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おばあちゃんのおひざもと 第41話 二度子育て

「『ごめん、お母さん。悪いけど、またこの子達の面倒見といてくれる。』って伸宏と雅美を連れてきてねえ。孝江おばちゃんの旦那の具合がどんどんと悪くなっていって看病につきっきりの時があったから、その時分はしょっちゅうここに子供を預けにきてね。伸宏も雅美もまだ小さくて、家の周りをちょこまか遊び回るからもう目が離せなくって。家には井戸とか、ため池とかがあるから、なるべく家の中で遊ばせるようにしておいて。外に出ると、「そっち行かないで、危ない、危ない」って追っかけって。

学さんが病気で亡くなって、数ヶ月後に佳子が生まれたでしょう。生まれてくる子供の顔を見れずに亡くなった学さんも気の毒だったけど、父親の顔を見ることなく生まれてくる佳子もかわいそうだった。孝江おばちゃんは一家の主人がいなくなって、自分が外に出て保育園の先生の仕事するとを決めたから、おばあちゃんは生まれたばかりの佳子と上二人の子供の面倒を見ることにした。

それでおばあちゃんは平日は孝江おばちゃんの家に住んで、週末になるとここの家に戻ってくるっていう風にしたの。ここにはもう幸ちゃんのお母さんがいてくれたからね。

むか〜し、昔、孝江おばちゃんが1歳の時にアメリカから持ってきたベビーカーを取ってあったから、あれをもう一度物置から出してきてさ。試しに押してみたらまだ使えたの。それでこれはよかったと赤ん坊の佳子を乗せてこの家と孝江の家を行ったりきたりしたよ。日差しをカバーする日よけがあって、フリルがついてるやつでね。ベビーカーを押して歩いてたら、近所のおばさんたちが「珍しいもの持ってますねー」って見にきたよ。でもタイヤがね、砂利道とか土の道路の上だと上手く前に進まなくて大変だった。まああれがあったお陰で随分楽だったよ。ずっとおぶって歩かなくてすんだから。

そうそう、幸ちゃんはよく一人で小さいのにおばあちゃんに会いにあっちの家まで歩いてきたねー。なんでかいっつも黄色い長靴履いて傘持ってんの。おばあちゃんが『何で傘持って長靴履いてんの?晴れてるじゃない。』って聞くと、『だって雨がふるといけないでしょう』って言って。

幸ちゃんはちょっとだけいると、『もうお家に帰るね』ってすぐ帰っちゃうんだから。来る時にはお母さんから「また今幸恵がそっちに出かけましたから」っておばあちゃんに電話がきて、今きたと思ったらちょっと遊ぶと「お家に帰る、バイバイ」ってトコトコ歩き出すんだから。そうすると今度はおばあちゃんが「今幸恵がここ出たよ」ってお母さんに電話してさ。しょっちゅうそんな事やってたよ」


*この本は第1話から46話まで、順番に各章の最初の頭文字一音(ひらがな)をつなげていくと、あるメッセージ明らかになります。さて、どんなメッセージでしょうか。

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隠されたメッセージ。いろはかるたの小説版。最初から最後の章まで、各章の頭文字を書き出していくと、最後にこの本の核心が明らかになります。かるた同様、お遊び感覚でも楽しめる本です。

大正3年、1914年にアメリカに生を受け、22歳までに3度も船で太平洋を横断し日本とアメリカを行き来したおばあちゃん。ロサンゼルスの大都会…

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