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【簿記】2級 勉強の進め方~一発合格への道~

※本記事は、これから簿記2級へ挑戦しようか悩んでいる方や、勉強の真っ最中の方に向けた内容です。

私は週5~6勤務で働く33歳で、家には3歳の息子がいます。
普段あまり自由な時間を取れない私ですが、このたび、念願の日商簿記2級に合格することができました。

それまで会計知識はまったくなかった上、仕事と子育てでまとまった時間が取りづらい生活をしていましたので、正直、最初は合格できるか不安でした。

ですが、まずはやってみよう!という気持ちで通信講座(クレアール)に申込み、3月中旬から勉強をスタート。
4月中旬に3級に合格し、そこから3か月半かけて無事に2級も取得できました(運よく一発合格でした)。

この記事では、私が実際に行った2級の勉強の進め方や感想についてお話しします。
簿記2級を初めて勉強した立場からの体験記になりますので、プロによるアドバイスとはまた違ったヒントがあるのではないかと思います。

簿記は人と争うものではありませんので、この記事を読んで一人でも多くの方と2級合格の喜びを分かち合えることを願っています。
試験本番までの3か月半を約8,000字にぎゅっと詰め込みましたので、参考にしていただけると嬉しく思います。

工業簿記をいつから始めるか

私が簿記2級の勉強を始めたのは4月19日。
簿記3級のネット試験を受け、合格した日です。

この日、私はとても悩みました。
晴れて3級は取れたものの、このまま2級に進むべきかどうか――。

私が簿記を始めた目的は、仕事で財務諸表を読めるようになることでした。私は学校業界で働いているので、財務諸表も学校会計という少し特殊な会計方法でつくられたものなのですが、結局ベースは商業簿記です。
目に映る勘定科目がいつまでもチンプンカンプンなのが嫌になり、潔く簿記を勉強しようと決意しました。

そうした背景もあり、私は2級への挑戦に迷いがありました。
なぜなら2級には工業簿記という新たな分野が追加されるからです。

工業簿記はモノづくり営む会社が扱う簿記で、その主要なテーマは製品の原価計算(製品一つをつくるのにいくらかかったかを確かめる作業)です。

これは学校会計とはほとんど関連性がありません。

自分の目的に従うなら、3級で終わらせるか2級の商業簿記だけを勉強するかでした。
しかし、3級までだと以下のような要素が不足していました。
・固定資産(負債)/流動資産(負債)の違い
・有形固定資産/無形固定資産の違い
・有価証券の種類、退職給与引 当金の仕組みなど

一方、2級の商業簿記だけを勉強するというのも、それはそれでモチベーションの維持が難しいです。
また3級の時にお世話になっていた通信講座(クレアール)のコースが「3・2級講義パック」だったため、追加料金を支払わなくても2級の講義を聞けるという状況も背中を押しました。

結果的に、"仕方なく"工業簿記の勉強を受け入れることにし、2級の勉強を始めました。
しかしこの心持が、のちの勉強の進め方を歪ませていくことになります。

私は2級突入後、もっぱら学校会計に関連性がある商業簿記を進めていました。
現金の範囲、銀行勘定調整、手形の裏書…と順調に単元を消化していく中、ある講義回で講師の先生からこう言われます。

「工業簿記の方は順調でしょうか?」

心臓がドキッとした瞬間でした。

この頃の私は、ひとまず商業簿記を一通り学習し、その後で自分に関係ない工業簿記を始めようと思っていました。
これが大きな間違いだったことをここで認識します。

商業簿記と工業簿記は、同時並行で進めた方がよいのです。
その理由は次の通りです。

《大局的な理由》

  1. 工業簿記は商業簿記とは別世界なので、早いうちに触れておく方が今後自分が勉強していくことになる内容への心積もりができる。

  2. 商業簿記も工業簿記も学習範囲が広いので、一方を終えた後にもう一方を始めると、それを終える頃には前者の記憶が薄れ、思い出せなくなる(非効率になる)。

《局所的な理由》

  1. 商業簿記の「役務収益」の分野で、工業簿記の頻出勘定である「仕掛品」が出てくる(「仕掛品」の概念が理解できていると仕訳の理解が早い)。

  2. 商業簿記の「本支店会計」が工業簿記の「本社工場会計」と酷似している(両者を同時に学習すると効率よく理解できる)。

  3. 工業簿記の財務諸表の作成が商業簿記の出題範囲にもなっている(工業簿記で扱う勘定科目やその振り替えに慣れていないと意味が分からない)。

無理に商業簿記を先に終わらせようとしても、《局所的な理由》の「3」でほぼ確実に足踏みすることになるので、おそらく同時並行が正解だと思います。
もちろん同時並行で進めるとそれぞれの進み具合が遅くなるデメリットはあるのですが、それを差し引いてもメリットはありますので、地道に両方を進めていくことをおすすめします。

