財務省北陸財務局からの講演依頼があり得ないくらい失礼だった件
TwitterとFacebookにも投稿した事案です。財務省北陸財務局から、間接的に受けた講演依頼。
通常、私がこのように団体名を公にした発信をすることはありません。
ですが、税金で運営されている公の機関から受けた迷惑行為ですし、それくらいこの件はあまりに酷い。「アンチパターン」として、かつ今後同様の被害者(民間企業の経営者や個人事業主など)を増やしたくない思いで敢えて公にします。
1.背景
2021年6月20日頃、私と一緒に仕事をしているA氏からチャット、「財務省北陸財務局(金沢市)」から「働き方改革」をテーマにした講演の打診があった」と連絡を受けました。
・リアル開催希望(金沢の北陸財務局会議室にて)
・福井と富山ほかの事務所にはオンライン配信
・講義スタイルで2時間
謝金は霞が関の規定に沿う金額設定で、交渉の余地ナシ。想定内です。
正直言って割に合わない金額です。赤字のボランティア活動です。ですから、この手の講演は登壇者の善意でもっておこなわれていると考えてください。
よって、私は基本的に霞が関関連団体の案件はお受けしません(受ければ受けるほど赤になるため)。
しかしながら先方の強いリクエストもあり、かつA氏との縁もあったものですから、今回お受けしたわけです。
A氏をはさんで、企画のためのやり取りが始まりました。これまた、大変だった。。。
2.旧態依然のコミュニケーションスタイル(想定内)
私は、講演資料のダイジェスト(目次とスライド)をGoogleドライブにアップしており、講演依頼があった場合はそのリンクを送って「この中から希望するトピックスやテーマを選んで回答してください」とお願いしています。その方が、お互いミーティングする時間も手間もかからず、なおかつイメージ合わせがはやいからです。特に、今回のようなボランティア案件は、コミュニケーションコストをかけるわけにはいきません。ありものの資料から選んでいただくスタイルに徹します。
今回も、同様にA氏を通じて「先方にスライドを選んでもらってください」とお願いしました。
ところが先方からの回答は「見られない」と。
前時代な意味不明なセキュリティー規定が邪魔をしているのでしょう。まあ、ある意味想定内です。
ダウンロードしPDF形式で保存したし資料をメールで送るよう、A氏にお願いしました。
ところが「PDFも駄目(ファイルサイズの関係でメールサーバが弾いてしまう?)」とのこと。そのメールも「いちいちPPAP(添付ファイルzip圧縮+パスワード別送)で、手間とコミュニケーションコストがかかって仕方がない」と。絵に描いたようなレガシーっぷりです。まあ、これも想定内です。イラっとしつつも、いちいち驚きません。
A氏も毅然と対応してくれていて、「だからといって紙で渡すつもりはない、受け取り方法はあなたたちで考えてください」と先方に投げていました。印刷して郵送なんてしたら、それこそ赤字幅が広がるだけですからね。
どうにかこうにかして、私の講演資料のダイジェストを手に入れることはできたようで、先方からリクエストの連絡をもらい、講演内容を詰めました。
(この時点で、調整稼働もA氏と当方に発生しています)
ちなみに、先方からリクエストされたテーマの中には「DX」も入っていました。
私は、A氏とチャットでのやり取りでスムーズでしたが、先方とA氏との間には細かな説明対応やミーティングの稼働など発生していたのではないかと推察します。A氏に申し訳ないです。
3.一方的な規定と理不尽なルール
とまあここまではある意味良くある話。
(とはいえ、直受けの案件であれば私はすぐに担当者に文句言いますけれど。「働き方改革」や「DX」テーマで講演する者の責任として)
理解に苦しんだのが、支払い規定とルールです。
(1)支払い規定
今回、契約も支払いも先方⇔A氏の会社でやってくれとお願いしました。A氏が依頼を受けていますし、A氏が調整してくれているので当然です。また、私自身も零細事業主であり、霞が関特有の細かな事務手続きや雅な事前調整に時間を割く余裕などありません。そもそも赤字案件ですし。
ところか先方からは驚愕の回答が……
講演料は会社(A氏)あて、旅費は登壇者本人(沢渡個人)あてでお願いしたい
はぁ?なぜ、そんな面倒なことをするのか。まったく意味が分かりません。
さらに、その旅費も旅程表を出せだの(A氏が代わりに作成してくれました)、宿泊費の支払いを希望するのであれば(※)ホテルの領収書を出せ(ただし、宿泊費の金額は公務員の規定による)だの、考えられないほど細かい。旅費や宿泊費の規定も最低限レベル。公務員規定に合わさせようとする。
※朝の9時半金沢で講演開始で、浜松の人呼びつけて「宿泊費の支払いを希望するのであれば」はナイでしょう。それとも、朝4時に出発して東名と東海北陸道ぶっ飛ばして来いと言うつもりなんですかね。
いや、分かるんですよ。公金を使う以上、世間の目もありますから経費もきちっと管理したいのは。ルールはすぐに変えられるものでもないですし。
ですから意向に沿って進めました。
でもね、その管理コストが無駄じゃないですか?管理のためのコストを相手にかけすぎではないですか?
