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小学生とSFプロトタイピングをやってみた結果

昨年末、冬休みに入った小学生の子供達とSFプロトタイピングをやってみました。実は大人がやってみたこともあるワークなのですが、同じ設定で子供だとどうなるんだろう?という興味でトライしてみたところ、やはりいくつかの気づきがありました。

メンバー:
小学6年生の男女2名と4年生の男子1名。受験戦争でしのぎを削るというタイプではなく、お絵かきが好きなごく普通の公立の小学生。
時間:
5〜15分程度のワークを6つ程度。それぞれのワークを発表してもらって進行し、トータルで100分程度。
大人のワークと変えたところ:
大人の時は未来年表やちょっとしたインプットは用意しましたが、子供には未来年表を軽く見せる程度にしました。また大人グループは3・4名でワークを共有して一つにまとめるようにしたいたところ、結構時間がかかるので子供は最後まで自分一人でやるスタイルに変更。
最初の私の予想:
・小学生の方が絵を描くのに慣れているから絵はサラサラ描いてくれそう
・ドラえもんやアニメっぽい、ちょっとベタな未来の話が出てきそう


その結果、気づいたことをレポートします。


皆が選びがちなお題の傾向がある?

最初に選ぶお題の選択肢は専門性・実現性をあえてばらつきをもたせ、どういうものが選ばれるのか?と様子を見ていたところ、子供達も大人が選ぶのと同じ比率で「AIが人間を超えた世界」が多く選ばれていました。

①AIが人間を超えた世界 2名(※大人も3グループ中2グループが選定)
②地球環境を絶対壊してはいけない法律ができた世界 1名(※大人グループでは選ばれず)

「なんとなく」「面白そう」などが選んだ理由だったのですが、なんでだろう?と考えてみました。
やっぱり「大人も子供も必ず来ると一般認知されている世界観だから、考えやすいし、興味があるから考えたいのでは?」と一旦仮説づけました。
またAIという存在は人間に匹敵しうるもののため、「人間とは何か?」という哲学的な興味が湧くものだからなのかと。
このあたりはまた深掘りしてゆきたいと感じます。


未来の世界観は大人も子供もほぼ同じ

これは私が小学生を舐めていたからかもしれないですが、シンギュラリティでどんなことが起こると言われているのかは全員認知していました。確かに子供新聞や受験の教材にもよく掲載されている話かもしれないです。


小学生はまだまだ発想は漫画っぽい?

街の様子を描くワークにおいて、大人では流石に空中都市や空飛ぶクルマは出てこなかったけれど、小学生は素直に描いてくれました。
またストーリーに起承転結をつけるために、事件を考えてもらったのですが、みんな「AIが人のコントロールを超えて暴走する」になっていました。
これは本当に年齢を超えて共通する心配事(?)なんだと実感していたところ、先日ラジオでワークショップを仕事にしている方が同じ事を話されていることを聞き、よくある事だと分かりました。
このAIへの恐怖がテクノロジーの発展を遅らせているという考えもあると書籍でも何度か読んだことがありますので、これはまた深掘りたいところです。

未来の街の様子。空中都市に空飛ぶクルマ。


その子供の中にある経験がアウトプットされる?

「その時代に人は何を学んでいるか?」という問いのワークを実施したのですが、大人に比べて学んだ経験値が少ないからなのか、倫理的な話は出てこなかったです。もちろんこれは子供の興味で違ってきそう。読書感想文の大賞作品や適性の記述問題でも、大人な意見を語る小学生はいるので、そんな賞を取ったり難しい問題に解答できる小学生ならまた違った回答になっていたんでしょうか?
とにかくここは大人と子供で違うところだと思いました。

未来で学ぶことは宇宙学と国を超えるためのコミュニケーション。


「絶対に無理」という考えを捨て去るのがSFプロトタイピングでは重要

お題選びでは生物好きの男子が「地球環境を絶対壊してはいけない法律ができた世界」を選んでくれて、人間が住むエリアと絶対的に犯してはならないエリアを区切るという世界観を出してくれました。
実はこのアイデアを選んだ時
「それって無理だよ。人間は自然を破壊しないと生きていけないんだよ」
と弟君が何度も強くコメント。一体どうなるのか?と思っていると
「いやいや、これはこうやって考えてみないと始まらないでしょ」
とお兄さんが貫き通してくれました。
大人のワークショップではこういうことは起きないけれど、子供の兄弟だから素直にこういう議論があって面白かったと思いつつ、このような「現状無理だと思われている事にアイデアを出す」をしていかないと未来は変えられないんだと実感。
また同時に「これは無理なんだ」という考えが子供に根付いてしまっているというのも残念だと感じ、未来を作ってゆく子供たちにはこういった枠を外す発想をやってもらいたいと思いました。

今の自然保護区に比べ物にならないほど大きな範囲で立ち入り禁止エリアが指定されている


ワークショップ仲間との相互作用

生物好き男子はなぜか後半になってくるとなぜかAIの方の設定で考え始めました。
これってどうしてなの?というのは今度理由を聞いてみたいと思います。(子供が長時間ワークで飽きてしまい、最後聞けていない)
AIを選んだ2名は比較的にストーリも似通っていて、ワークをお互いに紹介しながら進めていくことによるポジティブな相互作用を期待していたのですが、やっぱり影響を受けて引っ張られてしまったのか?と思う部分も。
私としては生物好き男子にはAIに影響を受けながらも環境の話で進めて欲しかったのですが、ちょっと別の話になってゆきました。

似ていくことに関しては、もちろん他の2名がシンプルで楽しいことが好き!という似たタイプだったこともあるのですが、ストーリーやアイデアにオリジナリティを求めるなら共有はしないほうがいいかも?
デザインシンキングで荒削りなアイデアを大量発散するのとは違うので気をつける点かと思いました。(※デザインシンキングは人のアイデアに乗っかってアイデアを出したりするので、途中の共有はむしろいいヒントになっている)

しかし、多少似ていても、描き出すものはそれぞれ違っていて素敵だったし、子供自身がわいわい楽しそうにやってくれて、また楽しかったと言ってくれたので、そこは問題ではないのかも。
世界観や発想が似るのはよくあることなんだと思います。つい、良くないと考えてしまった自分に反省‥


最後に

実はまだバックキャスティングまでできなかった今回のワークですが、子供の特性やワークショップというものについて、SFについて、得るものが多かったですので、大人版も子供版も引き続きトライしてゆきたいと思っています。

生物好き男子はちょっとオリジナルな面白いアイデアを出してくれたので、そちらを紹介して終わりたいと思います。

人間は罪を犯してもその背景を知ったり、反省している態度で情状酌量の余地を与え刑を軽くしたくなるが、AIはそういった感情がないため罪をそのまま与えてしまう。
そのためAIが裁判などするなら人間が納得するものに収めるためには法律を変更する必要がある。

これ、普通に実際に起こりえそうですよね?

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