トータルの勉強量

次に、試験当日までにどのくらいの勉強量を要したかを振り返ってみます。

《準備期間》
2級の準備に要した期間は、3級の約3倍でした。
3級…3/12~4/18(38日間)
2級…4/20~8/8(111日間)

《準備の詳細》
これらを内容で分解すると次の通りです。
■通信講座の講義視聴(1.5倍速前提)
3級:約29時間
2級:約41時間
■学習した内容の復習・演習
3級:約29時間(講義視聴時間と同等と仮定)
2級:約62時間(難易度が上がるため1.5倍換算)
■本番対策
3級:約21時間(最後の7日間に一日平均3時間)
2級:約50時間(最後の10日間に一日平均5時間)
■合計
3級:79時間(一日平均2.1時間)
2級:153時間(一日平均1.4時間)

私の普段の生活における自由時間は、子供を寝かしつけてから自分が寝るまでの2時間程度ですので、この一日平均時間であれば概ねズレはないでしょう(2級は内容がハードだったせいか操業度が低いですね)。

商業簿記を勉強した感想

2級の商業簿記を一言で言うなら、3級の詳細版です。ベースは3級の内容になるので、始めるにあたっての抵抗感はあまりありません。

例えば3級では商品売買取引の会計処理として「三分法」と「分記法」を学びますが、2級ではさらに「売上原価対立法(販売のつど売上原価勘定に振り替える方法)」を学びます。
この方法では、売上と売れて出ていった商品の在庫価額を同時に把握する仕訳を行います。

また、商品の在庫が不運にも腐ったり盗まれたりして減ってしまった場合の「棚卸減耗損」や、商品在庫の価値が下がってしまった場合の「商品評価損」など、より現実的な出来事に対応するための仕訳も登場します。

時々ネットには、3級の範囲は2級の勉強の中でカバーできるから、初めから2級に挑戦することをおすすめする記事もあります。
しかし個人的には、2級は上記のように3級の内容にプラスしていく要素が多いため、経理の仕事をしているなどの場合を除けば、順当に3級を取得してから2級に進む方が、無理なく知識を積み上げられると思います。

以上のように、2級には3級の延長線上の知識が多いのですが、中にはまったく新しい概念もあります。

特に印象的だったのは次の3つです。
・純資産の種類
・税効果会計
・連結会計
これらはベースがないところからの学習だったので、とても苦戦しました。
それぞれが何なのかはここでは割愛しますが、2級の商業簿記のコツは、いかに3級の延長線上の学習内容をサクッとクリアして、新しい概念への理解に時間をかけるかだと思います。
3級を取得された方はよくご存じだと思いますが、簿記で学習した内容は、仕訳問題として出る場合と、試算表や貸借対照表などの作成過程で問われる場合とがあります。
よって、仕訳のHow toだけを覚えて適当に流すのではなく、なぜそう仕訳するのかまでしっかりと理解していかないと、試験問題として問われた時に手が止まります(そしてそれが時間切れの原因に)。

2級で出てくる新分野は、一つ一つが3級よりも厄介(特に「税効果会計」と「連結会計」は難所)ですので、そこにはじっくりと時間をかけ、脳に定着させていくのが重要かなと思います。

工業簿記を勉強した感想

工業簿記は、一言で言うと「自分はいま何をやっているんだろう現象」との戦いでした。

「工業簿記をいつから始めるか」でお話ししたように、工業簿記の主要テーマは製品の原価計算(製品一つをつくるのにいくらかかったかを確かめる作業)です。

フライパンで例えてみましょう。

フライパンを作るには、原料となる「鉄」、それを加工する人たちへの「給料」、そして機械を動かすための「電気」が必要です(実際には他にもたくさんの要素がありますが、ここでは便宜的にこの3つに絞らせていただきます)。

工業簿記では、その月の利益を求めるために、1個1,000円のフライパンを作るにいくらの費用(原価)がかかったかを計算していく作業を行います。

まず原料となる「鉄」ですが、鉄はその時々によって相場が変動します。
4月には1㎏40円だったのが、半年後には45円になっているかもしれません。
また、その月に作れる製品の数も一定ではありません。4月は1,000個作れたのに、5月は作る途中で失敗したりして900個しか完成しなかった、ということもあります。
そうなると、4月に要した鉄はフライパン1000個分となりますが、5月にはそれが900個分となり、100個分減ることになります。