ていうか、そういう間接業務コストなくして、その分講演料に上乗せしませんか?
なにより、外部の専門家は貴所の職員や社員ではありません。
なぜそこまで細かに一方的な管理をされなければいけないのか。
なおかつ、実際に受ける側に発生するコストは旅費と宿泊費だけではないです。浜松~金沢の移動、どれだけ大変か分かります? 4~5時間かかります。出張には移動時間の機会損失コストも発生するのです。
なお、民間企業や地方自治体は「旅費交通費、支度料、移動時間の機会損失コストこみこみでいくら」でやっています。そのほうがお互いラクですし、機会損失コストもカバーできます。
…とうか、そういう面倒な手間が発生するからオンラインでやればいいのです。リアル開催に拘る先方の意向にあわせて、浜松から金沢まで行く努力をしているのに、なんだかなぁ。
とても外部の専門家にものを頼む姿勢とは思えないのです。
A氏の交渉の末、講演料+旅費でA社一括支払いで落ち着きました。
(2)謝金のルール
もっとも解せなかったのがこれ。A氏からこんなメッセンジャーが届きました。
大学卒業年を教えてください
その理由が驚き。
謝金規定に、大卒後〇年という規定がある
ちょっと待ってください。大卒前提、かつ卒業後の年数で謝金が変わるんですか? これはさすがに唖然としました。
私のような専門家は著作も何作も出しています。それを読んだ上での依頼であり、調べればどれだけの価値を出すことが出来る人か十分わかることでしょう。
なにより、学歴の差別などが問題になっているのは、世の中のニュースを見れていれば分かるはず。「ヤバいかも」という意識が働くでしょう。
誰も「これは、さすがにそろそろマズい」と気づかなかったのでしょうか?
中央省庁の規定とコンプライアンス意識に甚だ疑問です。
「ガバナンス、大丈夫ですか?」
こう言いたくもなりました。
職員や社員の採用活動で聞くならさておき、外部の専門家にものをお願いする態度ではありません。
(ふたたび)外部の専門家はあんたのところの職員や社員じゃねえんだよ!
もちろん卒業年を即答しましたが(隠すものでもないですし)、それにしても解せないです。
今話題になっている「研究者が育たない国」と同じ根っこを感じました。
このようなルールも態度も、プロフェッショナルに失礼ですし、プロの活躍を妨げます。プロフェッショナルの芽を事務方が摘む日本社会。世界に対して恥ずかしいですし、情けないです。
ここまでで、相当この人たち(財務省北陸財務局)に協力するモチベーションは落ちている訳です。
向こうのルールで、安値でお願いしてくる(しかも遠距離出張を求める)ならせめて間接業務で無駄な手間かけさせないのが最低限のモラル&マナーでしょう。間接業務などタダ働きにしかならないのですから。
その感覚すらない組織に、エンゲージメントなど高まる訳がないです。
あ、この講演の冒頭に投影予定だったスライドを公開しますね。
とはいえ、先方の事情も分かります。ルールや規定はすぐに変えられるものでもないです。理不尽を感じつつも、調整しながらも先方の意向に合わせ進めました。
公的機関ゆえの時代遅れさや独自ルールは、これまでの官公庁との仕事で見知っていましたし、謝金のレベルなども承知の上で受けた訳ですから。せめて、良い場にしようと私なりに準備も進めていました。
ところが、2021年9月10日。それまでの調整の努力も虚しい事件が……
4.一方的なキャンセル&オンラインを頑なに拒否
そして事が起こりました。またまたA氏からのメッセンジャー。
なんと、先方からキャンセルの連絡が入ったと。キンジタとマンボウ延長を理由にとのことですが、これまた一方的すぎ、かついまどき柔軟性がなさすぎて憤懣やるかたなし。以下、原文をほぼそのまま掲載します。
お忙しいところ、恐れ入ります。
ご相談申し上げていたセミナーの件でご連絡致します。
石川県下のまん延防止等重点措置の9月30日までの延長が決まりました。
このため、今回のセミナーは適切な時期まで延期させて頂きたいと思います。
[開催日]時点で同措置が解除されている可能性はありますが、今月末まで保留とすることは、御社にとってご迷惑に当たると判断しました。
また、貴重な機会であり、オンラインではなく、多くの職員が直接参加できる形式をとりたいとも考えました。
はい?
はい……?
