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ボロボロのお化けになったライナスの毛布

スヌーピーに出てくる少年『ライナス』がいつも肌身離さず持っている毛布。
「ライナスの毛布」とは、お気に入りのぬいぐるみやタオルケットなどに強い愛着を持つことの通称にもなっている。

娘(まる)には大好きなガーゼケットがある。
白とグレーのお星さまの柄だ。
6重のガーゼでできたタオルケットのようなもので、洗えば洗うほど、ふわふわと優しい肌触りになる。
生まれた時から一緒。というか、生まれる前からだ。
お腹にいる赤ちゃんを
「いつでもこい!」
と、お迎えするために準備したあれこれ一式のうちのひとつ。

うちではこれを「くんくん」と呼んでいる。
かくゆう私も小さなころ、大好きな毛布があった。
私は匂いをよく嗅いでいたので、愛称が「くんくん」だった。
娘は匂いこそ嗅いでいないが、寝る際に目を瞑りながら手でこねこねしたり、縁をたぐり寄せてぐるりとなぞっている。
「まるの、すきなとこ」
その縁取りの一箇所に、重なった縫い目がひとつある。
指先から感じ取る優しい手触りが、精神安定につながっているようだ。
大事に使っていこうね。

とはいえ、近ごろの「くんくん」の劣化は目も当てられない。
もともと薄い素材なので、穴が空いてしまったら最後。小さなほころびからやがて大きな穴へと広がり、そこらじゅう糸がほつれてきてしまった。
ここまで使い倒されたら、ライナスの毛布冥利に尽きる。
そんな娘の愛する「くんくん」の予備、二代目を探すべく当時買ったお店を見てみたものの、動物柄しかなかった。
世代交代なるか?と思ったが、
まるはあまり納得してくれず、無いよりマシくらいのサポート役になった。
そりゃそうだよね。
キミはもっと経験を積んで、柔らかく成長しなければ社長は納得してくれないよ。

そうして数ヶ月、「くんくん」はそのほころびの酷さからカットとメンテナンスを重ねて、ついに半分くらいの大きさになってしまった。
まるは意気揚々と頭からかぶり、その立派な穴から瞳を覗かせて
「おばけだぞ〜!」
と、おどけてみせる。
「こっちもおばけだぞ〜!」
私も動物柄の「くんくん」をかぶって対抗する。

日頃ガーゼケットアンテナを張っていた私はある日、同じ模様、同じ素材のものをネットで見つけることができた。
満を持して
「今日から入った新しいくんくんです。よろしくね!」
と、まるに紹介したら大喜びだった。
ただ、手触りがまだまだガサつくので、世代交代は先になりそうだ。
キミは有力候補だから、しっかりやってくれたまえ。
良い感じに熟した頃には、娘はパッと手放してしまうかもしれないけど。

そうして結局、
「ボロボロのくんくん」
「どうぶつのくんくん」
「きらきらぼしのあたらしいくんくん」

娘はこう愛称をつけ、最終的に3つを抱えて寝ることになった。
ま、いっか。

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