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番外編5「神社にはお酒がよく似合う」第4話(全4話)

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雫の方から壮馬に迫る話の最終回。(今回の文章量:ほぼ文庫見開き)

 雫が酔ったふりをしている理由は、俺の本音を知りたいからでは?

 雫とはいろいろあって、俺は恋愛感情がないように装っている。でも、ほとんど毎日、朝から晩まで一緒に働いているのだ。頭の回転が速いこの子が、俺の気持ちにいつまでも気づかないのはおかしい。

 だから、はっきりさせようとしているのでは?

 雫が俺のことをどう想っているのか? それはわからない。でも、もし雫がはっきりさせようとしているなら──俺が「雫が酔っている」と騙されたふりをして本音を言えば──。

「早く答えてください」

 雫の声音は、凜としている。背筋も真っ直ぐで、やっぱり酔っているようには見えない。下手な芝居ではあるが、この子なりに俺との関係をはっきりさせようとしているとしか思えない。
 ごくり、と唾を呑み込む。

「わかりました。言います。俺が好きな人は」

 雫さんです、と続けようとした。本当のことなのだし、雫から迫ってきたのだ。躊躇する理由なんてないはずだった。
 なのに。

「──そういうことは、お互いに時期が来たと思ったら話しましょう」

 俺の口から出た言葉は、それだった。
 こんな状況で、これまで生きてきた中で一番大切なことを口にするのは、嫌だ。

 雫がどんな反応を示すか。鼓動の加速を感じながら、おそるおそる顔を見る。

 立ったまま、目をつぶっていた。
 微かに寝息も聞こえてくる。
 直後、倒れ込んできた雫を、俺は慌てて抱きとめた。

□□□□

 夕方。

「申し訳ありませんでした」

 応接間で目を覚ますなり、雫は深々と頭を下げた。

「舞のお稽古で疲れていたので、お茶とお酒を間違えて飲んでしまいました。酔いが急速に回ったようで、記憶が全然ありません。壮馬さんにご迷惑をおかけしたのではないでしょうか」
「……そんなことはないですよ」

 笑顔がひきつるのを懸命にこらえながら、俺は内心で絶叫する。
 今朝の俺の葛藤はなんだったんだっ!?

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