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興味のない相手に本気は難しい

先日公開された 腫瘍内科/緩和内科医師 西智弘先生 の記事を拝読して思うところがあったので綴ってみたい。

有料記事なので内容について触れないが、¥150以上の価値は間違い無くある。
ぜひ読んでいただきたい。

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プロフにも記載しているし過去の記事でも書いているが、僕の現在の仕事は保険代理店の若手営業社員を育成することだ。
クライアントの社長からは『成績向上』を依頼されているわけだが、まず具体的にどのようなことをしているかに触れてみたい。

保険代理店は保険販売をすることにより代理店手数料を保険会社から受け取って収益としている。
これは生命保険も損害保険も同じで、ただ保険の種類や期間、保険料の支払い方法などによって差がある。
前年度の実績(成績だけで無く事務処理など多項目で評価される)で翌年度のベースとなる手数料率が決定されるシステムをとっている保険会社も多く、年度によって実績が乱高下すると経営が安定しない。

基本的にはひとり(一軒)のお客さんをひとりの営業社員が担当するので、個々の営業社員の営業力が求められる。
もちろん商品知識や業務知識(取扱規定や税務知識、事務処理知識など)を熟知している必要があるが、それだけで保険が売れるわけではない。
目に見えるモノを取り扱うわけではないので、クルマや家電の販売以上に担当者とお客さんの相性が重視される気がする。
そのためには不信感を抱かれづらい態度や服装、話法といったスキルが必要にもなる。
スキルと聞くと「言いくるめ方だろ?」と誤解をされることも多いが、そのあたりは過去の記事にも書いているので参照願いたい。

さて、本題に戻ろう。
知識やスキルは保険を販売するうえで不可欠ではあるのだが、それらを教えることだけが僕の仕事ではない。
あらゆる仕事に共通だと思うが、仕事を遂行するには準備がいる。
保険販売の準備とはなんだろう?

パンフレットや設計書を揃えるのももちろん準備のひとつだ。
しかし、僕は若手社員とお客さんとの商談をシミュレートすることに多くの時間を割く。
ただでさえ『NO』と言われがちな生命保険について真剣に考えていただける場を作るにはどうしたらよいか?
そのテーブルに着いてもらうには、どのような会話をお客さんとすれば確率が最も高くなるのか?

実際に訪問する場面をイメージし、会話の切り出し方、質問の内容・方法、話題転換のタイミング、一緒に考えてみませんか?という投げかけ方、次回のアポイントメント、辞去するシーンまで考える。
お客さんの名前や生年月日などという粗い情報ではとても準備にならない。

お客さんの仕事内容や役職、勤務先や職場所在地、家族構成、家族の年齢・職業、同居の有無、持ち家か借家かといった基本的な項目に加えて、趣味や子どもの部活内容、塾通いの有無などといった項目にも話が及ぶことがある。
つまり商談の相手であるお客さんに興味を持たないと、件の若手社員は僕が繰り出す質問責めには耐え切ることができず打ち合わせは破綻する。

意図的に細かい情報を要求しているケースはあるのだが、なかには本当にお客さんの心配事を明確にし真剣に考えるテーブルに着かせてしまったこともある。
お子さんの部活から習い事の話になり、さらに進路の話題から生命保険について考えるきっかけとなったケースなどが挙げられる。
お客さんによって何がリスクなのか? また気がついていないリスクは無いのか?
蓋を開けてみないと分からないし、深く掘り進んでみるとお客さん自身も気がついていなかったり目を背けているリスクが埋まっていたりする。

だから僕は問いかけることをやめない。
まずは型にはめ、必要だと思われる項目を準備させる。
分らなければお客さん本人に聞いておくか、共通の知り合いに聞いておくかしておけばよい。
たとえ最初は「打ち合わせで聞かれるから」というきっかけでもかまわない。
やがて、『相手に興味がなければ、十分な準備ができない』ことに気がついてくれればよい。

指導したり注意したりしてもすぐに行動や思考が変化することはない。
何度でも要求し、成功体験を積み上げていくことで自分自身が変えてみたいと思うようにならなければ長続きしない。
だからこそ僕自身も指導している若手社員に対する興味は持ち続けなければならないと思う。

興味を持てない相手に本気でぶつかるのは無理だ。