筋梗塞
4. 脳梗塞

アルコールと発症リスクが関係する可能性が高い疾患
1. 膵炎
2. 大腿骨頭壊死
3. 慢性腎臓病
4. 認知症など

次回はお酒の減らし方を少し変わった視点で解説してみます。


◆プロフィール情報
埼玉医科大学卒業後、都内の大学付属病院で初期研修を終了し、腎臓病学や高血圧学の臨床や研究に従事し、腎臓内科専門医や抗加齢医学専門医等の資格を取得。
予防医学やアンチエイジングの重要性を感じ、2016年より帝京大学公衆衛生大学院に入学し様々な研究に従事した。
2018年秋からハーバード大学公衆衛生大学院 (Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学中である。
◆資格
腎臓内科専門医、抗加齢医学専門医、内科学会認定医、日本医師会認定産業医、
公衆衛生学修士(Master of Public Health: MPH)
◆HP
https://activehealthlab.tokyo/

*本ブログにおける発言は個人的なものであり、所属組織を代表するものではありません。

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