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なぜハーバードの研究者たちは毎日リンゴを食べるのか?

こんにちは。
僕が所属しているハーバード大学公衆衛生大学院 (Harvard T.H. Chan School of Public Health)のDepartment of Social and Behavioral SciencesのLabではランチは研究者が集まって一緒に食べることが多い。
Bostonは外食がとても高いために(テイクアウトのサンドイッチが$10前後、店でランチを食べようとすると最低でも$15-20ぐらいかかってしまう)、ほとんどの人は手作りのお弁当を持ってくる。そして、アメリカではジップロックかタッパーにランチを入れることがほとんどだ。

そこで驚いたのは、ほとんどの人がリンゴをランチに持ってきているということだ。しかも、日本みたいに1カットではなく、丸々1個持ってきている。アメリカのリンゴは確かに安くて美味しい印象がある(安いmarketで買えば$1で3-4個買えてしまう)。


しかし、美味しくて安いだけの理由で、ハーバード大学公衆衛生大学院に所属している、健康へのリテラシーが高い研究者が毎日のランチにリンゴを持ってくるはずがない。
そこでリテラシーの高い人たちがほぼ毎日食べているリンゴがどのぐらい健康に良いのか気になり、調べてみた。

アメリカでは” An apple a day keeps a doctor away.”ということわざがある。この意味は1日に1個のリンゴを食べれば、医者にかからなくてすむ。ということだ。

リンゴの摂取が健康へ与える影響
① 2型糖尿病の罹患リスクの軽減

約38,000人(Women’s Health Study)を対象とし約9年間観察した疫学研究では、1日に1-2個リンゴを食べた参加者は、まったく食べていない参加者と比較し2型糖尿病のリスクが28%減ったという報告が得られた1。
ハーバード大学が行った別の研究でも(Nurses’ Health Study、Nurses’ Health Study II、Health Professionals Follow-up Studyのそれぞれの参加者を集めて)同様な結果が認められている。参加者のうち、調査開始時に慢性疾患(2型糖尿病、心血管疾患、がん)が認められなかった参加者を対象とし果物と2型糖尿病の関係を調べた。約18万8,000人の医療従事者(参加者がすべて医療従事者)のデータを解析した結果、リンゴの摂取量が多い人は2型糖尿病のリスクが減ったという結果を認めた(3食/週増加するごと糖尿病リスクのHRが0.93(95%CI:0.90~0.96、p<0.001)2。

② 心血管疾患への影響
約75,000人のスイス人を対象とし10年間観察した研究では、リンゴの消費量が多ければ多いほどstrokeへのリスクが減っていることが認められた(P trend =0.02)3。
(最も多くリンゴを食べていた参加者は最も少なくリンゴを食べていた参加者と比較し、StrokeのHRが0.81 (95%CI: 0.74~0.89))。

③ 体重減少への影響
ハーバード大学が行った研究では、133,468人を約24年間観察した結果、リンゴの摂取量が増加した人は減少した参加者と比較し、4年間平均で体重が約0.6kgの減少が認められた(体重減少:-1.24 lb (95%CI: -1.62~ -0.86) )4。

これらの研究のlimitationの1つとしては、リンゴを多く食べているような人は健康へのリテラシーが高い可能性があり、リンゴ以外の健康のよい食事なども行っている可能性がある。
けっしてリンゴだけ食べていれば他の生活習慣は気にしなくてよいとは思ってほしくないのだ。

今回は疫学研究だけの紹介でありましたが、次回はリンゴの健康に対してbenefitを及ぼすメカニズムについて考えていきたいと思う。

The most surprised things in Boston is to bring Apple to the Lunch. I am interested of why those in HSPH bring Apple to the Lunch. Indeed, in Boston, we are able to get reasonable and tasty apple in the market. There surely are reasons about that, except for tasty.
I found that previous studies investigated that those who ate apple more were lower risk for T2DM, CVD and overweight than those who did not eat apple.
The old sayings, “An apple a day keeps doctor away” may be true.
h.amano

参考文献
1. Song Y, Manson JE, Buring JE, Sesso HD, Liu S. Associations of dietary flavonoids with risk of type 2 diabetes, and markers of insulin resistance and systemic inflammation in women: a prospective study and cross-sectional analysis. Journal of the American College of Nutrition. 2005 Oct 1;24(5):376-84.
2. sao Muraki, Fumiaki Imamura, Joann E Manson, Frank B Hu, Walter C Willett, Rob M van Dam, Qi Sun. Fruit consumption and risk of type 2 diabetes: results from three prospective longitudinal cohort studies. BMJ. 2013 Aug 28;347:f5001.
3. Larsson SC, Virtamo J, Wolk A. Total and specific fruit and vegetable consumption and risk of stroke: a prospective study. Atherosclerosis. 2013 Mar;227(1):147-52.
4. Bertoia ML, Mukamal KJ, Cahill LE, Hou T, Ludwig DS, Mozaffarian D, Willett WC, Hu FB, Rimm EB. Changes in Intake of Fruits and Vegetables and Weight Change in United States Men and Women Followed for Up to 24 Years: Analysis from Three Prospective Cohort Studies. PLoS Med. 2015 Sep 22;12(9):e1001878.

プロフィール情報
大学卒業後、都内の大学付属病院で初期研修を終了し、腎臓病学や高血圧学の臨床や研究に従事し、抗加齢医学専門医や腎臓内科専門医等の資格を取得。
予防医学やアンチエイジングの重要性を感じ、2016年より公衆衛生大学院に入学し、「食生活や生活習慣等など日常生活を改善することで、身体だけでなく心もHappyに」をモットーに、予防医学やアンチエイジングに関する研究を行っている。
2018年秋からハーバード大学公衆衛生大学院に留学し、最先端のアンチエイジング及び予防医学について研究中である。
資格
腎臓内科専門医、抗加齢医学専門医、内科学会認定医、日本医師会認定産業医、
公衆衛生学修士(Master of Public Health: MPH)
HP
https://activehealthlab.tokyo/

*本ブログにおける発言は個人的なものであり、所属組織を代表するものではありません。

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