このように、原料そのものの価格や完成品の数などが月によって変動するため、その月は結果的に1個あたりにいくらの原料がかかったのかを都度算出しなければなりません。

次に「給料」です。
工場ではフライパンを加工するのに人手が要りますので、彼らに働いてもらうには給料を支払う必要があります。
必要な作業員の人数や一人あたりの労働時間は月ごとに違いますので、今月はフライパン1個作るのにいくらの人件費を要したのかを計算する必要があります。

機械を動かすための「電気」も同様です。
電気代の合計は毎月電力会社から通知されるでしょうが、それがフライパン1個あたりに換算するといくらなのかは計算してみなければわかりません。

このように、フライパン1個の原価を計算するにも、費用を多角的に考慮して計算する必要があります。

実社会では、当然フライパン以外にもさまざまな製品が生産されているわけですが、それが大量生産なのか受注生産なのか、ワンサイズか複数サイズか、一種類か複数種類か…などによって、さまざまな計算方法が存在します。
・個別原価計算
・総合原価計算
・実際原価計算
・標準原価計算
・全部原価計算
・直接原価計算

これらの計算方法を習得するのが2級の工業簿記です。

工業簿記で私が一番苦しんだのは、これらの学習内容が自分にとって"どうでもいいこと"だったことです。

別に工場で働いているわけでもないし、メーカーの経理でもないので、製品1個あたりの原価を確かめることへのモチベーションが、そもそも上がりません。
また先ほどの例では「鉄」「給料」「電気」を挙げましたが、実際にはこれらに相当するたくさんの要素が登場します。
実際の加工現場を知らないとピンとこないようなものもあり、「こういうものがあるんだー」と頭の中で想像しながら計算していかなければならないのが過酷でした。

こうした状況によって、新しい単元に突入するたびに「自分はいま何をやっているんだろう現象」が起き、なかなか理解が進まなかったのが辛かったです。

ただ、範囲を一通り終え、本試に向けた準備に取りかかる頃には、工業簿記はむしろ得点源と捉えられるようになります。

親しみのない製造業の世界ですが、検定試験に出る問題としてはそこまで複雑なものはありません。演習でパターンに慣れてしまえば、そこそこ正解できるようになっていきます。

工業簿記の配点は100点中40点ですが、参考書やYouTubeの解説では得点源として押さえるべし!と言われています。
私も実際にやってみて、その通りだなと感じたところです。

通信講座は必要か

ここで少し角度を変え、簿記の勉強に通信講座は必要なのかについて触れておきたいと思います。

冒頭で触れた通り、私は通信講座を利用して勉強しました。
理由は、職場の人事制度で補助金がもらえるからです。

一般的に通信講座の意義は、独学よりもお金を投じる分、手厚い学習サポートが受けられることです。
普段私はあまりまとまった時間が取れない生活をしているので、補助金が出るなら金の力で効率よく勉強しようと思い、ためらいはありませんでした。

通信講座といってもさまざまなものがありますが、私が利用したのは「クレアール」です。コスパの良さに定評がある通信講座で、YouTubeの両学長(リベラルアーツ大学)が勧めていたのもあり、ここにしました。

実際に利用してみて、簿記2級における通信講座の利点は次の2つだと感じました。

1つは、モチベーションが上がらない時に無理やり引っ張っていってもらえるところです。

私は簿記の勉強中、一つだけ徹底していたことがあって、それは「勉強しない日をつくらないこと」です。
さかのぼれば大学受験時代からの経験則なのですが、勉強しない日を一日でもつくると、妖怪"先延ばし"が心に棲みつきます。すると「明日やればいいか」という怠け癖がついてしまうので、5分でもいいから何かやってから寝るというルールを自分に課していました。
残業で遅かった日も、飲み会があった日もです(酔っ払いながら仕訳する姿はなかなか狂気じみています)。

そういう「今日は勉強したくないなー」という日に、通信講座は力を発揮します。多少ぼーっとしていても動画を見ているだけで単元が進むからです。
視聴後の定着度はさておき、そういう日に独学を選んでいたらたぶん進まなかっただろうなと思うので、歩みを止めないという意味でだいぶ救われました。

3級の場合であれば、学習範囲がそこまで広くないので独学でもどうにかなるのだと思います。しかし2級はコツコツ進めないといつまでたっても終わらないので、先へ先へと導いてくれる通信講座はとても頼りがいがありました。

そしてもう1つは、仕訳や略称表記の実演です。
これはYouTubeに転がっている簿記の学習動画を見ていて気付いたことでもあります。

簿記は、正解の単語を答えるだけで終わる暗記系の試験とは違い、仕訳や残高の修正など、正解に行きつくまでの書く動作が生じます。
この書く動作を実演してもらえるところに、通信講座の価値があります。

