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セナのCA見聞録 Vol.16 一週間で地球を一週半、そしてその後 前編

シカゴへ飛びました。

六月のある日、多くの便に遅れが出てその影響が次々に後続便の遅れへと影響していました。

私の乗務していた成田行きの便も例外ではなく、既にお客様も搭乗し、あとはドアを閉めるのを待つだけだというのに、その許可がなかなか降りずに出発できずにいました。

そこへスケジュール担当のスタッフが慌てて乗り込んできて、「この便の乗務員の中でこれからヨーロッパ便に乗り換えて働ける人はいませんか。一人でも二人でもいいから。」と全員を集めて頼み込むように聞いてきました。なんでも、この日の大きなスケジュールの乱れによって、あるヨーロッパ便の乗務員が全員飛べなくなり、急遽今空港にいるクルーの中からかき集めることになったらしいのです。

以前ヨーロッパに住んでいた私は、大好きなヨーロッパと聞いて、「この便に支障がないのであれば、私ボランティアします。」と申し出ました。

チーフパーサーはこの私の申し出に対し、飛行機は間もなく出発できそうだし、私が一人抜けても17名のCAがいればサービスに支障はないので大丈夫だと了承してくれました。

私はスーツケースを持ち出し、成田便の飛行機を降りて係りの人の後に付いてオフィスへ行きました。

機内ではパリかフランクフルト便に乗せるCAが急遽必要だと言っていましたが、私が指示されたのはドイツのデュッセルドルフ便でした。

スケジュール担当者は「あなたのフライトはXX便。ゲートはYY番。すぐに搭乗口まで走って行ってちょうだい。急いで!皆があなたの来るのを待っているから。」と早口で告げました。

OKと私は大急ぎで出発ゲートへと小走りに向かいました。

ところが、

驚いたことに、何か一つ狂うと全然違うところでも何か異変が起こるようで、息を切らしながら飛行機に乗り込もうとすると、機内から次々にCAとパイロットが降りてくるではありませんか。

「何かあったんですか?」とその中の一人に聞くと、「機長の娘さんが交通事故に遭ったと連絡が入って、機長が病院へ行くため飛行機を降りたの。それで、これから代わりのパイロットを探すことになったから、しばらくこの便は飛ばないわよ。」ということでした。

この便でデュッセルドルフへ飛ぶ予定だったクルーはこの日のスケジュールの大きな乱れのため、ある人は南米、ある人は北米内、ある人は別のヨーロッパ便、ある人は自宅へとバラバラに散っていきました。

機内に一人残された私 

「全く、なんて日。順調にいっていれば、成田便は11時半の出発だから、今頃はもうカナダ西部くらいまで飛んでいる頃だろうに。まだシカゴにいてどこにいつ飛ぶのかも分からない状態だなんて。。。😢」と空いているファーストクラスの座席に腰をおろして溜息をつきました。

しばらくすると、またあちこちからかき集められたとみられるCAが一人また一人と乗り込んできました。

その中の一人の話によると、従来なら13人編成で飛ぶフライトが満席にもかかわらず規定での最低要員数、8人で飛ぶことになったとのこと。

驚きはそれだけでは終わりませんでした。

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