見出し画像

セナのCA見聞録 Vol.39 バリ島でクルー仲間とパーティーバケーション その1

私は同期の久美子とインドネシアのバリ島へ飛びました。

我トレジャー航空のクルーが自主的に主催する、パーティバケーションなるものに参加するためです。

毎年、世界中の様々なリゾート地からある場所を選び、同じ航空会社の社員であれば誰でも参加可能。希望者はそこまでのフライトは各自でアレンジし、期間中は様々なイベントを一緒に楽しむ、ということが例年の行われているようなのです。

久美子と私はこのお知らせメールを読んで、「行ってみよっか?」と早速申し込みをしました。

希望者は、参加費用をアメリカドルで幹事役の指定口座に振り込むか、または郵便為替を送ります。これには一週間の現地ホテル滞在費、毎晩の夕食、ウェルカムバックや、ビンゴゲームの商品などが含まれているのですが、信じられないくらい安い値段でびっくりしました。この年のタイトルは〝Beach Blanket, Bingo in Bali" 。私と久美子はお互いの次のフライトの関係で5泊6日の1日短い日程で参加しました。

参加者は友達、家族、彼氏彼女などを誘い合って一緒に行くことができるので、人数は一気に膨れ上がります。正確な人数は把握していませんが、集まった人はゆうに100人を超えていました。年齢も20代から60代、国籍も様々で、それはまあ賑やかな集団でした。

初日はパーティーへの参加登録をする日。

私たちは、夜9時近くにようやく集合場所のオープンカフェに到着しました。ムンムンする熱帯性の夜の空気、狭い路地を行き交うスクーター、いつまでも通りに繰り出している人ごみの喧騒は、それだけで異国情緒たっぷり。

受け付けテーブルで名前を告げ、登録確認をすると、名前を記入したバッチをもらい、布製のブレスレットを手首につけられました。ブレスレットはパーティー参加者であることの証明で、期間中はずっとつけておくように言われました。そしてウェルカムバックと呼ばれるリュックが手渡されました。パックの中にはビーチマットから現地の人が使うサロンと呼ばれるカラフルな腰布、一週間分の夕食券(七枚綴りのクーポンで毎晩違うレストランになっている。)と、各種イベントの日程表、更にはティッシュペーパーなどなど、用意周到ないたれりつくせりの代物。

翌日。

たまたまバリ市内で大きなお葬式の祭典が行われるということで、私達は大型観光バス二台に分乗して街中へ観光にでかけました。

各バスに英語を話す現地ガイドが付き、バリ島の風習、しきたりなどを事細かく説明をしてくれました。

私が「へえ~!おもしろい。」と思わず声をあげてしまったのは、バリの人々の名前の決め方です。

バリ人には姓、苗字というものがなく、名前はその人が何番目に生まれた子供なのか、順番を示すものだそうです。男も女も第一子はワヤン、第二子はマデ、第三子はニョマン、と決まっていて、第五子以降は再び第一子からの呼び名に戻るのだそう。家族の名前、ファミリーネームがなんですって。

男の子だったら名前の最初にI (イー)がつき、女の子ならNi (ニー)がつく。

「そんな国があるんだ。知らなかった。日本の一郎、次郎、三郎、四郎よりもっとシンプル!おもしろーい。」と文化の違いにワクワク 😆

また、インドネシアではお葬式は喜ばしい出来事で、祭事として扱うそうです。

裕福な家ほど、亡くなってから火葬するまでの期間が長く、火葬をする日まで遺体を乾燥してミイラになるまで保管しておくこともあると聞きました。

この日、天国へ送り出される方は83歳のおばあ様で、花で囲まれた大きな顔写真や、様々な山車、旗、飾り花に続き、最後に遺体の入った山車が高く梯子で積み上げられた張りぼての中に収められて大通りを通過していきました。

とても豪華で盛大なパレードです。

私には棺桶につながるように飾られている不死鳥を髣髴させる色とりどりの羽根をした大きな鳥がとても印象的でした。

この葬儀のために市内の通りは閉鎖され、真昼間の数時間に渡って何組もの大行列が目の前を通っていきました。一つの山車、一つの神輿に何十人、場合によっては何百人もの人がつくので、何十もの山車を見る限り、千人以上もの人がこの儀式に参加しているように見えました。

祭典の山場である火葬は広い公園のような広場で行われました。山車から慎重に運び出された牛の形をした棺桶とその囲いの周りを、民族衣装に帽子と槍を持った男たちが軽快に前に後ろに体を揺らしながら踊りを踊ったあと、牛のおしりの部分から火が付けられました。

遺体が慰安されていた家を出発してから、この火葬の瞬間に行き着くまで、もう一日をあげての一大イベントです。

インドネシアでは、人の一生のうちにある様々な儀式の中で、このお葬式が人生最大のお祝いの儀式なのだそうです。

天に召されたこのおばあさんも、これだけ大勢の人にお祝いされ、見守られての旅立ちとあっては、さぞ気持ちよく昇天されたのではないでしょうか。

さて、ほとんどの参加者が集まった二日目の晩、正式にパーティーの開始を告げる開会式、オープニングセレモニーが行われました(本格的なパーティー!)

指定されたレストランへ行くと、入口で「Welcome to our party 」とオレンジと白の花で出来たフラワーレイを首にかけてもらいました。

トロピカルな国での素敵なお出迎えに気分はルンルン😊

しばらくドリンクを飲みながらワイワイおしゃべりを楽しんでいると、奥の方から集合がかけられ裏のプールに集まるよう言われました。

プールサイドを囲むように大勢の人が集まルト、更衣室がある建物から10人の美しい女性客室乗務員が水着姿にフラワーレイを首からぶら下げ、両手で花を持ちながら音楽に合わせて腰をフリフリ入場してきました。

くねくねと両手を上げて花を左右に揺らしながらプールサイドを一周歩くと、この10人の美人CAたちは順次プールの中へと入っていき、シンクロナイズドスイミング顔負けの演技を始めました。

「きゃー、すっごーい!」

音楽のテンポが盛り上がったところで、男性が一人ザブーンと突然プールに飛び込みました。

そして数秒後。

彼が水面に顔を出してロール状に巻かれた垂れ幕を一人の水中にいる女性CAに手渡しました。このCAが隣のCAへと次々と渡しながら、この垂れ幕を徐々に広げていき、”The Party is here!” と書かれた文字が全部広がりきったところで、全員で手を高く空に上げ、MCからパーティーの開始が宣言されました。

わおー。ファンタスティック!

垂れ幕がプールの中で広げられると、一気に甲高い歓声で盛り上がり、この盛り上がりはその後一週間ずっと継続するのでした。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?