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トラウマときぐるみ

自分が親になった実感というものは、あまりないもので。
強いて言えば子供の予防接種のスケジュールを確認しているとき?
マックのハッピーセットを買っているときとか。
でも真剣に何が出るか楽しみにしてるのは私の方だしなぁ。
ついてくるおもちゃが「はらぺこあおむし」のときは3回も買っちゃった。 
りんごのジョウロが可愛くて(出なかった)

このように自分の親としての自覚に疑問を持っていたが、この間ふとしたときに「あぁこれか」という感覚があった。

駅前にキャンペーンで来ていたきぐるみ達。
「あっなんかいるよっ。あっちいってみようよ!」
たまたま通りかかった娘(まる)は、目をキラキラさせて、果敢に近づいて行く。
特に知っている有名なキャラクターと言うわけでもなく、初めましてのきぐるみと仲良くなるまるはすごいと思ってしまった。

私の「ファーストコンタクトきぐるみ」は、忘れもしないディズニーランドのウエスタンランドエリアにあるベンチで、父が買ってくれたターキーレッグにかじり付いているときだった。
右後ろからのしのし歩いてくるのは、背が高くて耳の尖った茶色いオオカミだった。
その顔は目がつり上がっていて、真っ赤なベロがだらんとはみ出ている。
「…こわい!!!」
夢の国の楽しさに浸っていたのに、後ろから名前も知らないキャラがズンズン距離を詰めてきて、こちらをジロリと見る。
ちっちゃい私なんか丸呑みにされそうだ。
大泣きして親に抱きついたのをパレードなんかよりよっぽど覚えている。
初回にして相手が悪かった。
このときから、私はきぐるみがトラウマになってしまった。

「お写真一緒に撮れますよ〜」

走馬灯のようにトラウマシーンを思い出していた私に、キャンペーンのお姉さんが話しかけた。
まるはきぐるみのクマと恥ずかしそうに手をつなぎ、ニコニコとポーズをとる。
あぁ、きぐるみとの初めての出会いが愛らしいクマで本当に良かった。
まぁクマもね、人を襲うけれども。
私は深々ときぐるみに会釈し、なんだか親になるってこういう小さなことなのかもと思った。

追記
あの時のオオカミが誰なのか気になって検索したら、三匹の子ぶたに出てくる『ビッグ・バッド・ウルフ』というヴィランらしい。ほらバッドってついてるじゃん!怖いじゃん。
とっくに克服したと思ったのに、写真を見たら心臓がばくばくした。
私にはまだ「マーダー・ライド・ショー」の『キャプテン・スポールディング』に見える。

©️Donatera

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