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少しだけ信じてみたくなる言葉

「カラスヤ君はさ、これからどんどん忙しくなっていくと思うよ。いや、何の根拠もないんだけどさ」

 最近観た、「おのぼり物語」という映画で主人公が人から言われた言葉。映画の内容を簡単に説明する。この主人公は漫画家を目指して大阪から上京してきた。安いアパートに引っ越してきたものの、仕事はほとんどないか全くないのどちらか。その上、せっかく引っ越してきたアパートの取り壊しが突然決まるしで色々壮絶。凄く大変なんだけども、そういった中で、先に上京してる先輩と遊んだり同じアパートの住人と交流したりもしている。編集部に営業かけて、落とされたり決まりかけたりを繰り返す日々。
 冒頭のセリフは、主人公が編集部に営業かけていく中で出会った編集の人の言葉。とても長い付き合いになっていくであろうことが予想される人。
 根拠のない言葉は三回くらい、いつも同じ調子で言われるんだけども、最後のほうではこれを聞いた主人公が声をあげて朗らかに笑う。

 映画を通して主人公を見ていくと、本当に無根拠ってのがわかる。漫画のセンスもあんまりないし、とびぬけて自分を売り込むのがうまいってわけでもないしね。
 
 でも、こういう根拠のない言葉って救われると思う。どうしようもない状況で自分をどうにか励ますしかないとしたら、「きっと大丈夫」みたいな言葉をかけるしかないわけだし。自己暗示の世界だけども、それで前に進めるのならそれは救いだと思う。あと、人から言われると効果が3倍くらいになるのかな。自分に言葉をかけるより、人から言われたほうが何となく元気出そう。

 元気をなくしている人がいたら、それとなくその人に合った根拠のない言葉をかけて励ませたらなって思う。あまりにも荒唐無稽なのはアレだから、その人がほんの少し寄りかかれるような言葉がいいな。「いつか金持ちになれるよ」とかではなく、その人の日常に根差していて、少しだけ信じてみたいと思えるようなのがいい。

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