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踊るアボカド

JELLYCAT(ジェリーキャット)と言う可愛らしいぬいぐるみがある。
優しい色合いと頬ずりしたくなるようなふわふわの手触り。
動物や野菜、魚介類、時にはドラゴンなどの伝説の生き物にまでバリエーションは多岐に渡り
「見守っているよ」
と言わんばかりの控えめな表情は包容力抜群だ。

生まれてくる赤ちゃんをお迎えする際、
ファーストトイとして手に入れるママも多い印象だ。
インスタでは耳の垂れたウサギちゃんやおさるさんが人気なようで
むしろそれ以外をあまり見かけない。
ベビー用品店や雑貨屋さんでたまに取り扱いがあるが、
こぞってウサギが置かれている。

私が最初に買ったジェリーキャットは、
ゆで卵を半分にしたような姿のぬいぐるみだった。
何が良いって、足が付いている。
しめじの様なひょこっとした足は、
今にもトコトコ歩きそうな可愛らしさがある。
まだ目も良く見えない生後間もない娘にとっては、
何でも良いから乳をくれ、という感じだろうが
ここをやたら拘りたいのが母のエゴイズムである。
卵はいろんな料理に入っている。
同時に小さな赤ちゃんがアレルギーを出しやすい食材でもある。
美味しく食べれるといいなぁ。

ジェリーキャットの罪なところは
子供の意向を無視して母がコレクションしたくなるところかもしれない。
(あくまでも私の場合だ)
そろそろ仲間が欲しいなぁと思ったとき、
渋谷ヒカリエのBIRTHDAY・BARで見かけたのは緑色のアボカドだった。
モケモケした毛足の長い背中が、ムーミンのご先祖様を彷彿とさせた。
お腹には本物同様、大きな種を抱えている。
そしてやっぱりしめじみたいな足が生えているではないか。
こうして二代目ジェリーキャットに抜擢されたアボカドは
この子は何者なんだろうと、存在を良く理解されないままに娘の成長を一年半見守り続けた。

月日を経てどうやらこのモケモケの名前は「アボカド」だと言うことを理解した娘は「あぼ」まで言えるようになり、
起きるときにベッドから抱えて持ってくるほど気に入ってくれた。

ある日スーパーで買ってきたアボカドを左手に、
ぬぐるみを右手に見せながら
アボカド〜アボカド〜
とリズミカルに歌ってあげたら、いたく気に入ったらしく
「あぼかどん」
と、すぐに腰をくねくねさせながら真似するようになった。
その姿が面白可愛くて動画を何度も撮ってしまった。
発音のイントネーションこそ「あ」に強いアクセントが入っているが
アボカドなのかアボガドなのか未だに迷う私に比べれば上出来である。

以降、このぬいぐるみと遊ぶとき決まって小躍りしながら
「あぼかど〜ん」
と、言うようになった。
いつまでやってくれるのだろう。

明日も明後日も、踊るアボカドが見れますように。

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