あまりに非常識かつ横暴な判断に唖然としました。
こうなることも想定して、事前のやり取りで、オンラインで対応を申し入れています。まったく聞く耳を持たず、なおかつこちらに相談するでもなく、一方的にキャンセル。ここまでの善意を仇で返された気持ちです。
「適切な時期」まで延期などと曖昧且つ悠長なことをおっしゃいますが、こんななあなあな日程確保や調整させられたら、民間事業者はたまったものではないです。
それにしても、財務省北陸財務局は、民間企業が正しく稼ぐ邪魔をする組織なのでしょうか。そんなことばかりやっていると、地域の企業が利益体質にならないのではないですか?
自分の力で汗をかいてお金を稼ぐ経験をなさった方を入れたほうが宜しいかと思います。
御社にとってご迷惑に当たると判断しました。
勝手に判断しないで欲しい。こちらが迷惑になるかどうかを勝手に判断して、勝手に中止を決めて。せめて、相談して決めるのが筋でしょう。
また、貴重な機会であり、オンラインではなく、多くの職員が直接参加できる形式をとりたいとも考えました。
この感覚も、今の時勢を勘案しても理解に苦しみますね。
あなたの考えは聞いていない、約束なのだしこちらにさんざん事前の稼働(タダ働き)も発生させているのだから「オンラインでやってください」です。
それも公務員としての責務でしょう。
あるいは相談の上キャンセル費用を支払うのが筋でしょう。
(民間企業はキャンセル費用払ってくれますよ。日程確保することによるビジネス機会損失も生まれることを良く分かっていらっしゃる)
百歩譲って、1年前ならまだ理解も出来ます。オンラインで開催するノウハウも設備も整っていなかったでしょうから。
なにより、よくよく依頼書を見返してみると
こう書いてあるのですよね。
そもそも他拠点の参加者や欠席者にはオンライン配信&ビデオ聴講じゃないですか。
なおかつ今回グループワークが有る訳でもなく、ひたすら私が講演するプログラム。であれば、事前に録画した講義を送って配信。それも事足りる訳です。
質問があれば、この担当者が質問を受け付けて後日回答もありでしょう(ただし、質問の数と内容によっては別途有償対応ですが)。
しかも私の経験上、この手のイベントで会場で質問の手があがることはまずないです。よって、オンラインで十分代替できる。
……と、こうしたディスカッションもなしに一方的にキャンセル連絡してくるのが、この人たちのお作法のようです。思考停止組織の典型ですね。
キンジタ&マンボウをキャンセルの理由にするなら、リアル開催のこだわりをあきらめるべきでしょう。自分たちだけの古いエゴで、相手とのビジネスをキャンセルする。その発想が社会的にどうなのでしょう。
このような、中のルールと上しか見ていない、改革意識や変革意識や社会的責任感のかけらもない思考停止人材を量産し続けている組織に憤りと危機感を覚えます。
このキャンセルについても、A氏は先方に文句をつけてくれました。それでも、思考停止している人たちには暖簾に腕押しでしょうね。
(そしてA氏の承諾も得て、この発信に踏み切った次第です)
きっとこれまで多くの人たちが、この人たちの一方的なやり方に泣き寝入りをしてきたことでしょう。しかし、私も同様に泣き寝入りする訳にはいきません。
それが「働き方改革」「DX」を謳う人間の使命だと思っているからです。
5.まとめ~改革/変革の本質
また、貴重な機会であり、オンラインではなく、多くの職員が直接参加できる形式をとりたいとも考えました。
そのお気持ちは素晴らしいですね。でも、私は二度とこの人たちの依頼お受けしません。
地方自治体や民間企業向けであれば、遥かにスマートなやりとりでかつ5倍~10倍近くの金額いただけますから。わざわざ日程変えてまで受ける義理など当方にはないのです。
加えて、正直この人たちに「働き方改革」も「DX」も無理だと思います。
今回の一連のやり取りで、私はそう判断しました。
改革や変革(DXのX)の意味、お分かりですか?
改革も変革も、いままでのルールや慣習を疑い改めていく行動をも含みます。
独善的なルールを相手に押し付ける。古い考え方に基づいた、一方的な判断で相手に多大な時間とコストを発生させる。
自らを改める覚悟がない人たちに、アップデートする覚悟がない人たちに、思考停止している人たちに話をしても無駄です。これ以上、寄り添う気すら起こりません。
霞が関ベースの、賞味期限切れしたマインドを直す気持ちが無いのであれば、改革も変革も不可能です。
あなたたち、半ばどころか、スタート地点にすら立てていません。
まず一体となり、あなたたちのマインドを変えていってください。そこがファーストステップです。あるいは、変わりそうにないなら転職活動するのもありでしょう。
そのための教材としても、ここにこのブログを書き残します。
「働き方改革」「DX」の講演依頼を受けたものの使命として。
(まあ、SNSとかインターネットとか見ない人たちで、気づいてもらえない可能性も高そうですが)
▼『沢渡あまねマネジメントクラブ』
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▼『バリューサイクル・マネジメント』
~従来の固定的な景色を変え、新たな「勝ちパターン」を目指す著書
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