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番外編5「神社にはお酒がよく似合う」第3話(全4話)

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本編では書けない、クールビューティーな雫が壮馬に迫る話。(今回の文章量:ほぼ文庫見開き)

 俺に好きな人がいるかどうか、気になっている。ということは、ひょっとして雫も俺のことを──。
 期待が膨らんでいく。ごくり、と唾を呑み込み、俺は訊ねる。

「どうして、そんなことを知りたいんですか」
「教育係として、壮馬さんのことをもっとよく知る必要があるからです」

 期待が萎む音が聞こえた。
 この訳のわからないロジックは、まさに酔っ払いだ。

「それで? 好きな人は?」

 雫は、真剣そのものの面持ちで迫ってくる。視線で助けを求めると、兄貴はやけに難しい顔をして、深く頷いた。

「今日の雫ちゃんは仕事にならないだろうから、琴子さんに休日返上で働いてもらうしかないね。呼んでこよう。壮馬は、雫ちゃんの面倒を見てるんだよ」

 俺が返事をする間もなく、兄貴はスキップせんばかりの足取りで事務室から出ていってしまう。「白峰さんと桐島さんに、遅めに来るように連絡しないと♪」と、歌うように言いながら。

「俺と雫さんを二人きりにしたいだけだろう!」

 廊下に向かって叫んでも返事はない。
 いくら俺と雫をくっつけたいからって……!
 雫は、兄貴の話など聞いていなかったかのように、俺の袖をつかむ。

「いい加減に答えてください、壮馬さん。仕事に支障を来します」
「来すはずないでしょう」
「来します」

 食い下がる雫の顔色は、まったく変わっていなかった。口調もいつもどおりで、話している内容が滅茶苦茶であることを除けば、酔っているようには見えない。

 ──本当に酔ってないとしたら?

 不意に、そう思った。

 あまりに見た目が変わっていないし、兄貴も雫の一家は酒豪ばかりだと言っていたじゃないか。なにより、紛らわしいとはいえ、パッケージに「これはお酒です」とはっきり書いてあるのに気づかず飲むだろうか?

「雫はしらふで、冷静に行動している」。この推理が正しいなら、酔ったふりをしている理由は──。

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