例えば、「商品10,000円を掛けで仕入れた」という時に、いきなり

仕入10,000|買掛金10,000

という答えを見せられるよりも、実際に借方・貸方に勘定科目と金額を書き入れていく様子を見せてもらった方が、思考の過程がよくわかります。
先生が問題文を読みながら、借方と貸方のどちらから書き込んでいくかを見たり、長ったらしい勘定科目にどのような略称を用いるのかを見たりすると、自分もこういうふうにやればいいんだなというイメージが湧くので、見よう見まねで効率的に定着を図ることができます。

最近はYouTubeに無料の解説動画が充実してきているので、通信講座にわざわざお金を払う意味はなくなってきているようにも思えます。
しかしYouTubeの動画はスライドを送るだけのバーチャルなスタイルが主流なので、書く動作まで見せてくれる通信講座はまだまだ健在だなと感じました。

このように通信講座は、誰かに勉強のペースを引っ張っていってもらいたい人や、見よう見まねで勉強していきたい人にはおすすめです。

その上で、どの通信講座を選べばよいのかについては、さまざまな口コミがあって非常に悩ましいと思います。
私が利用したクレアールの評価については、こちらの記事で徹底レビューしています。

クローズドな情報にするため100円の有料記事とさせていただいていますが、有料部分だけで13,000字超え、忖度なしの徹底レビューですので、少なくとも100円以上の内容は盛り込まれているはずです。
通信講座は決して安くはありませんので、よろしければご活用ください。

学習範囲の進め方

2級の学習範囲は3級と比べてかなり広いです。
私のように勉強時間が一日平均1~2時間しか取れない場合、復習をせずひたすら一方通行で進めていくとしても、最低1か月半はかかるでしょう。

ただ私の場合は、単純な一方通行はやりませんでした。
3級で心得たことではあるのですが、
・単元ごとに都度行う復習
・決算の単元に入る前の総復習
の2つをやっておかないと、決算の単元に入ってからの勉強がとても非効率になるからです。

決算は2級でも漏れなくついてきます。
工業簿記ではそこまで頻出ではないですが、商業簿記ではほぼ100%出ます。

3級と同様に、決算ではそれまでに学習したあらゆる仕訳が再登場しますので、勉強不足の仕訳に出くわすたびに、戻って確認して…なんてことをしていると、全く演習になりません。
そのため私は面倒とわかっていながらも、上記2つの復習を通じて記憶や理解をある程度定着させてから、決算の単元に突入しました。
この方法は体感的には非常に有効でしたので、おすすめできます。

また基本的なことではありますが、本番直前には実際の出題形式にのっとった模試演習が必須です。
結局ただテキストを最後まで進めただけでは、本試験の形式には太刀打ちできません。「あー本番ではこう出るのね」という発見を通じてパターンに慣れていく必要があります。

特に商業簿記では、第3問に「損益計算書」「貸借対照表」「試算表」のどれかが出てくることが多いです。
また工業簿記では、第5問に「直接原価計算」(総合原価計算との対比)や「CVP分析」が出てくることが多いです。

学習範囲は広いといえど、頻出分野はある程度決まっていますので、模試演習を通じてその分野を把握し、集中的な対策をすると効果的だと思います。

2級取得後の景色

念願の2級を取得してみて何か変わったことがあるかと聞かれたら、まだそこまで大きく何かが変わった実感はありません。
しかし、当初自分が読めるようになりたかった学校会計の財務諸表を改めて見ると、3級取得時点ではまだピンと来ていなかった「有形固定資産」「退職給与引当金」「為替換算差益」などに対し、はっきりとしたイメージができるようになっています。
これによって、簿記をやっていなかった頃に感じていた"財務諸表というものへの抵抗感"は3級取得時よりもさらに減って、今や布団で一緒に寝れそうなくらい親しい仲になっている気がします。

もしかしたらこの"財務諸表というものへの抵抗感"を無くすことこそ、簿記を勉強する最大の意義なのかもしれません。
そう考えると、20代のうちに取っておくべきでした…。

あと世間的には「2級を持っていたらそこそこすごい」と言われているので、取得したことを周囲に話すとそれなりの反応が返ってきます。

それなりのものを乗り越えたという意味では自分に自信がつきますし、知名度の低い資格で難易度の高い級を取るよりは承認欲求も満たされます。
転職にも多少は使えるようですので、今頑張っている方はぜひ最後まで走り抜けてください。

なお、受験する際の試験形式は圧倒的に「ネット試験」がおすすめです。
その理由は別記事にまとめていますので、そちらもぜひご参照ください。

ここまでご精読いただき、どうもありがとうございました。
これから受検される方、ご健闘をお祈りしています。

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