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おばあちゃんのおひざもと 第36話 入院

「もうダメ」体の調子がすごく悪くて、一人でふらふらしながら門まで歩いてたら、田んぼで仕事してた隣のおばあさんが土手から上がってきて、倒れそうな私を支てくれてねえ。「八重さん、大丈夫かい?しっかりして」って家まで一緒に腕を支えて歩いてくれた。布団に横になるとこまで世話してくれたよ。翌日は、歩けない私をリヤカーに乗せて小田病院まで連れって行ってくれた。お医者さんに貧血ですねと言われてしばらく入院したことがあるよ。その頃は幸ちゃんのお父さんはもう修行に出ていて家にいなかったし、孝江おばちゃんも千葉では働いていたから、家にはおじいちゃんと正良しかいなかった。おじいちゃんは家事をする人じゃなかったから、突然正良がおじいちゃん(父親)の世話をしなくちゃならなくなった。料理なんか何も教えてなかったから、釜戸に薪をくべて、ご飯を炊くところから覚えなくちゃならなくて大変だったろうね。とりあえずご飯の炊き方を覚えると、それからは毎日おかゆを食べて過ごしたらしい。「だって、お父さんがおかゆとたくあんだけだけあればいい、って言うから。」って正良がお見舞いに来た時に話してくれた。ご飯だけはどうにか毎日炊けるようになったみたいだけど、おかずはやっぱりなかなか作れなかったようだね。まあ正良なりに奮闘した時期だったろうね。1ヶ月近くおじいちゃんと二人で生活したんじゃないかな。朝は自分のお弁当とお父さんのお弁当と2つ用意して、学校から戻ったら夕飯作ったり、洗濯なんかもしただろうからね。大変だろうからお見舞いには来なくていいよ、って言い聞かすんだけど、見舞いにもよく来てくれた。あの気難しいおじいちゃんの世話をするのも楽じゃなかっただろうに、よく頑張ってくれたよ。」


*この本は第1話から46話まで、順番に各章の最初の頭文字一音をつなげていくと、あるメッセージ明らかになります。さて、どんなメッセージでしょうか。

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隠されたメッセージ。いろはかるたの小説版。最初から最後の章まで、各章の頭文字を書き出していくと、最後にこの本の核心が明らかになります。かるた同様、お遊び感覚でも楽しめる本です。

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